法務系Advent Calendar1日目のエントリーです。

先日、大規模な法務部を擁する会社に遊びに行った際、
ある程度辞退されることを見越して多めに修習生を採用したら全員入社まで至って嬉しい悲鳴
とのお話をお伺いし、
  • そもそも修習生をターゲットにした採用活動をしているという事実
  • まとまった人数が修習修了後ダイレクトに(法律事務所を経ずに)会社員になっているという事実
に驚かされ、いよいよ無資格法務部員にとっては苦難の時代が到来しつつあるんだな、ということを実感したわけですが、そんなこともあり、今年は「無資格法務部員のキャリアパス」について好き勝手なことを書いてみようと思います。
なお、根拠は主観や想像ですので、誤解や誤認は笑ってご容赦頂くとともに、コメント欄でご指摘頂けると幸いです。


【前提】


  • ここでは「無資格」を、日米いずれの弁護士資格も保有していない人という意味で使います。
  • 企業内弁護士の人数は、今後も現在と同等またはそれ以上のスピードで増えていくと想定しています。
  • IT系企業に所属した経験しかないので、それ意外の業種には当てはまらないかもしれません



【全体像】


実際のところ、有資格者であるか無資格者であるかを問わず、会社員というくくりで見ればキャリアパスの選択肢自体に大きな違いはありません。すなわち、マネージメント層を目指すか、スペシャリストとしてスキルを掘り下げるか、法務で培った知見をベースにジョブチェンジするか、の3択です。
今回は、法務の観点からこの3択を「法務マネージャーコース」「ガチマネージメントコース」「契約法務コース」「知財法務コース」「コーポレート法務コース」「内部統制・監査補助者コース」「投資コース」「人事コース」の8つのコースに細分化して考えてみたいと思います。
careerpath


【マネージメントルート:法務マネージャーコース】


  • 特徴


    いわゆる法務部門の責任者を目指すコースです。
    法務部門の責任者といっても、役員クラスから部門内のリーダークラスまでそのレベル感は様々です。
    積極的にマネージャーになりたいと考えている法務担当者だけでなく、将来について特に何も考えていない法務担当者も、基本的には成り行きでこのコースを進む(ものと周囲から見られる)ことになります。それでいて、実際にマネージャーになれるのは小さい組織でも数人に一人、大きい組織だと数十人に一人という狭き門なので、超絶レッドオーシャンの選択肢といえます。例えば、同年代に自分より上の覚えがめでたく、自分より優秀な同僚がいる場合、その同僚が辞めない限りマネージャーのお鉢が回ってくる見込みはありません。また、周りを見渡して自分にマネージャーになる見込みがなかったら、転職することでマネージャーの地位を手に入れたらいいんじゃないかと考えるアグレッシブな方もいらっしゃるかもしれませんが、実のところそれはそれで容易ではありません。なぜなら、マネージャーとして採用されるのは、原則としてマネージャーだけだからです。逆に言えば、似非でも飾りでもなんでも良いので、マネージャーっぽい肩書を手に入れることさえできれば、転職を通じて本当のマネージャーに華麗に転身することは不可能ではありません。

  • このコースのおすすめポイント


    マネージャーへの昇格の基準として、有資格者か否かはさほど重要視されないことが多いので、昇格の場面では無資格であることが不利に働くことについてさほど心配はいりません。
    また、ある程度年齢を重ねると、無資格法務はマネージメント経験がないと転職することが厳しくなるため、会社が傾いたときに離脱しやすくなるということも利点と言えるでしょう。

  • このコースの厳しい点


    所詮は部門責任者なので、待遇の上限や裁量の幅は限定的です。
    外資系等一部の企業においては、弁護士であることがマネージャーの要件になっており、そもそも無資格者に門戸が開かれていないことがあります。
    また、最近は将来有望なベンチャー企業には早い段階で弁護士が法務責任者として参画していることが少なくないため、「ベンチャー企業に法務として入って上場まで支援する。」という役割は無資格法務の手に渡りづらくなっています。



【マネージメントルート:ガチマネージメントコース】


  • 特徴


    管理本部長や子会社社長などの、法務の枠を超えたより広い領域をカバーするマネージャーを目指すコースです。
    もちろん、最終的には本社社長ということもありうるのでしょうが、起業したようなケースを除けば極めてレア(僕は2人しか実例を知らない)です。
    ここを目指すのであれば、法務の枠にとらわれず、意識的に経営・財務・経理・税務の知識を蓄え、経験を積むとともに、早い段階から「このポジションを目指している」ことを上司に宣言しておくことをお勧めします。とはいえ、望んでなれるものではなく、周囲が認める実力や人望と共に、卓越した運も必要になることでしょう。

  • このコースのおすすめポイント


    経営層の一員になるわけですから、他のコースと比べると待遇は良くなります。
    対外的なステータスとしても抜群で、外受けもバッチリでしょう。

  • このコースの厳しい点


    前述のように法務責任者も狭き門でしたが、このコースでは他部門のマネージャーとの競争にも勝つ必要があるため、それより更に難易度は上がります。しかも、管理部門のトップは、財務・経理系や経営企画・経営管理系の部門から迎えられることが多く、法務責任者にその役割は期待されていないこともさらに難易度の上昇に拍車をかけることでしょう(それ故に、早い段階でここを目指すことを公言すべきなのです。)。
    また、ここまで偉くなってしまうと転職は責任の放棄を意味することになりますので、自分の意思だけで転職することは難しくなります。とはいえ、そもそも自分の意思で転職しようと思っちゃうような人はここまで上り詰めることはできないのでしょうけれども。


