僕は、意地でも「思われます」って言葉を使わないことにしている。

確か6、7年くらい前、まだ生まれて初めての社外研修として、証券印刷会社が主催する企業結合のイロハみたいなセミナーに出席したんだけど、その講師があらゆる文末に「と思われます」をつけるという、すごい人だった。悪い意味で。

それはもう、とにかく徹頭徹尾の勢いで、「会社合併と会社分割は、包括承継という点で共通しているということが重要だと思われます。」だとか「吸収合併を行おうとする場合、まずは吸収合併契約を結ぶことになると思われます。」とか、90分間思われます思われます思われますのシャワーを浴びせられた僕は、もう少なくとも仕事のやり取りでは、「思われます」という表現は絶対に使わないようにしようと心に誓ったのだった。

90分の思われますシャワーを浴びたことのある人には共感してもらえると思うけど、「思われます」という自発の言葉には、「●●を考慮すると、当然誰でもそう思うでしょ?いや、僕がそう思ってるって言いたいわけじゃないんだけど、ね。ほら、普通、そう思うじゃん。でしょ?」的な、全身全霊で逃げを打っているニュアンスが真冬の雨のようにじっとりと染み込んでいるように感じてならない。
若さ満ち溢れる青年だったそのときの僕には、そんな姿勢が気持ち悪くて仕方なかった。

だから、僕は、「思われます」とは言わない。
どうでもいいことみたいだけど、僕にとってはそれなりに重要なルールなのだ。