先週末のGigazineの記事経由で知ったんだけど、Adsenseのアカウントを特に理由が無い(と認識してる)のに消されてしまい、未払いの報酬の支払いを求めてGoogleを相手取って提訴したってケースがあったそうな。
結局勝訴したそうなんだけど、その理由がすごい。
Gigazine
事実、AdSenseの規約にある条項6によると「Google は、その独占的裁量で、いかなる場合でも理由の如何を問わず、本プログラムの全部または一部、あるいは本契約を終了し、どの本件プロパティについても本プログ ラムの全部または一部への参加を中止あるいは終了することができます。」と書いてあるものの、これは英語では「any reason」と書いてあり、「no reason」ではありません。つまり、どのような理由によってもアカウントを停止することはできるが、理由にならない理由によってアカウントを停止することはできない、とGoogleが自分で言っているわけです。

原文
In fact, clause 6 of the AdSense for Content Terms and Conditions does not allow Google to terminate accounts for "no" reason--only "any" reason. Much to my amusement, the judge interrupted her to make a point that sounded familiar.


つまり、(この発言を本当に裁判官がしたのであれば、という前提ではあるけど)規約に「any reason」としか書いてなく、「no reason」とは書いていないことが請求認容の根拠になっているとのこと。

日本だったら、おそらくany reasonだろうがno reasonだろうがトリーズンだろうが、理由にならない理由で弱い立場の人が不利益をこうむるような本件のような事例では、規約の文言に拘泥することなく、権利濫用でさっくり処理されるような気がする。

もし、こんな判決が普通に出るようであれば、アカウント停止条項(とか通知解約条項etc)を作る際には「terminate accounts for any or no reason」と書くよう部内で申し送りされるだろうし、もちろん、他の規定だって文理解釈できっちり結論がでるよう徹底して突き詰められていくんだろうなってことは容易に想像できる。

今まで、英文契約(の、特に一般条項)って、へったくそな読みやすいとはいえない文章で、ながながずらずらいろんなことが書いてある理由をいろんな場面でいろんな方からレクチャーされたけど、本件ほどその理由がしっくりと腑に落ちたことはない。

やっぱり、契約書は裁判で証拠となることに一番の存在意義があるわけだから、裁判所の傾向は、ダイレクトに契約書の傾向に反映されるんだろうと思う。
さらに言えば、たまに、「日本の契約書は雑で、米国企業の契約書は細かい」的な言い方をされることがあるけど、むしろ「普通に契約条件を書けば行間を読んで合理的な結論を導き出してくれるって信頼のある日本の裁判官と、1から10まで契約条件として書かないとどう判断されるかわからんって思われてるアメリカの裁判官」の違いってだけのことなんじゃないかって気がしてくる。
つまり、ごちゃごちゃ重複する文言を重ねなくても普通に契約に関する紛争が合理的に解決されているであろう日本の状況は、海外のそれよりずっと優れてるんじゃないかって思う。

契約書の文理解釈を通じて痛い思いをしにくいってことは、とてもいいことだぞ、と。

さて、推敲ゼロで、出社してきまーす。