【スペシャリストルート:契約法務コース】


  • 特徴


    契約法務を専門領域にするプレイヤーです。
    ほとんどの法務部員は一定レベル以上の契約法務のスキルを有していることに加え、外部の弁護士との競争が最も激しいコースであることから、将来的に淘汰される可能性が低くない、かなりリスキーな選択肢なのですが、マネージャーになりたくない無資格法務担当者はなぜかこの道を進みがちです。いったい何を考えているんでしょうか
    スペシャリストである以上、英文契約を適切に処理できるスキルは必須であり、また、業法を含む幅広い法律知識の習得が必要になります。
    このコースを選ぶ人は変わり者であることが多く、実際周囲からも変人扱いされがちです。年下のマネージャーから「この人ほんと使いづらいわ・・・」って思われないようにしましょうね。

  • このコースのおすすめポイント


    マネージメント業務から開放されるので、比較的ストレスは少ないはずです。
    突き詰めることが好きな人は、日々の業務が楽しくなるんじゃないかと思います。

  • このコースの厳しい点


    ある年齢を超えてから転職することになった場合、給与が大幅に減ることを覚悟する必要があります。というか、そもそも転職自体が非常に厳しくなります。
    また、スペシャリスト向けの給与テーブルを用意していない会社では、給与の上昇余地は限定的であり、そもそもスペシャリストというより「出世できなかった人」としか見てもらえない可能性があります。
    他のコース以上に幅広い知識を日々インプット&アップデートし続ける必要性が高いので、年齢を重ねて記憶力が衰えたり無理が効かなくなると、比例してパフォーマンスも落ちてしまう可能性がマネージメント系のコースより高いです。


【スペシャリストルート:知財法務コース】


  • 特徴


    産業財産権周りの対応を専門領域にするプレイヤーです。会社によっては、著作権(というか自社著作物のライセンス)も知財部隊が担当していることもありますが、主戦場がそこではないということには違いはありません。また、商標は商標でいろいろあるのでしょうが、商標一本で存在感を出すことは難しいので、やはり知財法務の花形は特許といえるでしょう。
    知財法務においてはインハウスの弁護士の存在感はさほど高くなく、専門資格である弁理士はそもそも保有者が劇的に増加しているような状況でもないので、他のコースと比較すると無資格であることが不利に働く場面は多くはないはずです。他方、特許に関してはエンジニアからの転身組との競争が発生するという点には注意が必要です。(特許の世界ではむしろエンジニア出身の方が本流であることが多い印象です。)
    なお、弁理士試験は法律系資格試験であるという意味でエンジニアより有利なはずなので、このコースを進むのであれば弁理士試験の合格を目指すのも良いでしょう。

  • このコースのおすすめポイント


    スキルのポータビリティが非常に高いため、知財法務の実務経験があることは転職時に有利に働くことが多いです。
    もし弁理士試験に合格することができれば、更に安定感が増すことでしょう。

  • このコースの厳しい点


    特許は登録までかなりの費用が必要になることもあり、知財のスペシャリストを置けるのは一定以上の規模の会社に限られてしまうため、そもそも中小規模の会社に所属していると知財法務スペシャリストを目指すことすらできない事があります。


【スペシャリストルート:コーポレート法務コース】


  • 特徴


    株主総会や取締役会などの事務局業務を専門領域にするプレイヤーです。
    会社法や金商法を始めとした法令以外にも社内規程や慣習などのローカルルールに精通する必要があります。
    ルーチンワークを確実にこなす能力が求められる一方で、ルーチンワークを確実に回すことだけに集中してしまうと、いわゆる「タコツボ化」に陥りやすい点には注意が必要です。あなたの会社にもいませんか?タコツボってるコーポレート法務担当者が。
    開示やインサイダー規制の方面にまで領域を広げることができると、存在感が更に高まることでしょう。

  • このコースのおすすめポイント


    法務マネージャーは株主総会・取締役会の事務局に入ることになるので、法務マネージャーに転身した際にコーポレート法務の経験は必ず役に立つことでしょう。
    経営層との距離が非常に近く、また取締役会の中に入れることもあり、一般社員が触れることができない情報に接する機会を多く得られます。

  • このコースの厳しい点


    法務マネージャーのサポートという位置づけになりがちであり、そうなってしまった場合は物足りなさを感じる方もいるかもしれません。
    どんなに文献等にあたってしっかり作成したコメントも、経営陣の「一応○○先生(お気に入りの弁護士)のコメントも聞いといて」の一言で粉砕されることがあります。(ただ、これはインハウスの弁護士に対しても程度の差こそあれ発生します。)


【別職種ルート:内部統制・監査役(委員)補助者コース】


  • 特徴


    内部監査系職種への転身コースです。
    内部監査において適法性のチェックは避けられないので、法務の経験を十二分に活かすことができることでしょう。
    受け身の監査(問題点の指摘)にとどまらず、監査を通じて各部の業務改善をサポートするという視点で業務にあたるようになると仕事の楽しさがぐっと高まるそうです。

  • このコースのおすすめポイント


    閑職と捉えられている会社もありますが、実は会社全体の情報を俯瞰できる立場から大きな裁量を与えられて業務を遂行できるという意味ではおもしろみのある仕事です。
    特に監査役(委員)補助者については経営側の意思で異動させることが難しいことから、落ち着いて業務にあたりたい人にとっては天国なのかもしれません。
    積極的にこのコースを希望する人はさほど多くないので、競争に晒される心配は少ないでしょう。
    基本的に全社の情報に隈なくアクセスできます。が、やり方を間違えると現場から激しく疎まれるのでご注意を。

  • このコースの厳しい点


    管理系部門の出世コースに組み込まれているような会社は別として、出世・昇進からは遠ざかることになることは覚悟したほうが良いかもしれません。
    監査においては会計・経理の知識が不可欠なので、新たな知識を大量にインプットする必要があります。


