マネージャーの役割の一つにメンバーのスキルアップに対するサポートがあるのですが、マニュアルや教育システムがしっかり整備されているグローバル企業のような一部の例外を除くと、OJTの名のもとに、徒弟制度のような「見て覚えろ」的な指導に終止していたり、個別の行動に対する都度のフィードバックという非体系的な方法で行われたりすることが多いものです。

ですが、少し前に話題になった「寿司学校出身のミシュランガイド掲載の寿司屋」でも明らかなように、スキルの取得という意味ではOJTは非常に効率の悪いやり方であるのはほぼ間違いないと思います。

とはいえ、OJT以外の方法でどうやってスキルアップ支援すればいいのかわからないという方も少なくないと思いますので、誰でも明日からできるスキルアップ支援法の一つとして、以下のやり方をご紹介します。

ステップ0:準備
Googleドキュメントなど、支援者と被支援者が同時に編集できるドキュメントを作成し、開く
→ステップ1以降で決めた内容はすべてこのドキュメントに記載していく。
業務外でスキルアップに費やせる時間を最初に確認する(通勤時間や、帰宅後の自由時間など)
支援ポイント:被支援者が話したことを、支援者が記録する。認識にずれがないかをリアルタイムで確認しながらすすめる。

ステップ1:ゴール設定
期限が明確であり、かつ達成・未達が明確な目標を設定する。
法務であれば、「来期から取締役会事務局の業務を回している状態」「今期の●●本部からの契約書関連の依頼をすべて一人で滞留なく処理している状態」など。
達成時期を必ず明確にする。
支援ポイント:被支援者本人がやりたい、できるようになりたいと思っている目標なのかを、理由などを聞きながら確認する。

ステップ2:具体的な業務・行動へのブレイクダウン
ゴールを達成した際に、日々行っている具体的な業務・行動をリストアップし、現時点でできないものを赤字にする。
そもそも、現在到達していないゴールを達成した状態を想定しているので、漏れがあることを前提としつつ、気付き次第後から足していけばOKというスタンスでリストアップする。
支援ポイント:なかなか次のステップに進めないようであれば強制的に切り上げる

ステップ3:獲得しなければならないスキル・知識を明確化
ステップ2で赤字にした業務・行動をこなせるようになるために獲得しなければならないスキル・知識をリストアップ。
このステップでステップ2に追加すべきものに気づくことがあるので、必要に応じてステップ2と行き来する。
支援ポイント:それがあれば、●●ができる?それがないと、●●はできない?といった問いかけを通じて磨き込む。

ステップ4:アクションプランの策定
ステップ3でリストアップしたスキルや知識を獲得する具体的な方法をリストアップする。
なお、スキルや知識を獲得する具体的な方法は、「わかっている人の話を聞く(セミナー受講含む)」、「資料や本を読む」、「実際やってみる」の3つに集約される。
具体的でなければならないので、「誰から話を聞くか」「どのセミナーを受講するか」「どの資料/本を読むか」「何をやってみるのか」などをできる限り特定する。
支援ポイント:話を聞くべき人、読むべき本、受講すべきセミナーなどを紹介する

ステップ5:工数見積
ステップ4でリストアップした具体的な方法に必要な時間を見積もる。
実施時期を検討するための材料にするだけなのでざっくりでOK。

ステップ6:実施時期の設定
ステップ5で見積もった工数をベースに、ステップ4の実施時期を設定する。
インプットや人の話を聞きに行く時間は業務外になるものが多いので、ステップ0で確認したスキルアップに費やせる時間を考慮して調整。
直近でやる必要があるものを赤字にする。
支援ポイント:なぜかキツめのスケジュールを設定しがちなので、実現できるものなのかを確認する(緩める方向に誘導する必要はなく、「やれる」の一言を引き出す方向がベター。

ステップ7:最初のステップの実施日の確定
人と会うのであればいつまでにアポを取るのか、本を読むのであればいつまでに買うのか、など、最初のステップを踏み出す日を確定にする。

ステップ8:継続的な振り返り
週次で1on1を設定し、ステップ6・7のスケジュールの進捗を確認しつつ、ステップ2・3のアップデートを行う。
知識が増えれば視界が広がり、やるべきことが見えてきてステップ2と3は増えるものなので、ステップ2と3を増やせるのは良いこと。


自分の力だけで目標達成に向けた具体的な動きを取れないジュニア寄りのメンバーや、「こういう順序でこのスキルを身に着けなさい」と指示できない専門分野がずれているメンバーに対しての成長支援フレームワークとしてはそれなりに機能する実感があります。

「自分はこうやっているよ」「こうするともっと良くなるよ」みたいなご指摘・コメントをお待ちしてます。

ではでは〜