法務系Advent Calendarの7日目のエントリーです。
@overbody_bizlaw先生、立ち上げ&とりまとめ、ありがとうございます!
もう5年以上前になるのですが、契約書の管理(締結済み契約書編)というエントリーを書いたことがあり、中途半端な内容の割に、今でも検索エンジン経由で一定のアクセスがあるので、もう少し整理したいと思っていました。
というわけで、この機会に締結済み契約書の管理について、マニュアルっぽく仕立て直すことにしました。
なお、想定しているターゲットは契約締結件数が100件/月未満の規模の企業です。
1.管理簿を作る
2.原本を保管する
3.契約書をPDF化する
4.契約書をピックアップする
5.決裁フローとの紐付け
6.リーガルチェックとの紐付け
「これは違う」とか「もっといい方法がある」等ございましたら、ぜひご指摘ください。
ではでは。
@overbody_bizlaw先生、立ち上げ&とりまとめ、ありがとうございます!
もう5年以上前になるのですが、契約書の管理(締結済み契約書編)というエントリーを書いたことがあり、中途半端な内容の割に、今でも検索エンジン経由で一定のアクセスがあるので、もう少し整理したいと思っていました。
というわけで、この機会に締結済み契約書の管理について、マニュアルっぽく仕立て直すことにしました。
なお、想定しているターゲットは契約締結件数が100件/月未満の規模の企業です。
1.管理簿を作る
- 管理簿の立ち上げ段階では、項目を「契約書を特定するためのキーとして利用するもの」に限りましょう。
項目を増やしても、正確な情報が記載されている保証がなければ結局原本をあたることになるので、実務的にはあまり役に立たないのが通常です。
加えて、契約書を読める人でなければ登録できないような登録簿は、運用コストが高すぎます。
通常は、管理番号、相手方名、締結日、契約書のタイトル、申請部署、備考・メモ欄程度で充分です。
- 項目が少ない段階では、エクセルやGoogleスプレッドシートなどの表計算(スプレッドシート)で作成したシンプルな管理簿で充分事足ります。(後述するリーガルチェックとの紐付けをする場合はその情報も)
また、データベースアプリケーションは、まず間違いなくcsvをインポートできるので、将来データベースアプリケーションへ移行することになった場合もスムーズな移行が可能です。
- データベースアプリケーションで管理簿を作る場合、「部内のできる人」の属人的なスキルに頼ると、その人が辞めた後、メンテナンスができなくなってしまうという悲劇に陥ることになりかねないので、絶対に避けるべきです。必ず情シスなどを巻き込み、組織的に対応しましょう。
- GoogleスプレッドシートやZOHO Creatorのようなクラウドサービスを利用しない場合は、管理簿のバックアップをとり忘れないようにしましょう。データは、消える時はサクッと消えるものです。
- 特に事情がない限り、管理簿への登録は、原本を保管に回すタイミングで行いましょう。
これにより、「管理簿に記録されている=原本が一旦は保管に回った」という保証がなされるため、原本紛失時の原因探知に役立ちます。
2.原本を保管する
- 原本は、管理簿の管理番号順に並べて保管しましょう。
50音順は、「途中に差し込む」という超煩雑な作業が発生することや、外国企業の場所が一意に定まらない(特に中国企業)という問題や、紛失したことが判明しづらい(別の場所に保管されているかも・・・)という問題があるため、絶対に避けるべきです。
50音順ソートのメリットは特定の企業との契約をまとめてピックアップできることくらいですが、そのような場面はあまり発生しないことに加え、通常はフィルタをかけて一括で取り出すことができるPDFで事足りてしまいます。
- また、保管用のツールは、バインダーではなく、ボックスファイルとクリアフォルダを使いましょう。
バインダーはピックアップに手間がかかりすぎる上に、取り回しにも不便です。
- 参照後に所定の保管場所へスムーズに戻せるよう、契約書の原本の上部に管理簿の管理番号を記入しておきましょう。
- クリアフォルダは耳付きのものがあるので、耳に管理番号を書いておくことでピックアップのスピードアップに一定の効果を得られます。
3.契約書をPDF化する
- PDF化する場合、ファイル名だけである程度の検索を行えるよう、「管理番号」「相手方名」「契約書名」「締結日」はファイル名に含めましょう。(後述するリーガルチェックとの紐付けをする場合はその情報も)
