2019年12月

2019年も最終日になりました。
僕は伊達巻がとても好きなのですが、年に一度しか機会がないその伊達巻を買った記憶のあまりの近さに、改めて1年間が過ぎ去る速さを実感しました。

負のスパイラルと再生


辛く、苦しいことが多かった2018年と打って変わって、2019年は自分にとって再生の一年でした。
久しぶりに味わった仕事を通じて人から感謝される、喜ばれるという体験は、想像していた以上に充実感をもたらすとともに、新たな領域へのチャレンジすることの苦しさは、こういう体験から遠ざかるところにもあったりするのかなという気づきも与えてくれました。

とはいえ、全く価値を発揮できない自分と否応なく向き合えたことは、遅すぎたとは自分では思うものの、今振り返るととても大切な経験でした。もう二度とあの苦しさは経験したくはありませんが。
良い成果を出せないことから始まる「信頼が損なわれる→この人には任せられないと、チェックが厳しくなる→成果から問題が見つかりやすくなる→信頼が損なわれる」の負のスパイラルは、嵌った人でなければなかなか実感できないものですし、それだけに手を差し伸べることも難しいものでもあります。
最初の一歩を間違えると誰でもそのスパイラルに嵌る恐れがあること、そして、一度嵌ると自力で抜け出すことはとても難しいということ(それゆえに、現在負のスパイラルに嵌っている人も、きっかけ次第で再生しうること)は、今後も忘れないようにしていきたいと思っています。

他方で、現職の「初めて法務を雇い入れるIT企業での一人法務」というミッションは、ある意味自分の最も得意とする領域であり、魚屋がアジをさばくような感じでスルスル進めることができ、正解を知っていることの強さも再確認しました。
また、慣れ親しんだミッションを与えられたことの副産物として時間的・気持ち的な余裕も大きく確保でき、特に下半期は一度お話をお伺いしたいと思っていた方にお会いする機会をたくさんいただくことができたのも、とてもありがたかったです。


転職チャネルのもう一つの選択肢を作りたい


「なんで法務の領域で●●ライトニングトークとかAdvent calendarとかをやろうと思ったんですか?」みたいな質問を受けることが時々あるのですが、今までは「おもしろそうだったから」以上の回答ができず、なぜそれをおもしろそうだと思ったかは自分でも今ひとつ言語化できていませんでした。
ところが、年末にbizreachの小田さんとランチする機会を頂き、お話をする中で「自分は、法務の人が成果や知見をどんどん共有し、その結果としてすごい人のすごさが可視化される世界を欲している」ということに気づいたのです。そして、改めて考えてみると、思いつきで今年立ち上げたIT法務互助会も、同じような位置づけだったな、と合点がいきました。
結局の所、僕は色んな人が「俺はこんな事やって、これだけ効率化したぞ」「私はこんな取り組みをして、これだけ業務品質向上したよ」みたいなことを競い合う土壌のもとで、どんどん法務全体の知見が底上げされていくのを見てみたいだけだったんです。
自分のモチベーションの源泉を自覚できたことをきっかけに、さらに一歩進んで、すごさが可視化された人と、そのすごさを欲する企業が直接つながって転職が成立するようなところまで行けたらいいな、と今は思うようになりました。

来年やること


まずは、所属している会社が掲げている目標をちゃんと達成すること。
それに加え、クロトワさんからある領域でメディアを持つと良いとのアドバイスを頂いたことを受け、来年は、このメディアをちゃんと形にしたいと思っています(今月からwordpressとcocoon(というwordpressのテーマ)を弄りつつ、高機能差に圧倒されながらコンテンツの投稿を始めています)


それでは皆さん、良いお年を。
そして、来年もよろしくおねがいします〜
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というわけで、新株予約権原簿です。
ダミーデータ入り


