1月に「今年は毎月1冊法律系の本のレビューを書く」と宣言してから2ヵ月後、早速3月・4月とその宣言を守れない事態が発生したわけですが、こういう目標ってのはうまくいかなくなってからが本番ということで、何事も無かったかのように再開します。

で、再開後の一冊目は「分かりやすい法律・条例の書き方」です。

契約書のドラフティングはちっちゃな立法作業という考え方に則って、時間のあるこの時期に基本的な知識をおさらいしようと思い、法令の書き方本の中でも読みやすそうな本書を手にとってみました。

もちろん、テーマが法令の書き方なので、実質的な相違が生じるとは思えない形式的な部分にもふんだんな言及があるので全部が全部契約書のドラフティングに転用できるわけではありませんが、目論見どおり、これは知っておかないとまずいよね、という知識もふんだんに盛り込まれていました。

以下、その中でも「これは知っておくべき」というものをピックアップしてみます。
この春から契約法務を担当することになりました、といった方々のお役に立てばうれしいです。
※法学部出身で、法学入門的な授業をまじめに受けていた方にとっては当たり前のことばかりですが、実務を通じて受ける感想としては、できてない人は結構たくさんいます。
  • 同一項内の文は「前段・後段」と、段を単位にして数える。ただし、後段が「ただし」で始まる場合は、「本文・ただし書き」と呼ぶ。(この項のように。)
  • 特別法は一般法に、後法は前法に優先する。が、後法と前法が矛盾することは原則としてあってはならない。(ちゃんと前法を引用して関係を処理しておくべき)
  • 条文の基本構造は「主部」「条件」「述部」
  • andは「及び」、orは「又は」。多重構造をとる場合は、andについては並びにを大括弧とし、また及びを小括弧とし、orについては又はを大括弧とし、もしくはを小括弧とする。
  • 条件は「場合→とき→ときに限り」の順序で大前提から小前提に落ちていく。
  • 「前項の場合」は前項全体を指し、「前項に規定する場合」は前項に含まれる条件節を指す。
  • 「A、B、Cその他X」と言う場合、ABCとその他Xは特段の関係は無いが、「A、B、Cその他のX」と言う場合、ABCはXの中に含まれる。(日本語の問題だけれども)
  • 「協議」には、合意にいたることまでは含まれていない。協議の結果、合意にいたらなかった場合も協議義務は果たされたことになる。

類書を読んだことのない方は、一読するとひとつくらいは「へぇ」という発見があるのではないかと思います。実務上、役に立つかどうかは別として。