多数の事業会社を抱えるホールディングスとして協働する仕組みを作るのはむずかしいが、個々のメンバーは戦闘力が高いので普通に回すだけなら問題ない、というチームを半年くらい受け持っていたときの振り返り。うまくやれたとは到底言えないけど、多くの学びがあったとは思う。
今見ているチームとは性質が真逆なので、その意味でも気づけたことが多かった。


振り返りの読み返しでこれを見つけたときは、「え、Audibleって再開したの今年だったんだっけ?」と本気で驚いた。そのくらいAudibleは日常に入りこんでいる感覚。
聴き放題サービスとはいえ、話題の本は結構な確率で収録されているので、ランニングする習慣のある方にはAudibleを強くお勧めします。


これ、今はかなり明確になっていて、それは「小規模法務チームのオペレーションのベストプラクティス(守破離の守)を作る」というものです。昔から興味・感心を持っていたことだけれど、言語化したときにあぁ、自分がやりたかったのはこれだったのか、と納得できたのが不思議な感覚だった。
まぁ、数年したらまた別の何かを見つけているのかもしれないけれど。


今はこのときとちょっと考え方が変わっていて、少人数チームでタスク確認ミーティングが機能しない場合、チームとしての機能が破綻している可能性があると思っている。他の人が何をやっているか、どういう状況かに興味がないというのは、結構やばいよね、という意味で。


法務未経験のメンバーの立ち上げを強く意識した1年だったので、こういう系の投稿も多かった。
読み返したときにはすでに記憶から抜け落ちているので、(自分が書いたことだから当たり前だけど)そうだよね、なんて感じで同意しちゃってなんだかおもしろかった。


おぅ、結構良いこと言ってるじゃない、と自画自賛した。惜しむらくは、これも記憶からきれいに抜け落ちていたということ。なんとかならんのか、この揮発性の高さ。


今年始めたことの一つにSpacesはあるなー。
一人喋りもやってみたけど満足感はほとんど得られず、自分は語りたいのではなく、誰かと対話をしたかったのだということを自覚した。
2023年も対話を楽しんでいこうと思います!


2022年夏に大きな山を超えたこともあり、業務外活動を再開できたのも今年の大きなトピック。仕事100%になると充実感は得られるけど、どんどんすり減っていくんだよね。
この「数週間前に聞いた」というのも互助会の突発イベントで、忙しがっていたら触れることができなかったものなので、ゆとりは重要だよねということを実感しています。


その閉塞感はキャリアの行き詰まりからくるものではなく、自分の能力の伸びの停滞からくるものでは、という指摘は、残酷だけど向き合う必要があるものだよね。
たった4ヶ月前のことなのにこれも忘れてたw


名言オブジイヤー2022はこちらでした。

といったところで、2022年は大変お世話になりました。
2023年も引き続きよろしくお願いいたします!


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良かれと思ってした行動でメンバーを病ませてしまうマネージャーについて、大掃除をしながら考えてみたので、思いつくままに書いてみようと思います。

良かった点に着目しない


なにかのアクションが100点満点であることはほとんどありません。そのため、あるアクションについては、良かった点と良くなかった点の両方が含まれています。このとき、良かった点に着目しないと、メンバーにとってはフィードバックとダメ出しが同義になるため、フィードバック自体に強いストレスを感じるようになります。
これをやってしまう人は、本人の成長のために良かれと思ってそうしている場合があるのが怖いところです。優しい言い方をすればいいってもんじゃないというのもポイントですね。

答えが一つではない事柄についてクイズを出す


ここでいう「クイズ」は、マネージャー側がすでに答えをもっている状態でメンバーに質問をする振る舞いを指しています。
例えば、打ち合わせでうまく情報を引き出せなかったメンバーに、「あのとき、どうすればよかったと思う?」といった問いかけをするようのケースがそれです。マネージャーは、自分の頭で考えるプロセスが成長につながる、という思いがあってそうしていることが多いのですが、残念ながら、このときメンバーが考えているのは「どういう答えがマネージャーの考える正解か」です(心理的安全性が確保されている関係の場合は別として)
マネージャーの考え方にシンクロできているメンバーは早々に答えにたどり着けますが、そうでない人は「違う」「そうじゃない」を何度か繰り返した後、マネージャーから(ときにはため息交じりに)正解を教えてもらうという儀式を通じて上下関係を刻印されるとともに、自己肯定感がごりごり削られることになります。