【別職種ルート:投資コース】


  • 特徴


    投資部門や投資子会社(CVC)への転身コースです。
    法務としてもM&Aや出資等のケースで事業譲渡契約や株式譲渡契約、合併契約などをチェックする機会はあると思いますが、このコースが想定しているのはむしろ法務にこういった契約のチェックを依頼する側の「投資先を見つけ、投資を実行し、投資後のフォローを行う」職種を想定しています。
    投資担当者をおける会社は非常に限定されており、そもそも所属先が投資担当者をおかない場合には自分の意向だけでこのコースに進むことはできません。また、投資業務は属人性が強いことが多く、ジョブローテーション等による人の入れ替えに消極的なため、投資事業を開始する際にメンバーに入れないと、後から参画することは簡単ではありません。投資事業の本流は現業部門であったり、間接部門でも経営企画・経営管理や財務系であることもこの傾向に拍車をかけます。

  • このコースのおすすめポイント


    投資実行の際にかならず考慮が必要になるリーガルリスクのチェックの際に法務の経験を活かすことが可能です。
    契約法務の経験を通じて「事業のつまづきポイント」に対する感度が鍛えられている方は、そのスキルが大いに役に立つはずです。
    コーポレート法務の経験を通じて様々なコーポレートアクションに関する書面総会・書面役会・登記を処理できる方はいちいち待たせる法務に頼む必要がなくなることから部内で重宝されることでしょう。

  • このコースの厳しい点


    投資先の企業価値を測定する上では経営・財務・会計の知識が不可欠なので、新たな知識を大量にインプットする必要があります。
    業務の性質上、すぐに成果が出るものではなく、また失敗に終わることも多いので、必死に頑張っても良い評価を得られない可能性があります。


【別職種ルート:人事コース】


  • 特徴


    法務のみならず、人事(基本的には総務も)を兼務するコースです。
    管理部門が小規模な会社では、専任の法務を置くことができないため、法務をやりたければこのコースに乗らざるを得ないというケースはよく有ります。
    有資格者はこのような兼務を避ける傾向にあるため競争は厳しくありませんが、会社の成長に合わせて法務を強化することになった場合に外から専任の法務担当者を調達され、総務・人事側に寄せられてしまうことのないようには注意しましょう。

  • このコースのおすすめポイント


    純粋な法務は労働法の知識に乏しいことが少なくないので、労務業務を通じて得られた労働法周りの知識や実務経験は大きな武器になりえます。
    経理側にマネージメント能力に優れた人がいない場合、レアルートのガチマネージメントコースに進める可能性があります。

  • このコースの厳しい点


    人事業務は給与計算、年末調整、採用なども担当すると業務負荷が非常に高くなるので、業務全体に占める法務の割合が低下しがちです。また、法務専任ではないことから、経費を使った書籍の購入やセミナーの受講などがすんなり認められないケースもありえます(必要なの?と聞かれてしまう。)。
    「法務部」という肩書が無い場合、法務専任で転職する際に経歴が不利に作用してしまう場合があります。
    「法務と、あとは人事や総務の仕事も一部やってもらいたいと思ってます。」と聞いていたのに、実際は法務の業務割合は20%くらいというケースはすくなくありません。こんなときは、ぶつくさ言わずに法務としての法務業務を開拓し、仕事を獲得していくしかありません。


といったところで、明日は柴田先生です〜。
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前回の法務系LTからほぼ2年ぶりに、 @overbody_bizlaw先生主催で第4回目となる法務系ライトニングトークが昨日開催されました。

ATND(セットリストも)はこちら
まとめはこちら

前回、@takujihashizumeさんと共催したときは、参加人数の面でもLTerの面でも手作りで運営するのはもう限界という共通認識を抱いたのですが、今回、 @overbody_bizlaw先生は阿佐ヶ谷ロフトAという(こう言っては語弊があるかもしれませんが)ヘンテコなイベントの開催に慣れているライブハウスを利用することでこの限界を軽々と乗り越えられており、まずはその発想力と実行力に脱帽でした。

また、LTerのみなさまも、ほぼ時間内または時間ピッタリにLTを収められていて、普段から人前で話すことの多い職種であるということを差し引いてもこれはすごいと関心しきりでした。



さて、私といえば、昨今話題に登ることの多いAIと法律問題について、IT系にも縁遠い方もおもしろさを感じて頂けそうな著作権の帰属という側面からすこしお話させていただきました。
特段の規制がかからなければ今後間違いなく登場するであろう自律的に高品質な創作物を制作し続けるAIにより、現在の著作権秩序は一定の変容を余儀なくされるはず、という問題意識を共有できていれば嬉しいです。
スライドだけだと意味不明のような気もしますが、一応アップもしておきました。


最後に、主催の @overbody_bizlaw先生、前半司会のhttps://twitter.com/NH7023さん、後半司会の@kyoshimine先生、プロフェッショナルな支援をご提供頂いた阿佐ヶ谷ロフトAさん、その他の本イベントの準備・運営に携わられた皆様、本当にお疲れ様でした&ありがとうございました。
とても楽しかったです!
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というわけで、先日、@takujihashizumeさんと共催で特許知財系ライトニングトークを開催しました。
僕自身はエンジニアでも特許の人でもなく、ただ単にマネージャーとして見てるだけなのでこれといって語れる材料を持ちあわせてはいないのですが、そこはLT、こんな感じでちゃちゃっとやっつけてみました。



不覚にも当社の鉄板ネタを使ってまで取りに行ったウケが、すべりとややウケの中間程度の笑いにとどまってしまったことで、ほんとトラウマになるかと思いました。いや、まぁ、嘘ですけど。
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法務のような、「自ら作り出す仕事」ではなく「請け負う仕事」が業務の多くを占める部門では、期初にしっかり目標設定をしても、自分の意思とは無関係に発生する突発案件に振り回されてしまい、終わってみれば「今期も色々あったからねぇ」で目標から離れた評価をするはめになりがちですが、目標が蔑ろにされる状態が当たり前になってしまうと、今度は中長期的な視点から取り組む仕組みづくりや業務改善に積極的に取り組む機運が低くなってしまうという弊害が生じます。

