2011年02月

最近「天津飯は、中国の天津とは無関係」という話(みんな、知ってた?)を聞いて、父との思い出が蘇ってきた。
父の勤め先の近くにあった中華料理屋の、父が好きで、兄が嫌ってた天津飯。


うちは両親ともフルタイムの共働きだったので、たまに兄と二人だけで晩ご飯を食べることになるときがあった。
今となっては何を食べていたのかほとんど覚えてないんだけど、天津飯については何故かはっきりと記憶に残っている。

まだ父が会社を辞めていなかった頃、母が仕事で遅くなるとき、父はたまに会社の近くの中華料理屋でご飯を買って、うちまで持ってきてくれた。出前じゃなく、自分で。
父のおすすめは天津飯。「ここの天津飯はうまいんだ」と言って、往復40分の道のりを天津飯と共にやってきて、空になった器と共に帰って行った。

小学生の僕には天津飯のおいしさが今一つわからなかったけど、おいしい、と言って平らげていた。
一方、兄は、俺はこれ嫌いだ、どろどろしてるし。などと言ってはばからなかった。
僕は父の悲しい顔を見たくなくて、兄にもうまいと言って天津飯を食べてほしかった。それがまったくの嘘でもいいから。

兄がいつも天津飯を拒絶するので、いつしか父が天津飯を晩ご飯に選択することはなくなった。でも僕は、敢えてそれほど好きでもない天津飯をリクエストすることがあった。そんなとき、父はどことなくうれしそうだったし、喜ぶ父を見るのは僕にとっても喜びだった。


僕はその頃、兄が父を悲しませる言動を取ることに不満を抱いていたけど、今では何となく兄の気持ちが分かる。
あの頃、兄は、父も母もいない家で、3歳下の弟の庇護者だったんだ。天津飯を持ってきてくれたくらいで自分の役割を捨てて、ほいほい子供に戻るような器用な真似はできなかったんだろう。
僕の兄は、そういう人間、つまり、自分がそうすべきと決めたことは、意地でも貫き通す人だったから。(父とそっくりだ)

そういえば、兄は昔から怖い存在だったけど、考えてみると僕はほとんど兄とケンカしたことがない。叱られることや説教されることは数え切れないくらいあったけど、不思議と喧嘩にはならなかった。
それはきっと、兄は、家を空けがちな両親に代わる、僕のもう一人の父だったからなんだろう。
喧嘩って、対等な関係の下でじゃないと成立しないからね。

父が会社を辞め、自宅で仕事をするようになってからは、あの中華料理屋の天津飯が晩ご飯になることはなくなった。
意図的に避けていたわけじゃないけど、それ以来僕は、天津飯を口にしたことはない。
メニューに載っていても、なぜか頼む気になれない。
きっと兄も、あれ以来、天津飯は食べてないんじゃないかって気がする。
今ならきっと、おいしいって言えると思うんだけどな。
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いよいよ確定申告のシーズンが到来します。
世の中には事業主向けの確定申告本は数多く出版されていますが、副業プログラマのような、給与取得をもらいつつ、別口で収入を得ている人向けの確定申告に関する情報はそれほど多く存在していないようです。
というわけで、みしま税理士法人の木村先生(@kimutax)に、確定申告の基礎をお伺いしてきました。

とてもやさしく丁寧に教えて頂けましたので、もし税理士さんに相談してみよう、と思い立った方は、木村先生にご相談してみることをお勧めします。

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1.副業アプリプログラマのアプリ収益にかかる税金の種類

税務上の取り扱いは、アプリの収益が「雑所得」となるか、「事業所得」となるかで異なるが、サラリーマンが趣味でアプリを開発している場合は、大抵は雑所得になる。
事業所得とは、要は「事業を通じて得た所得」であり、趣味でアプリを作る程度では「事業」には該当しないのが通常
事業所得の該非は、
  • 継続性と反復性
  • 生計の柱となっているか 
を総合的に判断して決定する。
→自分で決められるわけじゃない


