2015年10月

著者のお一人の橋詰さんからアプリ法務ハンドブックをご恵贈頂きました.
なお、本書の共著者には知人が含まれていますが、書籍の寄贈を除いて、レビューの依頼を受けた等の背景事情はありません。

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さて、IT界隈で法務系の仕事をしている実務家の間では、そのテーマと執筆陣のラインナップから発売前から高い関心が寄せられていた本書ですが、期待を裏切らない内容に仕上がっていました。
既に弁護士の方々からは複数レビューが上がってきていますので、僕は、アプリを出している会社に勤務する人の立場から本書をレビューしてみたいと思います。

1.何をすれば良いのかが明示されている
解説書を読んでも結局のところ実務でどのような対応が必要になるのかや、自分で取りまとめた対応方法が正しいのかについて今ひとつ自信が持てず、結局外部の弁護士さんにダブルチェックを依頼することになったという経験を持つ方は少なくないと思います。
本書は、法令の説明よりも具体的な実務対応に軸足をおいているようで、具体的なアクション(例えば、何を書けばいいのかや、どのように同意を取ればいいのかなど)が豊富な実例を伴って明示されているため、マニュアル的に利用できる内容になっています。
特に、アプリの利用規約、プライバシーポリシー、特商法表記、資金決済法表記については、逐条解説付きでサンプルが掲載されているのはすごいですね。

2.普通の本には書いてないことが書いてある
AppStoreやGooglePlayでアプリを配信する際に適用される規約は、その影響範囲や効果の苛烈さから、もはや適用法令以上の重要性を持つに至っている一方で、頻繁に改訂されることや、そもそも一企業が定めた規約ということもあって、書籍で解説されたことは今までなかったのではないかと思います。
ところが本書では、何を思ったか一つの章の大半をこの規約の解説に充てているのです。しかも、具体的な条項付きで。
間違いなくニーズはあるとは思いますが、思い切りましたね・・・
また、これも実務上のニーズが大きいにも関わらず書籍の解説がほとんどないOSSのライセンスタームについて、正面から取り上げているのも、特にエンジニアにとっては注目かもしれません。
別の章に飛ぶのでちょっと見つけづらいですが、具体的なライセンス文言の表記方法にも触れられているのもこの本ならではかもしれません。

3.トピックが超幅広い
目次をみれば一目瞭然なのですが、開発からマーケティングまでカバーしているので、とにかくもう、取り上げられているトピックが幅広いんですよね。
冒頭のチェックリストや目次を活用すれば、普段法務的な業務をしていない方でも普通に対応していけるのではないかと感じました。
逆に言えば、この本に書いてある情報は既に体系的に整理されて読めばわかる状態になっているわけで、毎月書籍代以上の給料を頂いている法務としては、それを超える価値を提供できなければ存在意義が問われかねないという恐ろしい立場に立たされたともいえます。
目次や索引も充実しており、必要なトピックをつまむような辞書的な使い方にも適していますので、アプリを出している会社にとっては、一社に一冊的な定番書になるのではないかと思います。


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昨日のエントリーにいくつかコメントを頂いたのを受け、ちょっとだけ補足

1.ステマの悪質性は、優良誤認性にあるのではなく、読者を騙して記事を読ませている点にある
ステマの悪質性は、商品・サービスの内容が優良であると誤認させるところにあるのではなく、読者を騙して記事を読ませるところにあるはずで、そうであれば、ステマを規制するのであれば、本来は優良誤認表示としてではなく、読者を騙して記事を読ませる表示として規制するのが本筋だと思います。
ただ、現状、このような表示に対する規制はないので、あくまで立法論なのかなぁ、と。
数年前に改定された消費者庁のガイドライン「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の 問題点及び留意事項で、「口コミをつかって優良誤認表示したら優良誤認だよ」という、誰もが「そんなの知ってる」と口を揃えていうような言及しかできなかったのも、そのためだと思っています。

2.不快≠違法
多くの人にとってステマは不快なものですが、不快だから違法になるわけではありません。
違法とは、法令に違反しているということであり、当該行為を規制する法令の存在が前提になります。

3.メディアは優良誤認表示の主体ではない
記事であるとの読者の誤認を惹起していることが優良誤認では?というご指摘もありましたが、無料の記事コンテンツの提供は「取引」には該当しないはずで、「自己の供給する商品又は役務の取引について表示」には該当しません。
問題になるのは、広告主の商品・サービスに関する取引についての表示のはずです。

4.ステマは優良誤認だといいたいわけではない
前回のエントリーでいいたかったのは、「広告ではないという外形をとることで、許容される誇張の範囲は限定され、その結果、優良誤認に該当するケースもあるんじゃないかな」ということであって、ステマは全て優良誤認に該当するとは思っていません。

ではでは。
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ステルスマーケティングの一種として、広告表示(PR表記など)を伴わない記事広告(記事の体裁をとった広告)が問題視されることが多くなってきました。
個人的にはPR表記をしていない記事広告は嫌いですし、また、ユーザーを欺いて広告にアクセスを集めているという意味でお行儀が悪いのは間違いないとは思うのですが、果たして「違法なのか」というと、すぐに答えを出せない方は少なくないのではないでしょうか。