どっちでもいいことについて口を出す


どっちでもいいなら黙っていましょう。裁量のなさは、人から活力を奪います。
なお、これは、細かいことに口を出すなという話ではありません。細かくてもこだわるべきことについては、その理由を示しつつこだわればよいのです。

できない人として優しく対応する


期待されていないという実感は人を傷つけます。
期待できる範囲・限度の仕事を任せて、しっかり期待してみてはいかがでしょう?
なお、「できない」と思っている人のアウトプットは、先入観もあって粗がとても目立って見えるということもお忘れなく。


ダメ出しがストレート


自己肯定感が極めて高く、ダメ出しに強いマネージャーが、本人の成長のためを思ってやってしまいがちなのですが、普通の人はダメ出しを受けると傷つくという前提で、言い方を工夫する必要があります。
なお、内容を「工夫」をすると、何についてダメ出しをされているのかわからなくなるので、よくないというのが難しいところではあります。


いろいろ書きましたが、環境や関係や相手の属性によってはそうすべき場合もあるという意味で、これはべからず集ではないという点は最後に付記しておきます。
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T/O
だとエントリーにならない&意外に徹底しているチームは少ないようなので効能を書いておくと、
  • 作業漏れがほぼなくなる
  • 業務が見える化される結果、業務改善がされやすくなる(このステップ、無駄じゃね?という会話が生まれる)
  • 誰でも同じ品質で対応できるようになり、リソースの稼働効率が良くなる
  • 久しぶりの対応でも「思い出す」工程が不要ですぐ作業にとりかかれる
  • 割り込みに強い(中断させられたときの影響が限定的)
  • 役割分担ができる(このステップやるから、次すすめておいて、みたいなかんじ)

コツは、
  • 文章を理解できれば作業ができるくらいに具体的に書くことを目指す
  • 最初から完璧なものを作ろうとしない(運用でブラッシュアップしていく)
  • 作業の都度毎回参照する(慣れていないと意外にこれが難しい)
  • マニュアルへのアクセスを確保する(slackチャンネルのリンクとか、ショートカットとかで)
  • 修正のハードルをできる限り下げる。
って感じです。
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野田先生が新下駄で日本語入力をされていると知り、ローマ字打ちの限界に悩んでいたこともあって8月中旬くらいから新下駄の練習をはじめました。
ローマ字打ちだとこのサイトで概ね110打鍵/30秒なので、これを超えることが当面の目標なのですが、どうなったかというと…
スクリーンショット 2022-12-29 11.04.20
と、絶好調で90打鍵/30秒といったところでまだまだローマ字打ちに匹敵するところまではいけませんでした。

ただ、11月ごろから業務でも新下駄を使うようにし始めたので、これからもしばらくは伸び続ける感触はあります。誤打鍵もまだそれなりに多いのでストレスはありますけど。

以下、感想です。
  • 新下駄はワンストロークで1〜3文字打てるので、ゾーンに入ってバチバチ打てたときはかなり気持ちいい
  • 覚えるコストはかなり高い。誤打鍵もなかなか減らない。
  • 環境を用意するのが結構大変
  • 英語との親和性がないので脳の切り替えが必要(幸いにしてそうする必要があることはかなり少ないですが)
  • 人に勧められるかという意味では、あまり勧められない。好きならありでは、というくらい。
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このtweetは、法務による売上への貢献を考える際のエッセンスを含んでいると思っているので、ちょっと膨らませてみる。

法務に限らずいわゆる間接部門は、原則として直接売上を建てないから間接部門とカテゴライズされるわけで、売上への貢献を求められてもピンとこないのは無理もない。だからなのか、目標設定に際しても、事業にどう影響するのかにまで言及されないことがとても多い(コンプライアンス研修を「実施する」とか、個人情報の管理体制を「構築する」とか。)。
ただ、事業にポジティブな影響が全くないような施策はやるだけ無駄だし、人を巻き込む場合は迷惑ですらあるので、事業にどのような影響があるのかを考えずに施策を実施することは避けなければならない。
そして、「事業への影響を考える」際にもっともわかりやすいのが、売上への貢献なんじゃないかと思っている。逆に言えば、売上への貢献がない施策をそれでもやるべきというのって、難しくない?ということでもある。

