春は目標設定の時期。
ということで、いくつかの会社でマネージャーをした経験から、法務、というかバックオフィスの人が良い目標を立てるためのコツをお伝えしようと思います。
バックオフィスの目標あるあるなのが、「何をするか」を目標にしてしまうということですが、これをやってしまうと、達成しても高評価の材料にしづらいという意味で、使い勝手の悪い目標になってしまいます。
「何をするか」を目標にしてしまっている具体例としては、「契約書のレビューを●件以上処理する」とか、「現在進行している●●プロジェクトを完遂する」とか、「全社員向けコンプライアンス研修を実施する」といったものです。
では、具体的にどうすればよいのかというと、目標を「ゴール」「手段」「インパクト」の3つの構成要素に分解して設定することです。
ゴールは、何を目指すのか。
手段は、そのために具体的に何をするのか。
インパクトは、その結果、どのような影響が会社に生じるか。
冒頭で記載した「何をするか」は、上記の「手段」とほぼ同じですが、大きく違うのは、「手段」はそれ自体が達成目標ではないということです。
例えば、冒頭で具体例として挙げた「契約書のレビューを●件以上処理する」であっても、それを
ゴール :法務部全体の契約書レビューの対応キャパシティを増やす
手段 :契約書のレビューを●件以上処理する
インパクト:契約書のレビューの待ち時間が期首比較で0.5日短くなる
といった要素の一つにするだけで、随分と印象が違えって見えるのではないかと思います。
それと同時に、ゴールの達成やインパクトの実現のために、その手段が果たして適切なのか、という振り返りも自分自身で行うことが可能になります。
多くのバックオフィス担当者にとって、ゴール、手段、インパクトのうち、最も書きづらいのは「インパクト」ではないかと思います。これは、ダイレクトに会社に影響を及ぼすようなバックオフィスの業務は少ないからなのですが、だからといって、インパクトを設定することから逃げてはなりません。
例えば、同じ「全社員に対するコンプライアンス研修の実施」であっても、会社にどのようなインパクトをもたらすことができるのかを起点に考えられたものと、そうでないものとでは、達成したときの価値に大きな違いが生じるからです。
なお、「強いインパクト」は、これまでの積み重ねやめぐり合わせなどが噛み合わないと、そもそも狙うことができないものだと考えたほうが安全です。その意味で、常に「強いインパクト」を狙う必要はありません。ただ、インパクトが皆無な、またはよくわからない目標を掲げることを避けるという意識は、常に持っておく必要があります。
目標設定の指針としてSMARTというフレームワークがよく用いられますが、このうちの「Measurable:計測可能性」は、手段に適用されがちです。例えば、「契約書レビューの処理日数を1日短縮する」といった具合に。ですが、実現すべきはインパクトであり、手段は文字通りそのための手段でしかないので、手段を定量化しても評価の観点ではさほど効果は得られません。仮に、手段としての定量目標をクリアしても、それによってもたらされたインパクトが些少であると評価者に捉えられてしまうと、高く評価する気にはなれないからです。逆に、定量化し、計測可能なインパクト要素を目標として設定している場合、それをクリアしたことはダイレクトに高い評価に繋がりやすくなります。
その意味で、定量化する必要性が高いのは手段よりもインパクトといえます。
会社での仕事はチームワークなので、従業員個人の目標とは別に、それが明示的なものか暗黙のものかの差こそあれ、組織目標が存在します。組織目標を離れた個人目標は自己満足でしかないので、個人目標の達成が組織目標の達成に寄与しなければなりません。
もし、組織目標が明確でない場合は、「企業価値の最大化」を組織目標として仮設定しましょう。なぜなら、企業活動は、企業価値を最大化するために行われているものなので、あらゆる組織目標も最終的には「企業価値の最大化」にリンクしているからです。
バックオフィスにおいては、その活動が直接、またはわかりやすい形で企業価値の最大化につながるケースは多くありません。そのため、因果関係は長くなりがちなのは避けられません。しかし、風が吹けば桶屋が儲かる、のような細く長い因果関係ではなく、長くても骨太で、たしかに企業価値の向上につながるであろうと感じられるのがよい目標です。
「ゴール」「手段」「インパクト」を定めるためのアプローチとしては、組織目標から導き出される「ゴール」を起点にし、そのために必要な「インパクト」を設定した上で、その「インパクト」を得るための手段を考えるという順序が最も自然です。
ですが、やりたいこと(手段)や、実現したいこと(インパクト)が明確な場合には、「手段」や「インパクト」を起点にしても問題ありません。
「手段」を起点にするというのは、つまり「自分はこういうことをやりたい」「こういう人になりたい」というところからゴールとインパクトを逆算する手法です。この手法をとる場合は、会社に「こういうことをやったらor自分がこういう人になったら、会社にとってこんないいことがありますよ」とプレゼンするようなスタンスでゴールやインパクトを設定することになります。
「インパクト」を起点にするというのは、「こういう状態になったらいいな」というところから、それを実現するためにはどうすればよいか(手段)を考えつつ、組織にとって「こういう状態」を実現すべき理由(ゴール)をプレゼンするという進め方になります。
このエントリーは、普段目標設定面談や1on1でフィードバックしている内容をガガガーっとまとめたものなのですが、文章化することを通じて自分の思考が整理される効果を感じてます。
こういう振り返りって、重要だよなーと、改めて感じました。
ということで、いくつかの会社でマネージャーをした経験から、法務、というかバックオフィスの人が良い目標を立てるためのコツをお伝えしようと思います。