ファイル名が長くなることは気にせず、略称は絶対に使わないようにしましょう。検索性が低下してしまいます。
PDFファイルのファイル名を手で転記するのは面倒であり、また誤記の原因になるので、できるだけ管理簿でファイル名を自動生成し、それをコピペするようにしましょう。
- PDF化作業の最大の壁は、「溜まっている締結済みの契約書をどうやってPDF化するか」ですが、これは期限を決めて一気にやってしまいましょう。
「締結済み契約書が全件PDF化されている」という状態は、業務の効率化に大きく寄与します。
人的リソースが足りない場合は、業務サポート系部門や派遣社員さんの力を借りることも検討してください。
- 契約書が大量にある場合は、複合機を占領することになってしまうことを避けるため、契約書スキャン専用のスキャナを買ってしまうことをお勧めします。
ScanSnap SV600であれば、スキャナの設置スペースもほとんど不要で、しかも座ったまま作業できるので、作業者の負担を軽減できます。(但し、フラッドヘッドタイプのスキャナより、行が「ふにゃっ」としがちです。)
- PDFファイルはフォルダ分けをせず、一つのフォルダに全部保存することをお勧めします。
申請部門毎や契約ジャンル毎のフォルダ分けは、手間がかかる割に役に立ちません。
むしろ、検索ができる電子ファイルにおいては、単一のフォルダにまとめておいた方が使い勝手が向上します。
- PDFファイルの作成後、スキャナ同梱のOCRソフトウェアやAcrobatを用いてOCR情報を付加しておくとPDFファイル内の検索が可能になるので、内容を再確認する際の業務効率がかなり向上します。
アンダーライン等の装飾がついていない鮮明な活字であれば、かなり正確にOCR情報を付加してくれます。
なお、上記のSV600の付属ソフトウェアにもOCR機能がついています。
- 全契約書のPDF化が完了したら、原本は古いものから倉庫や利便性の良くないキャビネットへ移動させて、おそらく特等地だったであろう契約書原本の保管場所を別の用途に転用しましょう
- 特に事情がない限り、新たに締結された契約書のPDF化作業は、原本を保管に回すタイミングで行いましょう。
繰り返しになりますが、「締結済み契約書が全件PDF化されている」という状態は、業務の効率化に大きく寄与します。
4.契約書をピックアップする
- 締結済みの契約書を参照する必要が生じた場合、原本でなければならないときを除いてPDFを参照するようにします。
また、原本にアクセスできるメンバーは必要最小限に限定しましょう。
- 契約書原本を保管場所から取り出す場合は、紛失防止のため、クリアファイルごとではなく、契約書原本だけを取り出すとともに、クリアファイルに「取り出した人」「取り出した日」「取り出した理由」を書いたメモを入れておく運用を徹底しましょう。
- PDFファイルのピックアップには、Launchyなどのランチャーアプリや QTTabBarを使うと便利です。
5.決裁フローとの紐付け
- 締結済み契約書側から契約締結決裁や捺印決裁の履歴と紐付ける必要は基本的にはありません。
決裁→保管とフローが繋がっているので紐づけるのは容易ではありますが、役に立つことはほとんどないので具体的な必要性がないならばやめましょう。無駄です。
6.リーガルチェックとの紐付け
- リーガルチェックについて案件管理がきっちりできている場合は、締結済み契約書とリーガルチェックとの紐付けを行うことを強くお勧めします。
「締結済み契約書のWord版が欲しい」「どうしてこの条件を受け入れたのか、経緯を知りたい」「当時の担当者・担当部署を知りたい」という良くあるリクエストに瞬時に対応できるようになります。
- 具体的には、管理簿に「リーガルチェックの管理番号」という列を追加する方法と、PDFファイルのファイル名に管理番号を埋め込んでしまう方法がありますが、余力があればどちらも実施することをお勧めします。
- リーガルチェックとの紐付けを毎回検索して行うおうとすると事務コストとメリットが釣り合わなくなってしまうので、契約締結決裁や捺印決裁の際にリーガルチェックのキー要素(管理番号など)を記載することが前提になります。
なお、決裁フローにおける法務のチェックの際には、決裁対象案件に関するリーガルチェックの情報を参照することになるので、契約書の管理とは直接関係しませんが、その意味でも決裁フローとリーガルチェックとの紐付けは有用です。
「これは違う」とか「もっといい方法がある」等ございましたら、ぜひご指摘ください。
ではでは。