そもそも、売上は概念上のものであり、最前線の営業であっても独力で売上を直接生み出しているわけではないことは、「この売上は私だけの力で作ったものです。」と誰かが言った場合の周囲の反応を想像すれば容易に理解できる。つまり、濃淡の差こそあれ、多くのメンバーが売上の創出に関与していることは自明なわけだ。そして、その「多くのメンバー」の中に法務も入っているはずで、そうだとすると、法務の売上貢献も、問われているのは有無ではなく、「どのように関与したか」だけでしかない。
せっかく関与しているのだから、「どのように関与したか」を自覚して、進歩させていこうというのが、法務が考える売上への貢献なんだと思う。

この考え方は、依頼部門と法務部門との対立構造を解消するのにもある程度有益だと思っているんだけど、それはまた別の機会に。
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Audibleとの最初の出会いは、チケット制(月に1冊相当のチケットをもらえる月額制)だったころ、英語学習用に洋書を流し聞きするために登録したことだったんだけど、このときは通勤時間を聞く時間に充てていたのでいまいち集中できず、コスパの悪さも相まって半年くらいで退会してしまった。
その後、聴き放題になったことをきっかけに再開してみたところ、これがランニングのお供として最適だということに気づいた。

良いと思ったポイントはいつくかあって、まずひとつ目はAppleWatchだけで聴けること。ランニングにiPhone本体はもって行きたくないので、AppleWatchアプリがあって、AppleWatchだけでさくっと聴けるのはすごく楽。事前に同期しておかなければならないのは手間ではあるものの、1冊聞き終えるのに数日はかかるので、同期するのは1ヶ月に1回も無いくらいで済むからあまり気にならない。数ヶ月前からAppleWathcアプリのバージョンアップに伴って倍速再生ができなくなり、使い物にならなくなっていたんだけど(1.7倍くらいで聞かないと読み上げが遅すぎるのです)、最近解消された。

次に、ラインナップがかなり充実していること。
Audibleのサイトを見ると分かる通り、話題になったビジネス書がかなりの確立で収録されているし、僕はあまり聞かないんだけど小説も話題作は結構はいっている感触。
あと、ビジネス書は今読む必要性があるわけではないので積みがちなジャンルだと思うんだけど、ランニング起点で読み進められるので、積まずに済むというのも良いポイントだと思う。

そして、ランニングと聞く読書の相性が抜群に良いこと。通勤時間はつい携帯を見たり、仕事のことを考えたりしてしまって意識が別のところに行きがちだけど、ランニング中は外からの刺激が少ないので本から意識が逸れにくいし、ある程度まとまった時間同じ行為を続けるので細切れになりにくい。CMではランニング以外に家事をしながら聞いているシーンも使われているけど、ランニングのような同じ単純作業を長時間するわけではないので、集中するのは結構難しいんじゃないだろうか。

こんな感じで今年いろいろな本を聞いたんだけど、中でも良かったものをいくつかご紹介します。

三体シリーズ
いわずと知れた三体三部作に加えて、公認されたファンブック?の三体Xも聴き放題。めちゃくちゃ長いので、本だと相当気合を入れないと読み始める気になれないんじゃないかと思う。
これを三体を聞いていた期間は、地球外生命体が存在することが当然の事実として自分の中で認識されていたし、今でもそういう感覚はそこそこ残っている。本格SFを読んだことがなかったので、インパクトがより大きかったのかも知れないけど、読了後の感想は「すごいものを読んでしまった」。

起業の天才!―江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男
経営者の軌跡を追った本は好きなジャンルの一つなんだけど、そういう好みの問題を超えて抜群におもしろかった。リクルートがつまづきながらも成功して大きくなるサクセスストーリーだけでなく、その後の孤立やリクルート事件を巡る駆け引きも生々しく描かれていて、ドラマがあった。