今まではしょうがないと思って目をつぶってきたのですが、メンバーの目標設定を支援する立場になった以上はそんな腑抜けたことを言っているわけにもいかず、しばらく考えた上でこんな感じでメンバーにアナウンスすることにしました。

評価の対象と評価基準は、以下の通り
1.既に出来上がっている仕組みを回すこと(日々の業務)
  例:リーガルチェック対応、会議体運営、定例の研修など
  →正確性、安定性、処理スピード、処理件数新たなチャレンジかで評価
   →但し、最高評価でもこれだけでは「中の上」止まり
2.仕組みを作る・改善すること
  例:契約書管理の電子化、リスク管理システムの立ち上げなど
  →影響範囲(全社、部内、自分)、業務へのインパクト、主体性で評価
   →この点が最低評価だったとしても中の下までしか落とさない
3.突発案件対応
  例:M&A対応、新規の訴訟対応など
  →正確性、主体性、新たなチャレンジかで評価

評価基準のイメージはこんな感じです。

hyouka



この3つの軸をベースに目標を設定してもらうことで、各メンバーの志向に沿った目標を設定しやくなると同時に、評価の際の納得度も高められるんじゃないかなと期待してます。

んじゃ、また。
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新年早々、弁護士を1年やっていてわかったことという素晴らしいエントリーに触れました。

そして、ある程度忙しいと、ある種の満足感ともいうべ、「やった感」を感じるようになります。また、周囲も、「○○先生頑張ってるね」と一応評価してくれます。しかし、これが危険です。(中略)日々の業務には励みつつ、勉強を怠ると、一応の腕はあるが、知識がなく、経験とそれによって得たもの(場当たり的なハッタリや交渉力)しか武器がない弁護士になってしまうでしょう。
は、まさに至言。

目標管理や年始の誓いなどで大きな目印をたてないと、ばたばたしているうちに一年が経過してしまい、去年と違うのは、少しの経験と、失った1年分の若さだけ、ということになりかねません。

というわけで、今年の目標を立ててみました。


会社法にちゃんと取り組む
今までお手伝い程度でしか関与してこなかったコーポレート法務に今期から本格的に携わることになったので、急遽錆びつきまくった会社法の知識を何とかする必要が生じました。
レベル感としては、まずは江頭会社法に書いてあることはわかってる・知っている(覚えているではなく)状態を目指そうと思います(それくらい錆びてるんです・・・)。
今は善管注意義務周りと組織再編くらいしか使っていないので、ほぼ1からのリスタートになりますが、逃げずに、謙虚に、基礎からしっかりとやり直したいと思います。

one more thing...
これは今年というより、今後、という話なのですが、今まではどちらかというと避けがちだった「人と出会う」ということにちゃんと取り組もうと思います。
とはいえ・・・これ、どうやって進めればいいのやら・・・

というわけで、今年も一年、よろしくお願いします。
kotoyoro
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法務系Advent Calendar2015の4日目です。

先日公開した契約書のスタイルガイドに続く「契約法務はじめの一歩ツール」として、契約条件の修正パターンをまとめてみました。
新たに契約法務に携わるようになった方にとってのガイドとして機能するよう、できる限り断定的な表現で書くように心がけています。
なお、特定の論点にだけ用いられる修正パターン(合意管轄における被告地主義など)には触れません。
私の個人的な経験・感覚に依るところが大きいので、誤りが含まれている可能性もあります。おかしな記述、疑問点等を発見された場合は、コメントやSNS等を通じて教えていただけると嬉しいです。

A:権利の制限・責任の限定
最も基本的な修正パターンです。
大きく、権利/義務の発生自体を調整するパターン(1・2)と、発生した権利/義務のレベルを調整するパターン(3〜8)とに分けることが可能です。

1.権利・義務の発生要件の追加
説明:
権利・義務を発生させるための要件を追加する修正であり、最も基本的、かつ最も多く行われるパターンの一つです。
基本的とはいえ、条項毎に追加される要件のバリエーションは様々であり、実務に即し、かつ効果的な要件を追加することはそう簡単ではありません。
どのような要件を追加すればよいかわからない場合には、下記の具体例のように、オールマイティの要件である「自社の同意」を追加することを検討してください。
これは、権利の発生を同意当事者が決定できるようになるという意味で、見た目以上に非常に強い意味を持ちます。
逆に、「協議」には要件として追加する実務上の意味がほとんどないため、敢えて追記や削除をする意味はほとんどありません。
複数の要件を追加する場合は、各要件を号に切り出すとともに「以下の各号の要件を満たした場合」といった規定ぶりにすると読みやすくなります。

具体例:
Aは、事前にBの同意を得た場合に限り、本件業務のためにAが要した費用をBに請求することができる。

2.権利・義務の発生を阻害するケースの追加
説明:
但書等により、権利・義務の発生を阻害するための要件を追加する修正です。
基本的に1と同様の機能を持ちますが、権利行使の可否が争われた場合、原則として立証責任は権利行使を受ける側(権利行使を否定する側)が負うことになるため、立証責任を調整するために、権利発生要件として定められた要件を阻害要件に切り替えるといった趣旨でこの修正がなされることもあります。