アプリの収益が雑所得である場合、課税される税金は「所得税」と「住民税」
  • 住民税は一律10%
      
  • 所得税は累進課税で5〜40%
    給与所得も、雑所得も、分離課税分(退職所得・株式の譲渡所得・土地の譲渡所得などなど)以外は全て足して所得金額を出す(総合課税)
なぜ分離課税があるか
所得の性質から見て累進課税になじまないもの(退職所得など)や、政策的な意図(株式の譲渡所得など)から累進課税から外している

税率表はhttp://nzeiri.sppd.ne.jp/syotok/22/syotoku_zeiritu.htmに判りやすいものが載っている。

2.経費の取り扱い

雑所得の所得金額は、「収入から所得を得るために要した費用(必要経費)を差し引いた額」
収入の金額は動かせないので、「所得を得るために要した費用」をもれなく差し引くことが節税のポイント
所得税法に該非の基準が細かくは定められているわけではないので、個別に考えていく。
注意点(1)見逃しがちな経費
  • 見逃しがちだが、自宅で開発している場合、電気代やプロバイダ費用、家賃などは、すべて「所得を得るために要した費用」になりうる
    もっとも、通常はPC代や電気代、プロバイダ費用などは開発以外の私用と共用なので、全額費用にするのは不適切
    このような場合は、私用と業務用とで按分する
    • 私用と業務用とで2:8でPCを利用している場合、PCが8万円であれば、1万6千円を雑所得から控除できる
    • ポジティブに言えば、あらゆる費用が事業区分割合で経費化できる余地があるということ!
      • 車の維持費や水道光熱費などの見逃しがちな費用も、経費とする理由付けが合理的で、かつ按分が緻密であれば、まず、税務調査で文句を言われることはない

    • 按分割合を決めにくい場合は、時間や面積に着目すると良い
      • 開発スペースの家賃であれば、開発に携わる時間が1週間に1日ならそれで7分の1、開発スペースが借りている家の面積の10%ならさらに10分の1といった具合

注意点(2)減価償却(雑所得者前提なので、消費税は免税、特別な減価償却方法は採用しないことを前提)
  • 10万円以上のものは、一括で全額を所得から差し引くことはできない(減価償却)

    • 耐用年数表を見る(http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tebiki2010/pdf/33.pdf
      • PCは(4年。但し、サーバは5年)など
      • 届出を出さない限り、金額÷耐用年数の金額しか所得から差し引けない(定額法)
      • 1月以外に取得したものについて減価償却する場合、月割りが必要
      • 12月に購入したサーバーでないPCは、初年は価格÷4÷12しか控除できない(5年目に価格÷4÷12×11を控除する)

注意点(3)収入・経費の計上タイミング
  • 収入の計上は、相手が利用できるようになった日
    • iPhoneアプリで言えば、ダウンロード提供日(Appleからの入金日じゃない)
  • 経費の計上日付は、使い始めた日(支払日でも納入日でもない)
    • 小規模な個人の雑所得であれば、購入日(領収書の日付)=使用日という扱いとなってしまっていることが多いのが実情

注意点(4)為替レートの考え方
  • アプリの売り上げは外貨建てだが、所得税の申告は円建てで行わなければならない。このときの考え方は、
    • 円口座に振り込まれた場合や、期中に円に変えた場合は、口座に入っている円建ての金額を売り上げと考える
      • 厳密に言えば、提供日のレートで売り上げが計上されて、円に替えた日のレートとの差額が為替差損/差益になることになるが、為替差益/差損も雑所得なので、通算すれば結局同じこと
    • 外貨口座に振り込まれ、そのまま外貨で持ち続けた場合は、期末(12/31)時点のレートで円換算して所得計算するのが筋。


3. 領収書について

経費を計上するためには領収書がないとダメとは所得税法には書いていない(消費税法はうるさい)
つまり、調査時に事実を証明できるかどうかの問題なので、領収書がないと経費として認められないというわけではない。(たとえば、領収書以外の方法で経費を使ったことが証明できる場合など)
むしろ、レシートの方が品名がきちんと書かれていることから好ましいと考えられる場合すらある。
普通電車の切符や自動販売機のジュース代など、領収書が出ないものも経費になるので、ちゃんと記録を残しておこう!