アナロジー思考
伝わりにくい例え話をすることに定評のある私ですが、例え話が好きな理由を自覚できたのはこちらの本を聞いたから。
事象の抽象化と共通点の抽出を通じて、全然関係なさそうな2つの物事に強い共通性があることを発見したときの快感を共有したいってことなんだけど、なかなかわかってもらえずに悲しい思いをしているので、みんなもこれを聞いて伝わりにくい例え話を好きになってほしい。

ストーリーとしての競争戦略
戦略の競争力を、因果関係の太さと長さで説明してくれる。
↑のアナロジー思考とも通じるなるほどね、感があった。

ランニングしていてAppleWatchもってる方には、Audibleおすすめです!

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このエントリーは、はるたろうさんのリクエストにお応えしてお送りします。

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しくじり法務先生とは、テレビ朝日の番組「しくじり先生」のフォーマットに乗っかって、法務担当者が過去の失敗談とそこから得た学びを共有する法務互助会内のイベントで、2022年7月からいつものとおり思いつきで始まり、2022年は4回開催されました。(第5回の開催も決まっています。)
【第1回のスライドから抜粋】
スクリーンショット 2022-12-25 22.18.04

はじめたきっかけは、前述のとおり思いつきなのですが、これには実は原型があり、それはリモートワークが本格化したタイミングで始まった朝会のおまけコンテンツでした。
この朝会は、出社が減ったことによるコミュニケーション不足を補うために始まったものだったのですが、業務連絡だとコミュニケーションが発生しにくいので、朝会の最後にコラム的なちょっといい話をしようぜ、ということになり、そこで僕が過去の失敗談と学びを何度か話したところ結構盛り上がったので、色んな会社の法務の人からも聞きたいなと思って始めてみたといったところです。

効果ですが、過去の失敗とそこから得た学びを資料にまとめるという営みは、かさぶたを剥がすような痛みを伴う反面、原因とまなびを言語化する過程で必ず丹念な振り返りをすることになるので、発表者にとっては強い学びの機会になるように感じます。漠然と「あのときはうまくいかなかったなぁ」と思っているだけでは到底見つけられなかった教訓を引き出せたという実感があったのは、僕以外の3人の発表者の方も同じなんじゃないでしょうか。
あとは、(こんな言い方をするのもどうかと思いますが)人の失敗談はそれ自体エンタメなので、聞き手にとっておもしろく、かつ学びもある良質なコンテンツのある程度決まったフォーマットで(=自分で工夫を凝らさなくても)提供できるというところも大きいと思います。一言でいうと、資料を作るのがかなり楽です。こういうのを目の当たりにすると、昨今は若者は全然見てないとか斜陽産業と言われがちですが、やっぱりテレビの企画力ってすごいなぁって思いますね。


最後に、しくじり法務先生で発表されたこちらのメッセージを共有して締めようと思います(これは、書籍や映像作品も含めた2022年に見聞きしたセンテンスのうち、最も心に残ったものです)


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昨日ポストしたエントリー(法務部門長のおしごと)は、実は20時にそれまで書いていた草稿を捨ててがーっと書いたものだったのですが、捨てた方もせっかくなので#LegalAC外でひっそりポストしておこうと思います。
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法務部門長になる道筋


法務に限らず、部門長の求人は、原則として現任の部門長か、部門長の経験者であることが要件になっていることがほとんどなので、「なりかた」という意味では、現実的な答えとしては昇格するしかありません。
参考:

そこで、まず把握しなければならないのは、状況的に、あなたが法務部門長に昇格できる可能性はあるのか、です。まず、以下のマトリックスをご覧ください。
matrix
「次の部門長候補」は、上長から特命的なミッションを依頼されたり、上長の不在時に決裁の代理や会議のファシリテーションをすることが(同僚からではなく)上長から期待されている人です。多くの組織では「候補」が明確なことが多いのではないかと思います。

AまたはBの場合


上記のマトリックスに当てはめて、Aの環境にいる人が自分の努力だけで法務部門長になるのが難しいということについて、特段の説明は不要でしょう。また、Bの環境にいる人も、「候補」が次の法務部門長になることが見えている以上、Aの人と状況に大差はありません。
つまり、「候補」になれていないAまたはBの方は、そのままでは何年経っても法務部門長になれないと考える必要があります。