具体例:
Aは、本件業務のためにAが要した費用をBに請求することができる。ただし、事前にBが除外対象として指定した費用については、この限りではない。

3.権利・義務の対象の範囲の限定
説明:
ライセンスの範囲(地域や領域など)や、秘密保持義務の対象となる秘密情報の範囲などを限定する修正です。
損害賠償の範囲について、「直接損害に限定する」「通常損害に限定する」といった修正が行われることは少なくありませんが、発生した損害が「通常損害」「直接損害」ではないことが明確なケースは決して多くないため、本当にその限定が損害賠償責任の限定という意味で実効性があるのかについては注意が必要です。
逆に、受注者側にとっては、何が瑕疵かをめぐって発注者と認識の相違が生じがちなので、瑕疵の範囲についてしっかり限定をかけておくことは実務上も非常に重要です。
また、実務上うまく設定するのが難しいのが「競業避止義務の対象となる業務の範囲」です。現場(競業されて直接困る人)にしっかりヒアリングするとともに、経験豊富な同僚にダブルチェックしてもらう等の漏れを防ぐための工夫をお忘れなく。

具体例:
Aは、本契約に関してBから開示された情報のうち、秘密に取り扱うべき旨が明示された情報を、第三者に開示もしくは漏洩し、または本件業務の実施以外の目的のために利用してはならない。

4.権利・義務の上限の設定
説明:
損害賠償額や収益分配金額などの上限を設定する修正です。
上記の3で触れた損害賠償の範囲の限定と異なり、損害賠償額の上限設定は「これ以上損害賠償責任は負わない」というわかりやすい制限がかかるという意味で、非常に強力な限定となります。
継続的契約において上限設定を行う場合は、上限のリセットタイミングや判定の単位も設定しないと不合理な規定になってしまう可能性がある点には注意が必要です。
また、強力な限定であるがゆえに、取引全体のバランスに鑑みてあまりに不合理な限定を設定してしまうと、ケースによっては裁判所から上限をスルーされてしまう可能性もあることにも注意が必要です。

具体例:
Aは、Aの責に帰すべき事由によりBが損害を被った場合は、Bの請求に応じ、本件委託料の金額を上限として、Bに対してかかる損害を賠償する責任を負う。

5.権利・義務の存続期間の設定
説明:
収益分配権や、秘密保持義務などの存続期間を限定する修正です。
契約終了後の存続期間を設定するパターンと、契約有効期間の満了前に一定の権利や義務を終了させるパターンの2つがあります。
秘密保持義務については存続期間を限定することに合理性があるケースはあまり多くないはずですが、なぜか限定を求められるケースが少なくありません。そんなときは、「秘密保持義務の存続期間終了後は、Twitterや2chに書き込んでもOKということでしょうか?」と質問してみましょう。
また、以外に辛いのが事業譲渡契約等で定められる長期の競業避止義務です。数年経てば状況が全く変わっていることも少なくないので、強力な義務を長期間負う場合は、現場の責任者にしっかりと義務の内容を認識してもらい、実務上の問題が生じないことを確認する必要があります。

具体例:
Aは、Bに対し、第●条(有効期間)第1項に定められた本契約の当初期間中、毎月末日までに、前月分の本件収益の10%及びこれにかかる消費税相当額を支払うものとする。

6.義務レベルの低減
説明:
義務のレベルを、努力義務や「合理的な範囲で」といった限定つきの義務に落とす修正です。
請負的な仕事の完成義務を委任的な善管注意義務に変更するのもこの修正に該当します。
義務のレベルを落とすことで、債権者としては損害賠償や解除などを行いにくくなるため、B-1の退路の確保といった対抗策を検討する必要があります。
なお、「しなければならない」を「するものとする」に変更しても実務上の意味はほとんどないため、義務のレベルを落とすためにこのような修正を行うことは避けるべきです。

具体例:
Aは、Bから本件システムに関する問い合わせを受けた場合、2営業日以内に回答するよう努めるものとする。

7.多段階化
説明:
権利や義務の内容を一定の基準にしたがって段階分けする修正です。
単価が折り合わない場合に、販売数量に応じて単価を変動させる料金表を作成したり、事業運営に対する影響度に応じて対応の速度を変更するといったことが代表例です。
また、SLAによる履行義務の内容と債務不履行責任の精緻化も、この多段階化の一例といえます。
単純な権利の制限や義務の引き下げよりも手間がかかる反面、相手方の納得を得られやすいため、白か黒かだけではなく、その間のグレーの領域も有効活用することができるようになると、選択肢の幅を大きく広げることが可能になります。

具体例:
Aは、Bから本件システムに関する問い合わせを受けた場合、 2営業日以内 Aが判定する当該問い合わせの重要度に応じ、表1記載の期間内に回答するものとする。

8.双務規定内の義務の切り分け
説明:
双務規定の中に同じ内容で定められている両当事者の義務のレベルを、当事者別に設定する修正です。
双務規定は一見フェアな条件に見えがちですが、実務に照らすと実際には当事者の一方にしかほとんど適用される余地がなかったり、一方当事者に不利な内容になっていることは少なくありません。
そのようなケースでは、敢えて一つの双務規定内の義務の分割や場合分けによって当事者間の義務に差をつけることで、より実態に即した規定に変更することが可能になります。

具体例:
本契約において秘密情報とは、秘密に取り扱うべき旨が明示されたうえで相手方から開示された情報及びAにおいては、秘密表示の有無を問わずBから開示された●●に関する情報をいう。


B:バーター
自社に不利な条件を受け入れる代わりに、一定の譲歩を引き出す修正パターンです。
受け入れる条件と譲歩を要求する条件とが合理性のあるストーリーで関連していることから、単なる交換条件よりも相手方の譲歩を引き出しやすいのが特徴です。

1.退路の確保
説明:
通知解約権の確保や、契約期間の短スパン化によって契約から離脱しやすくしておくための修正です。
また、単に契約を解消しやすくするだけでなく、損害賠償義務の否定、仕掛品がある場合はその買い取り、競業避止義務の調整などにより、契約解消後の悪影響を最小限に留めるための修正もこれに該当します。
A-6で義務のレベルを落とした場合、相手方の義務履行のクオリティに不満があっても責任を追及しづらくなるため、カウンターとして退路の確保を要求することを検討すべきです。
逆に、自社の義務が重い契約も、契約関係から容易に離脱できるようにしておく必要性が高いといえます。
なお、通知解約条項は柔軟性がある一方で、しがらみや相手方への遠慮から実際に行使することがためらわれる傾向にあるため、売上目標やPV等をKPIをして指定し、一定の基準を達成できなければ当然に契約を終了させる、といった形をとることでさらに実効性は高くなります。