ダミーデータなし




コピーしてご利用ください。

利用方法は以下の通り。
    新株予約権発行時
  1. 「【入力用】SOサマリー」シートにSOの発行条件を記入
  2. 「【入力用】新株予約権者(氏名・住所・備考)」シートに割当対象者の情報を記入(過去SOを発行したことがある方はすでに記入されているのでこのステップは不要)
  3. 「【入力用】SO異動情報」シートに割当内容を記入(記入済みの行はいじりません)
    退職等による新株予約権消滅時
  1. 「【入力用】SO異動情報」シートに異動内容を記入(異動数はマイナスで記入する)
    新株予約権原簿を生成する
  1. 「【レポート】新株予約権原簿」シートのA1をダブルクリックしてカレンダーを表示し、基準日を選択
    登記用の情報を確認する
  1. 「【レポート】新株予約権原簿」シートのA1をダブルクリックしてカレンダーを表示し、基準日を選択
  2. 「【入力用】SOサマリー」シートのM列以降を参照
    株式分割時
  1. 「【入力用】株式分割履歴」シートに分割日付と分割比率を追記(比率は1株が何株になるかの数字だけを記入すればOK)



この新株予約権原簿でやっていることの解説


簡易DBとして構成している


閲覧用のシート(=レポート)と、データ保持用のシート(=テーブル)を分けています。
なお、閲覧用のシートの内容はデータ保持用のシートからquery関数で抽出しています。
データベース的発想でスプレッドシートを作るということにピンとこない方におすすめの一冊は、こちらです。(もともと、ピボットテーブルって何だ?という疑問に対してはっしーさんにお勧めいただいた本なのですが、データベース発想でスプレッドシートを作る作法についてもとてもわかり易く解説されていて良い意味で驚きました。)


メンテコストが最小限になるように割り切っている


割当・消滅というログについてはすべて記録する一方で、住所については最新の情報のみを保持するにとどめています。
これにより、基準日を過去日に設定しても当時の住所が設定されないという不備が生じてしまうのですが、実務上過去日付のSO原簿を住所の正確性を担保した状態で生成しなければならないケースはほとんど発生しないことに加え、住所変更時に行を足すという動作は直感的でないため、あえてここは割り切りました。


実務上使っているものをベースにしているので多分クリティカルな不具合はないと思うのですが、もしおかしな点を見つけたら教えて下さいませ〜
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このエントリーは、法務系 Advent Calendar 2019の10日目です。

当初、Googleスプレッドシートで作ったメンテナンスコストが超低い新株予約権原簿を共有してクリアしようと考えていたのですが、裏表のこれまでのエントリーを拝見し、単なるtipsみたいなエントリーでお茶を濁すのもちょっと違うなと思い直し、最近良く考えるようになった「正解を追う」スタイルについて書いてみることにしました。

「正解を追う」というのはどういうことか


最近、「正解を追う」というスタイルについてよく考えています。
この「正解を追う」というのは、ある業務に正解があることを前提として、現状とその正解との差分を埋めようとする動きを指しています。これに対し、正解を特に意識しない場合の業務改善は、「今」を基準に、今をより良くする方法を模索するという形を取ることになります。
言ってしまえば軸足の置き場の違いでしかないわけですが、これが長期的に見ると結構な違いを生むのではないか、というのが、今考えていることなのです。

こういった事を言うと、「正解は一つではない」というご指摘を受けることもあるのですが、正解を追うということと正解は一つではないということは、相反することではありません。リソース、業種、組織のミッションなどによって正解は異なるのは当然ですが、その異なる正解をそれぞれが追うというだけのことでしかないのです。

正解は誰が知っているのか


ある程度経験を積んだ方であれば、概ね正解はわかっていると思われるかもしれません。ですが、「概ね」がついてしまう時点でそれは正解ではありません。1足す1は2であって、概ね2ではないのです。
では、その正解を知っているのは誰か、というと、それは全世界にいる先達です。より正確に言えば、先達の知恵の集合体・最小公倍数こそが、正解だと思うのです。
有名な格言に、巨人の肩の上に立つ、というものがあります。
先達が積み上げた知恵を、自分の経験や能力だけで超えることなどできるはずがありません。
その道の第一人者が書いた本を読み、話を聞き、それを実務に適用することが、正解を追う最もストレートなやり方だと思うのです。