そこで問題になるのが、「候補」になる方法です。
これについては、ある程度合理的に運営されている組織においては、身も蓋もない話ですが、チーム内で最も高いパフォーマンスを発揮し続けることしかないと思っています。ただ、ポイントなのは、ここでいうパフォーマンスの高さは、あなたの自己評価も、依頼者からの評価も、同僚からの評価も無関係で、評価者から見たパフォーマンスの高さだということです。
特にBの環境では現任の法務部門長がいないため、被評価者からの評価と自己評価も含む法務内の評価との間にギャップが生じることが少なくありません。しかし、こと「候補」になることを目指す場面では、「評価者がわかっていない」ではなく、「自分が評価されるポイントを把握できていない」という発想を持たなければ、このギャップを埋めることは難しいのですが、ここはなかなか理解を得にくいポイントであるように感じます。(諦めてしまったり不満を抱くだけで、堂々巡り・足踏み状態になってしまう人が少なくない。そうさせてしまうのは上長の責任でもあるのですが…)

Dの場合


では、「候補」でもあり、現任の法務部門長もいないDのようなケースは安泰かというと、そうとも言えません。Dは、組織としてはあなたを法務部門長にする余地があるにも関わらず、そうしていないという状態だからです。
Dの状態にある方への処方箋としては、まずは意志の表明、つまり、上長との1on1や、目標設定の場で法務部門長を目指すという意志を表明するということをお勧めします。能力的に問題ない場合には、案外するっとなれたりすることも少なくありません。自分のキャリアを、自分以上に真剣に考えている人はいないのです。がんばっていれば人は見ていてくれるという考えは美しいですが、ある種の甘えも含んでいるということもまた事実だと思うのです。

仮に、能力的に足りない部分があるなどの部門長に昇格させられない理由がある場合でも、意志を表明することでクリアすべき課題を明確にしてもらえることや、そのための助言や支援を受けやすくなるので、やって損はありません。
なお、事実上法務の責任者であるにも関わらず、部門長の役職を付与されない結果としてDになっている場合は、対外交渉の際に肩書があると便利とか、親が喜ぶとか、年始のおみくじにかいてあったとか、何でも良いので理由をつけて肩書を貰ってしまうことをお勧めします。冒頭で書いたとおり、「部門長の求人は、原則として現任の部門長か、部門長の経験者であることが要件になっている」ので、肩書がないと転職のときにハンディキャップを負うことになってしまうからです。

Cの場合


Cの中には、仮に現任の法務部門長がいなくても法務部門長に選任されない人と、現任の法務部門長がいなければ後任として昇格する人が含まれ、前者については前述のDのアドバイスがそのまま当てはまります。
後者については、上が詰まっていない会社に転職するのも悪くはありませんが、転職先で再度「候補」になれるとは限りません。その人が活躍できるかは、その人自身の能力と同じくらい、ときにはそれ以上に、環境(上司・同僚との相性、カルチャー、規模など)に左右されるということには注意が必要です。(ちなみに、募集要項の「マネージャー候補」という記載は、現時点でマネージャーや強い「候補」がいないことと、この採用では「候補」になれそうな人を採りたいという募集企業の意向を示しているだけであり、採用された人が「候補」になれることを約束するものではないことにも注意が必要です。)

そのため、一番におすすめしたいのは、いずれは部門長になりたいという意志を表明しつつ、部門長の右腕に徹することです。あなたが「候補」である限り、権限移譲や陪席という形で部門長の業務に携わったり至近距離で見たりする機会は少なくないはずで、それは座学では絶対に得られない学びの機会になります。
そうは言っても、現任の法務部門長がいる限り、自分がその席に座ることはないじゃないかというのはそのとおりではあるのですが、あなたが活躍すればするほど、現任の法務部門長が更に昇格する(その結果席があなたに回ってくる)チャンスも増えますし、そうでなくてもあなたのためにポジションが作られたり、役職がつくことは大いに期待できるのです(それが転職の際に武器になるのは前述の通り)