具体例:
Aは、Bに対して書面により通知することにより、損害賠償その他の義務を負うことなく、直ちに本契約を解約することができるものとする。

2.最低ラインの確保
説明:
販売ノルマの設定や、ミニマムギャランティの設定等により、最低限の利益等を確保するための修正です。
収益分配案件における収益獲得面を相手方に委ねる場合、具体的には独占ライセンスを設定したり、協業案件において販売面を一任したりする場合は、カウンターとして分配金額や販売数量に最低ラインを確保し、サボることに対して負のインセンティブを設定することを検討すべきです。

具体例:
Aは、Bに対し、毎月末日までに、前月分の本件収益の10%及びこれにかかる消費税相当額を支払うものとする。ただし、本件収益の金額が10,000,000円に満たなかった月においては、1,000,000円及びこれにかかる消費税相当額を支払金額とする。

3.巻き込み
説明:
ある義務を引き受ける代わりに、相手方にも義務の一部の履行を求める修正です。
義務自体は引き受けているので、相手方を巻き込むことに合理性があるケースでは、譲歩を引き出しやすいパターンです。

具体例:
Aは、Bから本件手順の変更を指示された場合、速やかに指示の内容にしたがって本件手順を変更するものとする。なお、この場合、Bは、自己の責任と費用負担により、本件顧客に対する本件手順の変更に関する個別説明及び本件顧客からの本件手順の変更にかかる問い合わせに対する対応を行う責任を負う。

4.費用負担
説明:
ある義務を引き受ける代わりに、相手方に義務履行に伴って発生する費用の負担を求める修正です。
B-3同様、義務自体は引き受けているので、情報を引き出しやすいパターンです。
また、立ち入り監査等の場面で費用負担を求めることで、相手方のカジュアルな権利行使を抑制する効果も得られます。

具体例:
Aは、Bから本件手順の変更を指示された場合、速やかに指示の内容にしたがって本件手順を変更するものとする。ただし、Bは、当該変更に伴って新たにAが負担することとなった費用をAに支払う義務を負うものとする。

5.許可に伴う責任
説明:
相手方にある権利を認める代わりに、それに伴う責任を課す修正です。
秘密情報の再開示を認めつつ、再開示先の管理責任を負わせたり、再委託を認めつつ、再委託先による義務違反について直接責任を負わせるのがこのパターンです。

具体例:
Aは、本件業務の全部または一部を第三者に再委託することができる。この場合、Aは、当該第三者に本契約に基づいてAが負う義務と同等の義務を課すとともに、当該第三者によるかかる義務違反について連帯して責任を負うものとする。

6.許可と報告
説明:
相手方にある権利を認める代わりに、権利の行使状況等について通知・報告を求める修正です。
許可そのものについて制限を課すものではないという意味でバーターパターンの中では最も受け入れられやすいパターンです。

具体例:
Aは、本件業務の全部または一部を第三者に再委託することができる。ただし、Aは、当該再委託を行う場合、事前に名称その他のBが指定する再委託先に関する情報をBに報告しなければならない。

7.同意の義務付け
説明:
A-1やA-2で相手方の同意を要件に加えることを受け入れた際に、同意するか否かを相手方の裁量に完全に委ねてしまうと、あたかも権利を人質に取られたかのような状態になってしまいます。
そこで、同意を要件に加えることを受け入れる代わりに、一定のケースでは同意することを義務付ける修正です。
同意しない場合には「合理的な理由」を求めるのが典型例です。
同意の義務付けにとどまらず、一定のケースで同意を擬制することができれば、更に強力になります。
具体的には、同意要求の後、一定期間内に一定の条件をみたせなかった場合に同意したものとみなす、といった規定が考えられます。

具体例:
Aは、 事前に Bの同意を得た場合に限り、本件業務のためにAが要した費用をBに請求することができる。ただし、Bが、Aから費用請求を受けた後15日以内に費用負担を拒否する旨及びその理由をAに通知しない場合、Bは、当該費用の負担について同意したものとみなすものとする。


C:合意タイミングのコントロール
一つの契約書内で全ての要決定事項について合意することが難しいことは珍しくありません。
そのようなケースで無理なく契約締結達するためのパターンです。

1.合意の先送り
説明:
契約条件の大部分について合意できたものの、一部については合意できない場合に、合意できない部分について「別途合意して定める」と決定を先送りしてしまい、契約の締結を進める修正です。
また、協議の結果として合意に至らなかったような場合以外にも、細かい論点であり、契約締結段階で決めておく必要まではないが、当事者のどちらかが一方的に決定されてしまうことは避けたい、といったケースにも適しています。
合意の先送りをする場合は、先送りした合意事項について結局合意に至らなかった場合に、実務上の支障がないかを必ず確認する必要があります。例えば、義務の履行期日についての合意を先送りする場合は、自社が義務履行当事者のときは合意に至らなくても実務上の支障は少ないと言った具合です。
合意に至らなかった場合に不都合が生じるようなケースでは、合意に至らなかった場合の対処方法を予め定めておくといった対応も重要になります。

具体例:
本件業務を通じて新たに得られた知的財産権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む。) は、全てAに帰属、または移転する の帰属については、別途両当事者間で合意して定めるものとする。

2.合意の前倒し
説明:
「別途合意して定める」としている事項を、契約書内で定める修正です。
合意内容が定まっていなくても、決定者を当事者のどちらかに設定することで合意を前倒しすることが可能です。
将来にも合意できない可能性が高い場合には、案件が進捗し、引き返せない状態になってからデッドロックに陥ってしまうことを避けるために、合意を前倒しすることを検討する必要があります。