ちなみに、領収書の名義は上様じゃだめ、というわけではない(所得税法上は)が、上様名義だと、事業目的の取得じゃないと思ってもらえない可能性が高くなる
また、品代ではなく、具体的な品名を書いてもらわないと、経費として認められない可能性が高くなる。
とはいえ、領収書が対外的に必要になるのは税務調査が入ったときで、細々とした雑所得に税務調査が入るのは実務上は結構まれ。(だからといって、脱税したらだめだよ!)


4.納税の方法
  • 所得税
    原稿料などの源泉徴収されたもの以外は、確定申告後、
    1. 納付書をもって郵便局か銀行に行く
    2. 自動引き落としの手続きをとる
    のいずれかの方法で支払いを行う。(給与から天引きされるわけではない)
    自動引き落としは、一度手続きをしておくと、税務署が変わるまでずっと有効なので便利(納付した年としてない年が交互に来てもOK)
    しかも、だいたい引き落としは一か月後(今年でいえば4月22日)
    自動引き落としの手続きを行うと、納付書の代わりに通知書が来るようになる

  • 住民税
    何もしないと給与天引きになる。
    確定申告の際に、住民税の徴収方法(申告書の住民税欄)で「自分で納付」を選ぶと、給与からの天引きではなくなる。
    この場合、
    1. 納付書(所得税と違い、MAX4回まで分割払いできる)
    2. 自動引き落とし
    のいずれかの方法で支払いを行う。(住民税も翌年以降も有効)
    自動引き落としの手続きを行うと、納付書の代わりに通知書が来るようになる
    なお、住民税は所得税よりちょっと遅いことに注意



5.事業所得について 

税務署に開業届けを出すと、事業所得として申告できるようになる。
開業届けを出すタイミングでは何も言われないのですが、継続性、反復性及び生計の柱となっているかを総合的に判断し、事業性が認められないと、申告時にうるさいことを言われる可能性がある(その後、税務調査対象となることも)

    事業所得の有利な点
  • 損益通算ができる
    →事業を通じて損失が出た場合に、給与所得で支払った所得税を取り戻す余地が有る
  • 青色申告をすることで
    • 3年間損失を繰り越せる
    • 65万円の控除を受けられる
    • 青色専従者に支払った給与を経費として計上できる
    事業所得の不利な点
  • 会計処理が必要
    →内訳を作る必要がある
     →結構大変だが、消費税の申告処理が必要になるまでは、自分でやってる人が多い

 

6.内緒にする方法

会社については、税金の面から言えば、住民税だけケアして給与天引きにしなければ(普通徴収を選択すれば)会社にはばれない。(例えばれなくても競業禁止規定や副業禁止規定に引っかかるような活動はしちゃだめだよ!)

家族については、納付書や通知書が見つからないようにこまめに郵便ポストをチェックするくらい


7.確定申告について

  • 確定申告が必要・不要な場合
    確定申告をするなら、例え雑所得が1円しかなくても申告しなければならない。少なくとも建前上は。(医療費控除をする際などは注意が必要)

  • 確定申告の際に必要な資料
    • 源泉徴収票
    • 収入がわかるもの・証憑
    • 経費がわかるもの・証憑
    • 銀行名や印鑑
      自動引き落としの場合は銀行届出印を持っていくと良い

  • 税務署での申告
    • その場で教えてもらって作るのもあり
    • 集計はしてくれないので、集計はして行った方がスムーズに処理できる。
    • ちゃんと準備をしていけば30分くらいでできてしまう。
    • なお、領収書は持参する必要は無い(申告書の添付書類ではないので)

  • e-taxでの申告
    • 住民基本台帳カード・電子証明書が必要
    • 事前に届出も必要(ただし、ネットで届出できるし、届出後ソク利用できる)
      専用ソフトを使わなくても、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」で作成した申告書を直接電子申告することができる
    • 自由に何度でも書き換えられるので紙で書くより気が楽
    • しかも、今の時期は土日も含めて24時間受け付けている。
    • なお、領収書は別途送る必要は無い。
    • 添付書類も送付の必要なし(ただし自分で3年保存)。
    • 還付がある場合、紙の申告よりも還付金の入金が早い