おわりに


向き不向きはあるにせよ、マネージャーという仕事には、一生をかけて取り組むに値するおもしろさがあると思っているので、将来どうしようかなーと思っている人がとりあえず目指す選択肢としてはありじゃないかな、と思ってこれを書きました。
ただ、多分大企業だとこんな単純な話ではないんでしょうね。
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このエントリーは、法務系Advent Calendar 2022の23日目のエントリーです。
TMIの大井先生からバトンを受け取りました。

はじめに


以前、twitterで法務担当者向けにキャリアの仕上がりの理想についてアンケートをとった際に、最も票数を獲得したのは法務部門の責任者でした。


それにもかかわらず、これまで法務部門長のしごとの全体像についてはあまり語られてこなかったのではないかと思います(単に僕が知らなかっただけだったらごめんなさい)。

そこで、今年の #LegalAC では、これまでのマネージャー業の棚卸しの意味も込めて、法務部門長のしごとを取り上げてみることにしました。

アウトライン


本稿では、法務部門長のしごとを、「チームを作る」と「チームを動かす」の2つに大きく分けました。
そして、さらに、「チームを作る」は「採用」と「育成」と「カルチャー作り」に、「チームを動かす」は「目標の設定」と「予算の策定」と「モチベート」と「アサイン」と「評価」に分けています。

チームを作る

採用


チームを作る第一歩は、当然ながら採用です。
採用というと、「選考を通じて良い人を選ぶ業務」を想起してしまいますが、待ちの姿勢だけで自分の思い描くチームを作るのは、会社の魅力がとても高いような例外を除けば難しいはずです。そのため、この人と一緒に働きたいと思える人を普段から探し続けること、出会った良い人とつながりを持つことなども大切になります。
法務の採用については、私が法務マネージャーの範として私淑しているVISIONALの小田さんの全人格的な採用スタンスをロールモデルにしています。
全人格的ということは、取り繕えないということでもあるので、後述するカルチャー作りから採用は始まっているという言い方もできるのではないかと思います。

育成


育成といっても、知識やスキルを直接教えることは誰でもできる以上、法務部門長のしごとというには語弊がありそうです。
では、何が法務部門長が取り組むべき育成なのかというと、それは、メンバー自身の成長を後押しすることだと思っています。
成長を後押しするといっても、直接インプットを求めるようなことは逆効果です(そういうことを言いたくなったら、学生時代に、親から「勉強しなさい」と言われたときの気持ちを思い出してくださいね。)。
そもそも、やる人は言われなくてもやるし、やらない人は何を言われてもやらないのがスタート地点です。だとすると、法務部門長が取り組むべきことは、小さな成長を見逃さずに称賛したり、できることを増やそうと努力することはいいことだというムードをつくったりすることを通じて、「やる人」になってもらうことかな、と。
最初から「やる人」を採ることも重要なので、採用とも密接に繋がっていますし、ムード作りという意味では後述するカルチャー作りにも繋がっています。また、めんどくさいことを言われずに必要な研修の受講や書籍購入ができるようにするという意味では、予算の策定も影響してきます。

カルチャー作り


カルチャーは、常にそこにあるものだと思うので、カルチャー作りというよりカルチャー変革と言った方がしっくり来るのですが、やや大仰になってしまうので、カルチャー作りとしています。
これは、行動指針や業務ルールの策定、日々のフィードバックなどを通じて組織のムードを変えていくという仕事です。
カルチャーづくりにおいて気をつけなければならないのは、居心地の良さや仲の良さみたいななんとなく良さそうなものではなく、組織目標を達成するために必要なカルチャーを定義し、それを目指すことだと思っています。
なお、良いカルチャーも、たった一人の声の大きな冷笑家や評論家が入ってくるだけであっという間に崩れ去ってしまうものなので、採用の際にはカルチャーブレイカーではないかをよく確認する必要があります。

チームを動かす

組織目標の設定


組織として何を目指すのかを定めて明示するのが、目標の設定です。
法務がどの方向に向かうのかを示す旗印になる目標や、個人の目標策定の際に依拠できるのが良い組織目標だと思ってはいますが、なかなか難しいんですよね。
チームのミッションの策定も、組織目標に含んでいます。