具体例:
本件成果物の納入方法は、別途 両当事者間で合意して定める Aが指定する方法によるものとする。

3.合意の切り出し
説明:
契約条件の一部についてのみ先行して合意できている場合に、合意できた部分のみを切り出した契約書を別途作成する修正です。
基本合意書を先行して締結するといったものが典型例ですが、仮発注書や内示書といった契約締結前にやり取りする各種書面も、このパターンの一つといえます。
C-1と同様、切り出した残りの部分についてその後の協議を経ても合意できない可能性があることを念頭に、法的拘束力を調整する必要があります。

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このブログのテンプレートのせいもあるのかもしれませんが、かなり読みづらいですね・・・
ごめんなさい。
というわけで、はっしーさんにバトンをお渡しします。
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著者のお一人の橋詰さんからアプリ法務ハンドブックをご恵贈頂きました.
なお、本書の共著者には知人が含まれていますが、書籍の寄贈を除いて、レビューの依頼を受けた等の背景事情はありません。

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さて、IT界隈で法務系の仕事をしている実務家の間では、そのテーマと執筆陣のラインナップから発売前から高い関心が寄せられていた本書ですが、期待を裏切らない内容に仕上がっていました。
既に弁護士の方々からは複数レビューが上がってきていますので、僕は、アプリを出している会社に勤務する人の立場から本書をレビューしてみたいと思います。

1.何をすれば良いのかが明示されている
解説書を読んでも結局のところ実務でどのような対応が必要になるのかや、自分で取りまとめた対応方法が正しいのかについて今ひとつ自信が持てず、結局外部の弁護士さんにダブルチェックを依頼することになったという経験を持つ方は少なくないと思います。
本書は、法令の説明よりも具体的な実務対応に軸足をおいているようで、具体的なアクション(例えば、何を書けばいいのかや、どのように同意を取ればいいのかなど)が豊富な実例を伴って明示されているため、マニュアル的に利用できる内容になっています。
特に、アプリの利用規約、プライバシーポリシー、特商法表記、資金決済法表記については、逐条解説付きでサンプルが掲載されているのはすごいですね。

2.普通の本には書いてないことが書いてある
AppStoreやGooglePlayでアプリを配信する際に適用される規約は、その影響範囲や効果の苛烈さから、もはや適用法令以上の重要性を持つに至っている一方で、頻繁に改訂されることや、そもそも一企業が定めた規約ということもあって、書籍で解説されたことは今までなかったのではないかと思います。
ところが本書では、何を思ったか一つの章の大半をこの規約の解説に充てているのです。しかも、具体的な条項付きで。
間違いなくニーズはあるとは思いますが、思い切りましたね・・・
また、これも実務上のニーズが大きいにも関わらず書籍の解説がほとんどないOSSのライセンスタームについて、正面から取り上げているのも、特にエンジニアにとっては注目かもしれません。
別の章に飛ぶのでちょっと見つけづらいですが、具体的なライセンス文言の表記方法にも触れられているのもこの本ならではかもしれません。

3.トピックが超幅広い
目次をみれば一目瞭然なのですが、開発からマーケティングまでカバーしているので、とにかくもう、取り上げられているトピックが幅広いんですよね。
冒頭のチェックリストや目次を活用すれば、普段法務的な業務をしていない方でも普通に対応していけるのではないかと感じました。
逆に言えば、この本に書いてある情報は既に体系的に整理されて読めばわかる状態になっているわけで、毎月書籍代以上の給料を頂いている法務としては、それを超える価値を提供できなければ存在意義が問われかねないという恐ろしい立場に立たされたともいえます。
目次や索引も充実しており、必要なトピックをつまむような辞書的な使い方にも適していますので、アプリを出している会社にとっては、一社に一冊的な定番書になるのではないかと思います。


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昨日のエントリーにいくつかコメントを頂いたのを受け、ちょっとだけ補足

1.ステマの悪質性は、優良誤認性にあるのではなく、読者を騙して記事を読ませている点にある
ステマの悪質性は、商品・サービスの内容が優良であると誤認させるところにあるのではなく、読者を騙して記事を読ませるところにあるはずで、そうであれば、ステマを規制するのであれば、本来は優良誤認表示としてではなく、読者を騙して記事を読ませる表示として規制するのが本筋だと思います。
ただ、現状、このような表示に対する規制はないので、あくまで立法論なのかなぁ、と。
数年前に改定された消費者庁のガイドライン「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の 問題点及び留意事項で、「口コミをつかって優良誤認表示したら優良誤認だよ」という、誰もが「そんなの知ってる」と口を揃えていうような言及しかできなかったのも、そのためだと思っています。

2.不快≠違法
多くの人にとってステマは不快なものですが、不快だから違法になるわけではありません。
違法とは、法令に違反しているということであり、当該行為を規制する法令の存在が前提になります。

3.メディアは優良誤認表示の主体ではない
記事であるとの読者の誤認を惹起していることが優良誤認では?というご指摘もありましたが、無料の記事コンテンツの提供は「取引」には該当しないはずで、「自己の供給する商品又は役務の取引について表示」には該当しません。
問題になるのは、広告主の商品・サービスに関する取引についての表示のはずです。

4.ステマは優良誤認だといいたいわけではない
前回のエントリーでいいたかったのは、「広告ではないという外形をとることで、許容される誇張の範囲は限定され、その結果、優良誤認に該当するケースもあるんじゃないかな」ということであって、ステマは全て優良誤認に該当するとは思っていません。