目標の構成要素は、ゴール・手段・インパクト
バックオフィスの目標あるあるなのが、「何をするか」を目標にしてしまうということですが、これをやってしまうと、達成しても高評価の材料にしづらいという意味で、使い勝手の悪い目標になってしまいます。
「何をするか」を目標にしてしまっている具体例としては、「契約書のレビューを●件以上処理する」とか、「現在進行している●●プロジェクトを完遂する」とか、「全社員向けコンプライアンス研修を実施する」といったものです。
では、具体的にどうすればよいのかというと、目標を「ゴール」「手段」「インパクト」の3つの構成要素に分解して設定することです。
ゴールは、何を目指すのか。
手段は、そのために具体的に何をするのか。
インパクトは、その結果、どのような影響が会社に生じるか。
冒頭で記載した「何をするか」は、上記の「手段」とほぼ同じですが、大きく違うのは、「手段」はそれ自体が達成目標ではないということです。
例えば、冒頭で具体例として挙げた「契約書のレビューを●件以上処理する」であっても、それを
ゴール :法務部全体の契約書レビューの対応キャパシティを増やす
手段 :契約書のレビューを●件以上処理する
インパクト:契約書のレビューの待ち時間が期首比較で0.5日短くなる
といった要素の一つにするだけで、随分と印象が違えって見えるのではないかと思います。
それと同時に、ゴールの達成やインパクトの実現のために、その手段が果たして適切なのか、という振り返りも自分自身で行うことが可能になります。
インパクトの設定から逃げない
多くのバックオフィス担当者にとって、ゴール、手段、インパクトのうち、最も書きづらいのは「インパクト」ではないかと思います。これは、ダイレクトに会社に影響を及ぼすようなバックオフィスの業務は少ないからなのですが、だからといって、インパクトを設定することから逃げてはなりません。
例えば、同じ「全社員に対するコンプライアンス研修の実施」であっても、会社にどのようなインパクトをもたらすことができるのかを起点に考えられたものと、そうでないものとでは、達成したときの価値に大きな違いが生じるからです。
なお、「強いインパクト」は、これまでの積み重ねやめぐり合わせなどが噛み合わないと、そもそも狙うことができないものだと考えたほうが安全です。その意味で、常に「強いインパクト」を狙う必要はありません。ただ、インパクトが皆無な、またはよくわからない目標を掲げることを避けるという意識は、常に持っておく必要があります。
定量化すべきはインパクトであって、手段ではない
目標設定の指針としてSMARTというフレームワークがよく用いられますが、このうちの「Measurable:計測可能性」は、手段に適用されがちです。例えば、「契約書レビューの処理日数を1日短縮する」といった具合に。ですが、実現すべきはインパクトであり、手段は文字通りそのための手段でしかないので、手段を定量化しても評価の観点ではさほど効果は得られません。仮に、手段としての定量目標をクリアしても、それによってもたらされたインパクトが些少であると評価者に捉えられてしまうと、高く評価する気にはなれないからです。逆に、定量化し、計測可能なインパクト要素を目標として設定している場合、それをクリアしたことはダイレクトに高い評価に繋がりやすくなります。
その意味で、定量化する必要性が高いのは手段よりもインパクトといえます。
ゴールは、組織目標とリンクしていなければならない
会社での仕事はチームワークなので、従業員個人の目標とは別に、それが明示的なものか暗黙のものかの差こそあれ、組織目標が存在します。組織目標を離れた個人目標は自己満足でしかないので、個人目標の達成が組織目標の達成に寄与しなければなりません。
もし、組織目標が明確でない場合は、「企業価値の最大化」を組織目標として仮設定しましょう。なぜなら、企業活動は、企業価値を最大化するために行われているものなので、あらゆる組織目標も最終的には「企業価値の最大化」にリンクしているからです。
バックオフィスにおいては、その活動が直接、またはわかりやすい形で企業価値の最大化につながるケースは多くありません。そのため、因果関係は長くなりがちなのは避けられません。しかし、風が吹けば桶屋が儲かる、のような細く長い因果関係ではなく、長くても骨太で、たしかに企業価値の向上につながるであろうと感じられるのがよい目標です。
どこから目標を考えるか
「ゴール」「手段」「インパクト」を定めるためのアプローチとしては、組織目標から導き出される「ゴール」を起点にし、そのために必要な「インパクト」を設定した上で、その「インパクト」を得るための手段を考えるという順序が最も自然です。
ですが、やりたいこと(手段)や、実現したいこと(インパクト)が明確な場合には、「手段」や「インパクト」を起点にしても問題ありません。
「手段」を起点にするというのは、つまり「自分はこういうことをやりたい」「こういう人になりたい」というところからゴールとインパクトを逆算する手法です。この手法をとる場合は、会社に「こういうことをやったらor自分がこういう人になったら、会社にとってこんないいことがありますよ」とプレゼンするようなスタンスでゴールやインパクトを設定することになります。
「インパクト」を起点にするというのは、「こういう状態になったらいいな」というところから、それを実現するためにはどうすればよいか(手段)を考えつつ、組織にとって「こういう状態」を実現すべき理由(ゴール)をプレゼンするという進め方になります。
最後に
このエントリーは、普段目標設定面談や1on1でフィードバックしている内容をガガガーっとまとめたものなのですが、文章化することを通じて自分の思考が整理される効果を感じてます。
こういう振り返りって、重要だよなーと、改めて感じました。