というわけで、今回はPR表記を伴わない記事広告の適法性について、ちょっと考えてみたいと思います。

1.前提
まず、僕の知る限り、PR表記を伴わない記事広告(無表記記事広告)が違法になるとすると、その原因は景表法の優良誤認(§4機複院法砲覆里如∈2鵑鰐吃週記事広告が優良誤認に該当するかに絞って検討します。(他にあれば、教えてください)
また、記事広告といってもその内容は様々ですが、ここではJIAAがスポンサードコンテンツと定義するものをさすことにします。(http://www.jiaa.org/download/150318_nativead_words.pdf)
さらに、内容自体が優良誤認表示に該当する記事広告も少なくありませんが、今回はPR表記がついていれば問題にならない内容のものであることを前提にします。

2.優良誤認とは
優良誤認に該当するかを検討するにあたっては、そもそも優良誤認とは何かを正確に把握する必要があります。
というわけで、優良誤認表示を禁止している景表法第4条1項1号を見てみましょう。
第四条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一  商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
〜以下略〜
続いて、PR表記に関して問題になる要件を検討していきます。

・「自己の供給する商品又は役務の取引について表示」
優良誤認が禁止される主体は、「自己の供給する商品又は役務の取引」について表示をしている事業者です。
この点、記事広告においては、表示をしているのはメディア側であって、メディアは第三者である広告主の供給する商品又は役務の取引に関する表示をしているわけで、「自己の供給する商品又は役務の取引」について表示をしているわけではありません。
他方、広告主も、自ら「表示」をしていないので、一見、広告主とメディアのいずれも、「自己の供給する商品又は役務の取引について表示」していないようにも思えます。
しかし、不当表示規制における表示の主体は、「問題となる表示の内容の決定に関与した事業者」であり、その中には、自分で表示内容を決定できる立場にあるにも関わらず、「他の事業者にその決定を委ねた事業者も含まれる」とされています。(景品表示法〔第4版〕p61・東京高裁平成19年(行ケ)第5号)
そして、記事広告における広告主は、まさに「他の事業者にその決定を委ねた事業者」に該当するので、広告主は「自己の供給する商品又は役務の取引について表示」の要件を満たすことになります。
さらに、メディアは、表示主体である広告主とともに表示に関与した者として責任を問われる可能性があることになります(行政法がよくわかってないのでここのところの理屈は正確に分かってないです。ごめんなさい。)
↑と当初は書いてましたが、(景品表示法〔第4版〕の43ページには、「メディア媒体(新聞社、出版社、放送局等)は、当該商品または役務の広告の制作等に関与していても、当該商品または役務を自ら供給していない限り、景品表示法の規制の対象とはならない」って書いてありました。ごめんなさい。

・「実際のものよりも著しく優良であると示す」
広告主とメディアのいずれも優良誤認表示の主体になるとしても、単にPR表記を欠いたことが「実際のものよりも著しく優良であると示す」ことになるのかについては、さらに検討が必要です。
なぜなら、前提記載の通り、今回検討対象にしている記事広告は、その内容自体は優良誤認性がないものであるからです。逆に言えば、内容自体が優良誤認性がある場合は、PR表記があったとしても、普通に優良誤認表示として景表法違反になるはずです。
さて、「実際のものよりも著しく優良」か否かは、「一般消費者の自主的かつ合理的な選択を確保するという景表法の目的から合理的に解釈すると、一般消費者の誤認を招くか否かで判断することになる」とされています。(景品表示法〔第4版〕p70)
この点、PR表記それ自体は、「実際のものよりも著しく優良であると示す」表示ではないので、一見PR表記の有無と優良誤認とは無関係であるようにも思えます。
しかし、純粋な広告・宣伝の表示についてはある程度の誇張が行われることが一般消費者にも理解されており、一般消費者の誤認を招かないことから、ある程度の誇張は優良誤認に該当しないとされています。
そして、PR表記のない記事広告については、読者はあくまで記事として読む以上、前述の「許容される誇張」の幅は非常に小さくなり、その結果として、PR表記をしていれば問題なかった記事広告が、PR表記を欠いたことを理由に優良誤認に該当するという可能性はあるのではないかと思います。
具体的には、あきらかな広告の中の「食べたことのないほどおいしい林檎です」という表記と、記事コンテンツの中の「食べたことのないほどおいしい林檎です」という表記は、一般消費者にあたえる印象が大きく異なる、ということです。

3.結論
記事広告がPR表記を欠く場合、通常の広告では許容される範囲の誇張表現が記事コンテンツの外形をとることによって優良誤認性を有することになり、不当表示になる可能性がある・・・かもしれない


出がけにがーっと書いて、見直しもせずにアップロードしてしまうので、おかしな記載があるかもしれませんが、何か見つけたら教えていただけると嬉しいです。
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