6e7ad1e6.jpg「残り、ひとつになっちゃったね。」
と、彼女は、言う。
「うん・・・そうだね。」
と、僕は、答える。

鼻の奥がくすぐったくなるようなあの香ばしくて懐かしい匂いとほのかな煙につつまれて、でもまた二人はすぐに、黙り込んでしまう。


「初めて会ったときも、こんな話、したよね。」
と、彼女は、言う。
「うん・・・そうだね。」
と、僕は、答える。

違うのは、二人が一度も目を合わせようとしないこと、
そして、彼女がもう、あのきれいな指輪をしていないこと。


「最後の一つ、いいよ。」
と、彼女は、言う。
「うん・・・そうだね。」
と、僕は、答える。

そういえば、いつも最後の一つは僕だったな、ってことにいまさら気づいて、また少し悲しくなってしまう。
でもきっと僕は、5年前に戻れたとしても、同じことを繰り返してしまうんだろう。


「私のことは、いいからさ。」
と、彼女は、言う。
「そうかな。」
と、僕は、答える。
「うん・・・そうだよ。」
と、彼女は、ゆっくりと、言う。

彼女の言葉に誘われるようにようやく顔を上げると、彼女は横を向いて、前髪をそっと撫でていた。
何かをがまんしているときの、いつもの癖だ。
この仕草を、僕は何度目にしてきたのだろうか。
結局、今日もまた、僕は彼女を苦しめてしまっている。
もう、こんなこと、終わらせなきゃいけない。


僕は、のろのろと最後の一つに手を伸ばす。
彼女は、前髪を撫でていた手をそっと下に降ろす。

僕は、手をテーブルの上に浮かせたまま、それでも一瞬逡巡してしまう。
彼女は、少しだけ(本当に少しだけ)僕を責めるように目を細める。
僕は・・・




そう、僕は、自分を奮い立たせるように、最後のニラ饅頭を口に放り込む。


うわぁ。やっぱりうめぇ。
ニラ饅頭は、やっぱりうめぇ。
最後の一つ、お言葉に甘えて頂戴してよかった。


ん?
・・・あ、しまった。
このエントリー、タイトルつけ間違えてんじゃん。
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