ではでは。
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ステルスマーケティングの一種として、広告表示(PR表記など)を伴わない記事広告(記事の体裁をとった広告)が問題視されることが多くなってきました。
個人的にはPR表記をしていない記事広告は嫌いですし、また、ユーザーを欺いて広告にアクセスを集めているという意味でお行儀が悪いのは間違いないとは思うのですが、果たして「違法なのか」というと、すぐに答えを出せない方は少なくないのではないでしょうか。

というわけで、今回はPR表記を伴わない記事広告の適法性について、ちょっと考えてみたいと思います。

1.前提
まず、僕の知る限り、PR表記を伴わない記事広告(無表記記事広告)が違法になるとすると、その原因は景表法の優良誤認(§4機複院法砲覆里如∈2鵑鰐吃週記事広告が優良誤認に該当するかに絞って検討します。(他にあれば、教えてください)
また、記事広告といってもその内容は様々ですが、ここではJIAAがスポンサードコンテンツと定義するものをさすことにします。(http://www.jiaa.org/download/150318_nativead_words.pdf)
さらに、内容自体が優良誤認表示に該当する記事広告も少なくありませんが、今回はPR表記がついていれば問題にならない内容のものであることを前提にします。

2.優良誤認とは
優良誤認に該当するかを検討するにあたっては、そもそも優良誤認とは何かを正確に把握する必要があります。
というわけで、優良誤認表示を禁止している景表法第4条1項1号を見てみましょう。
第四条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一  商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
〜以下略〜
続いて、PR表記に関して問題になる要件を検討していきます。

・「自己の供給する商品又は役務の取引について表示」
優良誤認が禁止される主体は、「自己の供給する商品又は役務の取引」について表示をしている事業者です。
この点、記事広告においては、表示をしているのはメディア側であって、メディアは第三者である広告主の供給する商品又は役務の取引に関する表示をしているわけで、「自己の供給する商品又は役務の取引」について表示をしているわけではありません。
他方、広告主も、自ら「表示」をしていないので、一見、広告主とメディアのいずれも、「自己の供給する商品又は役務の取引について表示」していないようにも思えます。
しかし、不当表示規制における表示の主体は、「問題となる表示の内容の決定に関与した事業者」であり、その中には、自分で表示内容を決定できる立場にあるにも関わらず、「他の事業者にその決定を委ねた事業者も含まれる」とされています。(景品表示法〔第4版〕p61・東京高裁平成19年(行ケ)第5号)
そして、記事広告における広告主は、まさに「他の事業者にその決定を委ねた事業者」に該当するので、広告主は「自己の供給する商品又は役務の取引について表示」の要件を満たすことになります。
さらに、メディアは、表示主体である広告主とともに表示に関与した者として責任を問われる可能性があることになります(行政法がよくわかってないのでここのところの理屈は正確に分かってないです。ごめんなさい。)
↑と当初は書いてましたが、(景品表示法〔第4版〕の43ページには、「メディア媒体(新聞社、出版社、放送局等)は、当該商品または役務の広告の制作等に関与していても、当該商品または役務を自ら供給していない限り、景品表示法の規制の対象とはならない」って書いてありました。ごめんなさい。

・「実際のものよりも著しく優良であると示す」
広告主とメディアのいずれも優良誤認表示の主体になるとしても、単にPR表記を欠いたことが「実際のものよりも著しく優良であると示す」ことになるのかについては、さらに検討が必要です。
なぜなら、前提記載の通り、今回検討対象にしている記事広告は、その内容自体は優良誤認性がないものであるからです。逆に言えば、内容自体が優良誤認性がある場合は、PR表記があったとしても、普通に優良誤認表示として景表法違反になるはずです。
さて、「実際のものよりも著しく優良」か否かは、「一般消費者の自主的かつ合理的な選択を確保するという景表法の目的から合理的に解釈すると、一般消費者の誤認を招くか否かで判断することになる」とされています。(景品表示法〔第4版〕p70)
この点、PR表記それ自体は、「実際のものよりも著しく優良であると示す」表示ではないので、一見PR表記の有無と優良誤認とは無関係であるようにも思えます。
しかし、純粋な広告・宣伝の表示についてはある程度の誇張が行われることが一般消費者にも理解されており、一般消費者の誤認を招かないことから、ある程度の誇張は優良誤認に該当しないとされています。
そして、PR表記のない記事広告については、読者はあくまで記事として読む以上、前述の「許容される誇張」の幅は非常に小さくなり、その結果として、PR表記をしていれば問題なかった記事広告が、PR表記を欠いたことを理由に優良誤認に該当するという可能性はあるのではないかと思います。
具体的には、あきらかな広告の中の「食べたことのないほどおいしい林檎です」という表記と、記事コンテンツの中の「食べたことのないほどおいしい林檎です」という表記は、一般消費者にあたえる印象が大きく異なる、ということです。

3.結論
記事広告がPR表記を欠く場合、通常の広告では許容される範囲の誇張表現が記事コンテンツの外形をとることによって優良誤認性を有することになり、不当表示になる可能性がある・・・かもしれない


出がけにがーっと書いて、見直しもせずにアップロードしてしまうので、おかしな記載があるかもしれませんが、何か見つけたら教えていただけると嬉しいです。
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と呟いたところ、栗原先生から即レスで




とのコメントを頂き、そっかーとがっかりしたのですが、続いて




というコメントを頂き、速やかに解決に至りました。

というわけで、具体的な方法です。

STEP1
http://twilog.org/trademark_bot
にアクセス

STEP2
右カラム上部の検索窓から、検索したい商標を検索(称呼ではダメ)

STEP3
ヒットしたら、出願番号をコピー

STEP4
https://www1.j-platpat.inpit.go.jp/RS1/cgi-bin/RS1P001.cgi
にアクセスし、商標タブを選択

STEP5
コピーした出願番号で検索

で解決です。
やったねたえちゃん!

なお、商標速報botのTwiLogは、2011年12月から蓄積されているので、それ以前の出願分はこの方法では検索できません。
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