ものすごく当たり前のことを書いているなと自分でも思うのですが、他方で愚直にこれをやれる人は多くありません。そもそも積極的に本を読んだり人の話を聞きに行く人自体が少数であり、そのハードルを乗り越えたとしても、読むだけ、聞くだけで終わってしまい、実務に適用するところまでやりきれる人となるとごく少数しかいないのではないでしょうか。

今自分が置かれた環境における正解を目指そうとすると、正解がわからなければ最初の一歩を踏み出すことができなくなりますし、そもそも正解がわからないという状態に居心地の悪さを感じるようになります。
正解を追うというのは中々不便なことであり、また息苦しいことでもあります。だからこそ、理屈としては巨人の肩の上に立つ方が遠くを見通せるとわかっていても、自分の身の丈の目線から見える景色で満足してしまうのだと思うのです。

正解は変わり続ける


一度正解にたどり着いたとしても、安心はできません。前述の通り、正解は環境によって異なり、環境は常に変化し続けるので、当然の帰結として正解も変わり続けるからです。
しかし、正解が不安定で不確かなものであるということは、大きな問題ではありません。なにしろ「一度正解にたどり着いたとしても」ということ自体が非常にあやうい仮定であり、そもそも正解が何かを客観的に正しく把握することは基本的には不可能だからです。
つまり、実際にはそのような前提のもとで、巨人の肩の上に立って得た正解らしきものを追うのが、「正解を追う」の正体なのです。

ただ、正解らしきものと正解は異なるので、盲目的にそれを追うだけでは不十分です。
正解らしきものを、自らが発見し、または他者が提唱する正解とぶつけて、より正しいものを取るというテストする必要があるのです。
そして、このテストは、一度たどり着いた(と自分では思っている)正解に固執してしまう保守性のバイアスを乗り越える良い手段にもなりえます。
実のところ、保守性のバイアスは、正解を追うスタンスの最大の敵とも言えます。苦労して見つけ出した正解であればあるほど、環境の変化についていけず、時代遅れになってしまっていることを認めたくなくなるからです。そのため、常に正解を疑い、テストを続けることは、正解を追うことと必ずセットにする必要があるのです。

正解に固執しているかチェック


前述の通り、一度得た成果に固執してしまうことは、正解を追うことの妨げになるのですが、自分自身で正解に囚われていることに気づくことは容易なことではありません。そこで、シンプルなチェックを考えてみました。
  • 自分の正解に固執している人は、他者が提唱する正解の穴を探すが、そうでない人は他者が提唱するの正解と自分の正解との差分を探す。
  • 自分の正解に固執している人は、自分の正解を否定されると反発するが、そうでない人は検証を始める
  • 自分の正解に固執している人は、他者による自分の正解と異なる正解の提唱に反論するが、そうでない人は無視する

思いつきで考えたものですが、方向性としてはこういうことではないかと思っています。

最後に


最近、様々なすごい方からお話をお伺いする機会を頂いているのですが、やはり第一人者の方の話を聞くのは本当に勉強になります。
蛸壺と称されがちな法務だからこそ、どんどん人と会って、話を聞きに行きましょう!
(時間切れ目前になって締めがめっちゃ雑になってしまった)

というわけで、次はにょんたかさんです〜
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法務系AdventCalendar2019の7日目エントリーを執筆されたNakagawaさんに先週お時間をいただき、お話をお伺いしてきました。

Nakagawaさんは、上記エントリーでも触れられていらっしゃるとおり法務からコンサルタントに転身された方で、僕が所管を法務から管理部門全般に広げたのとNakagawaさんお転身とが時期を同じくしていたことから、Twitterでたまに言及される領域変更の難しさに一方的にシンパシーを感じており、いつかお話をお伺いしたいと思っていました。