予算の策定


何にいくら使うのかをスプレッドシートに書くことは最終的な作業で、実のところいちばん大切なのは、予算枠をとってくることだったりします。
予算枠はある程度の柔軟性はあるものの性質としてはゼロサムゲームなので、「お前が必要と言うならそうなんだろう」と決裁者に思ってもらえる信頼関係がとても重要になります。
予算がなければ採用もできないので、予算の策定は採用と密接に関連します。

アサイン


アサインも、本人の希望と業務をすり合わせて担当を割り振るだけでは不十分です。
例えば、権限移譲を通じて成長を促したり、高頻度のローテーションで変化を当然のこととして受け入れるカルチャーを育んだりすることもアサインのしごとに含まれます。
また、本人が気づいていない「向いている業務」の発見を手伝うことも、アサインによって実現できることの一つです。

モチベート


やる気の有無でパフォーマンスは大きく変わり、部門長の振る舞いによってメンバーのパフォーマンスは大きく変わるという意味で、メンバーのモチベートは部門長の最重要業務の一つです。
褒めてやる気にさせる、みたいな小手先のテクニックではなく(そういうのはたいてい透けて見えちゃうものなんですよね)、カルチャーや組織目標への共感や、成長実感などでモチベートできるようになると、好循環が回り始めるのでぜひそういう状態を目指したいですね。

評価


目標設定の段階で達成できた場合の評価について認識合わせをするという意味で、目標設定も評価の一部に含んでいます。
評価は育成、カルチャー作り、組織目標の設定、アサイン、モチベートと密接に関連しているものなので、評価は部門長の業務の集大成と言えるものだと思います。
例えば、評価を通じて「来期はこれに取り組もう」ということに合意できれば、メンバーは「これ」をうまく進められるように努力をしてくれるかもしれませんし、率直なフィードバックを受け入れるカルチャーを作れていれば、傷つけないように過度に配慮するあまり何のダメ出しをしているのかわからないという状態を避けられるかもしれません、と言った具合に。
別の言い方をすれば、評価をいい感じに回せているかは、部門長のしごとをうまくやれているかを端的にあらわしているのかもしれません。

おわりに


もし、このエントリーを読んで部門長の仕事っておもしろそうだな、とか、出世に興味なかったけど、ちょっと目指してみようかな、なんて思ってくれる方が一人でも出てくれたらめっちゃ嬉しいです。
感想、反論、励まし、一緒に働きたいというお申し出は、@kataxまたはマシュマロまで!
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1ヶ月前、facebookで衝撃的な投稿を見かけた。
GMOインターネットグループ監査等委員取締役の橘さんが逝去されたとの、奥様による代理投稿。
追って、GMOから、プレスリリースも出された。

僕は、橘さんとそれほど親しくお付き合いをさせていただいていたわけではない。にもかかわらず、一方的に頼れる兄貴分のような信頼感を抱いていた。
飄々としていて、真面目な顔でおもしろいことを言い、教えを請えば快く応じてくださる方だった。
一度、職務発明制度を作るためにお話をお伺いした後、ランチをご一緒させていただいたことがあった。貴重なお話をお伺いさせていただいたこともあるし、そもそもこちらからお声掛けしてお時間を頂いたので、せめてランチ代くらいは持たせてくださいとお伝えしたら、おどけた調子で「こういうものはおとなしく払わせておけ」と訳のわからないことをいわれて結局ごちそうになってしまった。
LTのイベントをやるから何か喋ってくださいとお願いしたら、二つ返事で引き受けてくださり、抜群におもしろいLTをしてくださった。

GMOの開示には、同種の開示では見かけたことのない一言が添えられている。
人間味溢れる優しいお人柄は、共に働く仲間たちの心のよりどころとして前進する力を与えてくれました
という一文が、それだ。

繰り返しになるけど、僕は橘さんとそれほど親しくお付き合いをさせていただいていたわけではない。でも、このIRをみて、僕も、橘さんのような人になりたいって衝動的に思ったんですよ。ほんとうに。衝動的に。

橘さん、ありがとうございました。
あなたは、おもしろくて、かっこよくて、頼れる兄貴でした。
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