2011年11月

シチュエーション別提携契約の実務を読んだのでレビュー。

「提携契約」というもんのすごく広い範囲を対象にしていることから、散漫な内容になってるんじゃないかと疑っていたのですが、まったくもってそんなことはありませんでした。

この本は、
・(1)代理店契約、(2)ライセンス契約、(3)合弁契約、(4)株式買取契約の4つについて、
・当事者間の意見が対立しがちな論点にフォーカスして、
・実際の条項例を出しつつ
・双方の立場の思惑や考え方を垣間見ながら
・落しどころに落ち着くまでを見届ける
という本であって、散漫どころかグッとメリハリの利いた良著だったのです。

契約条項について解説している本は少なくないですが、各当事者の主張や思惑、そして落しどころまで追っている本は、僕は他には知りません。
本を読んでいるのに、OJTに近い感覚で知識を習得できるという意味で、多くの契約書をドラフティング・チェックしてきたTMIの経験・知見の積み重ねが行間からにじみ出ているように感じます。

少なくとも国内契約でそんな条件設定しないだろ、と突っ込みたくなる、過度にテクニカルな条項も飛び出てきたり、契約スキームの検討がもう濃かったら良かったな、といった要望事項もあるにはありますが、読後の満足度はとても高かったです。文章もすごく読みやすかったですしね。

ベンチャー企業の法務・財務戦略のようにこってりと踏み込んだ何かがあるわけではないので、日ごろから実務でバリバリ上記の4契約を見ている人(後ろの2つについてはそんなに多くないと思うけど)には物足りないかもしれませんが、そうでない方にはかなりお勧めできる一冊です。

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月曜日に最後の夏休みを取ってステキな金縛りを見てきたのですが、これがまぁおもしろかったです。
あと、想像以上に「法廷もの」になっていて驚きました。

笑いという意味ではマジックアワーには及ばないように感じたけれど、その分、いやらしくない絶妙な味付けの泣かせ要素が入っていて、「映画を見た!」という充実感・幸福感を存分に味わうことができました。

といった具合に、映画自体もすごくおもしろいのでそれだけでも充分にお勧めなのですが、中井貴一扮する検察官が弁護士役の深津絵里に対し、
「我々は敵ではない。真実を追究するという意味では、むしろ味方同士なのだ。我々の敵は、真実を隠そうとする者たちだ」
と言ってみたり、証拠である文献が間違っておりむしろその文献の方を修正すべきと主張する証人に、これまた中井貴一が
「君は証拠を書き換えようと言うのか!」
と怒鳴りつけてみたりと、偶然なのか意識的なのか判りませんが、つい先日のアレを想い起こさずにはいられないやり取りも見逃せません。

いやぁ、ほんとおもしろかった。あと、深田恭子はやっぱり超絶美人だと再確認した。
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11月分のブックレビューネタとしては、「労働法のキモが2時間でわかる本」を用意していたのですが、tacさんが激賞していらっしゃるとあって「クラウドと法」読まずにはいられませんでした。

というわけで、以下レビューです。
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まず最初に言っておきたいのは、この本は間違いなく良書であるということです。
読みやすい筆致と、細かい個所はバッサリと「ここは細かい話なので」と落としていることが奏功し、かなり広範な領域について高い密度で言及しているにもかかわらず、混乱することなく読み進めることができました。
おそらく本書の狙いもそうだと思うのですが、法務担当者以上に、実際にクラウド関連のビジネスを展開している事業者の現場責任者や、クラウドサービスの導入を検討している経営者・情シス部門の方などが読まれたら漠然とした不安が解消(または確固たる懸念に進化)するという意味で有用なのではないだろうかと感じます。

ただ1点残念だったというか、期待していた分肩すかしだったのが、「クラウドと法」というタイトルであるにもかかわらず、(昔からあるホスティングサービスとの比較での)クラウド特有の法的な問題は結局ほとんど出てこなかったように感じたこと。
クラウドは、海外のデータセンターに情報を預けることとイコールではないし、経営上重要な意味を持つとも限らないのだから、海外のデータセンターに情報を預けることで発生するリスクを「クラウドのリスク」ということには強烈な違和感を覚えるし、「クラウドの導入は取締役会決議事項か」という問題提起もピントがずれているように感じます。
本書が「クラウドという言葉でいろいろなサービスがひとくくりにされて何がなんだかわけわからん」という現状をきれいに交通整理してくれるポテンシャル持っているからこそ、「クラウドの本質から直接発生する問題」と、「現状のクラウドサービスのよくあるパターンから発生する問題」とをきちんと分けてくれたらもっと良くなったんじゃないかなぁ、と思わずにはいられませんでした。

いずれにせよ、読んで損することはない1冊だと僕も思います。

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