法務から他職種への転身に関するエッセンスは上記エントリーをお読みいただくとして、こちらでは二人で共感しながら話した転身の実体験について掘り下げたいと思います。

実際に実務をやっていない状態の勉強は、実務にはそんなに役に立たない


僕は去年の撤退エントリーでの反省点の一つとして、領域を広げる前に他領域の情報をもっとインプットしておくべきだったといったことを書きましたが、この点についてNakagawaさんから、実務をやる前の勉強と、実務に携わってからする勉強は全く質が異なる旨のご指摘を頂きました。
確かに、自分に何が足りていないかがわかっていない状況の勉強は、必死さという意味でも、ポイントの精度という意味でも今ひとつになってしまうのは自然なことで、予め必要な情報や知見をインプットした上で転身に備えるなんてことは、アサインされたあとキャッチアップするよりずっと難易度が高いことなのだろうと思います。つまり、転身に伴う苦しさを、直前のインプットによって事前に緩和することは基本的にはできないのです。
ではどうするか、という点についての一つの解は、先日中根さんからお伺いしたお話にもあった、法務の仕事をしながら、法務以外の仕事にもどんどん絡んでいくという姿勢なのだろうと今は思っています。Nakagawaさんのようにコンサルタントに転身したいのであれば経営企画やマーケ部門の業務に絡んでいく、管理部門所管役員になりたいのであれば、人事・経理・財務の役割も平時から分担するなど。
そうすることで、自分に足りないこと、わかっていないことが可視化され、意味のある勉強ができるようになるのかな、と。

わかった瞬間は、超気持ちいい


領域が変わったときの苦しさの正体は、正解がわからないことにあります。
正解がわからないとどうなるかというと、だいたいこんな感じになります。
・正解がわからないので、当然成果は的外れです。
・軌道修正しようとする質問も的はずれです。
・成果も質問も的はずれなので、決裁者はがっかりします(そしてそれがこちらに伝わってきます)
・どうすればいいのかわからないので、PCを開いても手が動かなくなります

どうですか?読むだけで苦しくないですか?
これ、実際に超苦しいんです。
Nakagawaさんがこれの苦しさをどう乗り越えたかと言うと、コンサルタント特有のPJ間のアイドリング期間に、ひたすら過去受けた指摘を振り返ったり、できるコンサルタントの資料を写経したりしたのだそうです。つまり、シャープに正解を抑えに行ってるんですよね。問題解決のプロたるコンサルタントの面目躍如って感じですが、心底すごいなって思いました。そしてその結果、(具体的なエピソードを書くのは憚られるので結論だけ書いちゃいますが)次のプロジェクトで正解を出していらっしゃるんです。
その話を聞いたとき、ちょっとおしゃれなレストランで不相応に大きな声で「超気持ちいいですね!」って言っちゃいました。んで、何人かこっちを振り返りました。しょうがないですよね。だって、超気持ちよかったんだもん。

法務から他職種への転身に、法務の経験は役に立つか


この点はNakagawaさんのエントリーでも触れられていますし、裏のcoquelicotlogさんのエントリーでも取り上げられていますので、まずはそちらをお読みください。

・・・読みましたか?
まぁ、こう書いても実際に読みにいってくれる方なんてほとんどいないことを僕はもう知っているので続けちゃいますけど、結局一言でいうと、法務から他職種への転身に、法務の経験はそんなに役には立たないが、結論なんですよ。残念ですが。
法務が他職種との決定的な違いは、論理的思考力や交渉力や問題解決力なんてところにはありません。そんなスキルは他部署のメンバーも普通に持ち合わせています。ではなにが違いなのかというと、それは法律知識や、法務実務の知見の有無でしかないと思っており、そんなものは他職種への転身を成功させることには寄与しないんです。coquelicotlogさんがおっしゃるとおり「役に立つ」ことでしかない。
これはつまり、転身を成功させるためには、法務特有のスキルではないところで勝負して勝たなきゃならないということであり、しかも、勝負の相手は、すでにその道で経験を積んだ人たちであるというのが、法務からの転身の実態なのです。
だからこそ、中根さんや、Nakagawaさんや、coquelicotlogさんや、はっしーさんのように、法務から飛び出てご活躍されている方を見ると、心から尊敬の念を覚えるのです。

ちなみに、法務から他職種への転身に際しての法務の経験の寄与は限定的ですが、更にその後法務に戻った際の「他職種に移った」という経験は、法務業務の品質向上にかなり強く寄与すると感じており、この点もいろいろな方のお話をお伺いしつつ、別の機会にまとめたいと思っています。

といったところで外出しなければならなくなったので、推敲ゼロでエントリー!(後で修正するかもしれません)
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