    8.税理士さんにお願いするとすると・・・  

    価格や丁寧さ、親切さは税理士による
    また、価格は自分でどこまでやって、税理士さんにどこまで依頼するかによって大きく変わる。
    つまり、安く上げるコツは、集計などの自分でやれることは自分でやること。
    ただし、税理士によっては事前準備をしっかりしても、対価は変わらないこともあるので、まずは見積を依頼してみるのが大切


    9.申告しないとどうなるのか
    • 雑所得は実際問題としては、なかなかばれにくい
      ただし、原稿料などの源泉徴収されているものはほぼ全て税務署は捕捉している
      もっとも小額だと捕捉されていてもお目こぼしされることが多い

    • ばれた場合は、通常はまず、お尋ねが来る
      お尋ねに応じて遅れて自主的に申告すると、延滞税くらいで済む(自主的かどうかでペナルティの度合いも違う)。場合によってはお咎めなしのときも(延滞税等が少額の場合)。
      お尋ねをほっとくとでかいペナルティがくるかも!

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      みなさんのお役に立てば何よりです。
      ではでは〜
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    (最低限)月1ブックレビューのお時間です。
    今回取り上げるのは、親戚の子どもが法学部に入ったらプレゼントしてあげたい書籍ランキング第1位を獲得(片岡調べ)した名入門書、スタートライン債権法です。
    早速参りましょう!

    -----------
      いいところ

      • 基礎の基礎から説明されているので、民法の知識0からでも独習可能
      • 文章構造がシンプルかつ明確で、とても読み易い
      • 教科書としては学説の対立にあまり踏み込んでいない
      • 実況中継系参考書のような展開(通年講義を念頭に置いた季節感のある雑談や試験のお知らせなど)がちょくちょく登場して楽しく読める
      • 読者に対する愛情がすごい。愛されてる。

      残念なところ

      • 判例の引用は限定的(結論だけ)
      • 教科書なので、「明日から実務で役に立つ」といった内容はあまり含まれていない。

    よく、「試験勉強や学校で勉強したことなんて、仕事する上ではほとんど役に立たないんだよ」という言説を耳にすることがありますが、こと企業法務に関して言えば、民法前三編の「お勉強で得た知識」が無いと、かなりアイタタタ・・・な状況に陥ってしまいます。
    そう、企業法務と民法の知識は、切り離すことのできないほどに密接に関わりをもっているのです。
    それにも関わらず、一旦現場に出てしまうと、特殊な場面に関する知識のインプットに励むことはあっても、初歩的な知識のメンテナンスは怠りがちで、その結果、基礎的な知識であるにも関わらずあやふやになってしまっていたり、抜け落ちてしまっていることがあります。

    こんな情けない状態に陥るのを防ぐためには、「簡単すぎないかな」なんて思わずに、刀を研ぐようなイメージで入門書を通読することは有用だと思います。
    そして、このスタートライン債権法は、そのような用途に最適だと感じました。
    何しろこの本、すらすら読めるんです。
    「破産から民法をみえる」は、僕の破産法に関する知識が薄いこともあって「もしかしてもう知識をインプットできなくなっちゃったんだろうか」と思うほどに読了するのが苦しかったんだけど、スタートライン債権法は、楽しささえ感じながら読み進めることができました。
    これは、民法の、しかも入門書ということも当然大きいんだろうけど、池田先生の「理解させてやろうという情熱」や「記述・構成の巧みさ」の寄与がなければここまで判りやすい内容にはならなかったんじゃないかと思います。
    スナップショット
  • 安心してほしい。わからないのが普通である。(p31危険負担の説明にて)」
  • 著者としては、まだ教えていない概念は極力使わず、現在あるはずの知識だけで理解できるように注意して説明している(p56)
  • 本書の読み方も、惰性で「愛読」しないで、著者のあら捜しをするような批判的な目で読んでいっていただきたい。(p102)


  • ところで、この本を読み終わるまで気づかなかったのですが、第二弾のスタートライン民法総論も出ているそうなので、こちらも後で読んでみたいと思います。

    ではでは!

    スタートライン債権法
    池田 真朗
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