改訂の背景や概要については、はっしーさんのブログ(企業法務マンサバイバル)の『利用規約の作り方』改訂第3版は何をアップグレードしたのかをぜひご参照ください。
本書の帯には「最新動向を踏まえて大幅アップデート」と記載されているのですが、この「動向」は法改正にとどまるものではなく、サブスクリプションサービスの隆盛、AIの急速な普及、利用者サイドの意識の変化といった事業環境の変化を視野に入れているのが本書の強みなのではないかと思います。
第2章の冒頭で弁護士に相談する起業家が持ち込んだビジネスは、11年前の初版では「出会い系サービスを起点にクーポン販売をする」といったものでした。そして、5年前の改訂版では「出会い系サービス起点でCtoC仲介やポイント課金」というアイデアにチャレンジし、今回の第三版では、ついに祖業?の出会い系サービスから大胆に業態変更をして、「AIを使ったアバター作成サービスのサブスク課金」にチャレンジしています。(改訂作業が始まったタイミングでは突拍子もないビジネスアイデアだと思っていたのですが、現実がものすごいスピードで追いついてくることに驚愕しました・・・)
これだけを見ても、本書が「法律の解説書」にとどまらない、「事業を起点に、法律とどう付き合っていくか」のガイドであることがおわかりいただけるのではないかと思います。
他方、事業目線の法律解説書は、表面をなぞっているだけで少しでも典型的なパターンを外れたり、一歩踏み込んだりした論点にはまったく触れられていないことも少なくありませんが、本書は、実務上重要なポイントについては、むしろ思いっきり踏み込んでいるのも特徴の一つです。
例えばCtoCサービスでお金の受け渡しをプラットフォーマーが行うことが資金移動業に該当しないのか、という論点については、結論だけでなく、為替取引の定義から実務的な落とし所までしっかり解説されていますし、個人情報を第三者提供する際には結局どうすればよいのかという問いについても、ポジションを取った回答を記載しています。
私自身、業務上参照することを確信している一冊に仕上がっていますので、ウェブサービスやアプリに関する事業を営む皆様にもお手にとっていただければと思います。
良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方 の改訂第3版
初版、改訂版に続いて、今回も共著者の雨宮先生とはっしーさんからは多くのことを学ばせていただき、このことが私自身にとって何よりの報酬だと思っています。
また、技術評論社の藤本さん、傳さんには、きめ細やかな進行管理や校正、ご助言を頂き、安心して原稿に向き合うことができました。
ありがとうございました!