4月は新卒入社+人事異動のシーズン。
このご時世、きっと多くは無いのでしょうが、法務に配属された方もいらっしゃるかと思います。
そんな方に贈る、初めて法務に配属された方へのメッセージです。
(という体裁ですが、本音では、「昔の自分に伝えたいこと」なんですよね・・・)

1.「社内で自分が一番詳しい」分野を早めに作ろう
一口に法務といっても、コーポレート法務、契約法務、知財、コンプラと、その領域は多種多様であり、どんなできる人であっても、そのすべてを一人でカバーするのは至難の業です。
これは、逆に言えば、他の人がカバーできていない分野に精通できれば、職歴の短い人であっても早い段階で頼られる存在になることが可能であるということです。
人に頼られるようになると、仕事が楽しくなりますよ!

2.解決策を出そう
弁護士やコンサルタント等の外部の専門家と異なり、社内の法務には「どうすればうまくいくか」のアウトプットが求められます。
微妙な案件の相談を受けたとき、ついつい「どうするのが正しいのか」に終始し、後は現場の判断で・・・と逃げたくなることもあるかもしれません。
でも、そんなときこそ依頼者と一緒に悩んで泥臭く落としどころを探すべきです。
どうするのが正しいのかなんて、あなたがいなくてもすぐ答えは出るのですから。

3.勉強しよう
多くの問題は、法令や判例ですでに解決されているので、これらの知識があれば、業務を正確かつスピーディーに処理できるようになります。
会社の書籍や経費を上手に利用して、(時には自腹を切って)積極的に勉強しましょう。
「何を勉強すればいいのかわからない・・・」という方には、既習であっても未習であっても、まずは民法から始めることをお勧めします。
普通に一番役立ちますよ。

4.役割を自覚しよう
人に言われると最高にむかつきますが「お前の給料は俺たち(依頼者)が稼いでるんだよ」ということは、紛れも無い事実ではあります。
決裁に対する法務の影響力が大きい会社では、面倒を避けるテクニックとして必要以上に法務を持ち上げる傾向があるため、ともすると勘違いをしてしまいますが、法務はあくまでサポート部門であり、自分たちが直接会社を動かしているわけではありません。
ある日突然いなくなっても、クオリティの上下はともかく、会社は明日も元気に営業を続けるのです。
この事実を自覚した上で、「では、そんな自分はどんな価値を会社に提供できるのか」を考えて業務にあたると、仕事の質を一段上げられると思います。

5.外に目を向けよう
法務という職種はその業務内容が充分に効率化、体系化されていないため、非効率・不正確な”しきたり”が残っていることも少なくありません。
自分が教えられた、または身につけたやり方が本当に正しいものなのかを振り返るためには、会社を出て交流するのが一番です。
セミナーや勉強会に出席する機会があったら、積極的に参加してみましょう。
そこまではちょっと・・・という方は、実務担当者が書いているblogを読むことからはじめてみてはいかがでしょう。これだけでも結構違いますよ。

6.目的意識を持とう
目の前の仕事の山を崩すことに一生懸命になっていると、つい「この仕事はなんのためにやっているのか」を忘れがちになってしまいます。
しかし、営業部門における「顧客を獲得する」、開発部門における「よりよい製品を開発する」などの目に見える目的が見えにくい法務という職種で、何のためにやっているのかを意識せずに仕事をし続けると、いつの間にか徐々にピントがずれてしまいがちです。
そして、ピントがずれた法務は、無益なだけでなく、多くの場合、会社にとって有害な存在になってしまいます。
実態を無視して監査条項から事前承諾をはずすことを頑なに譲らなかったり、条件は折り合っているのに「及び」を「および」に修正することを求めてみたり、決裁者でもないのに案件を潰すような、ダメな法務にならないよう、「自分はどんなメリットを会社にもたらすべきなのか」を常に意識するようにしましょう

7.楽しもう
最後に、これが一番重要です。
楽しく仕事をしましょう。
もしかすると、この春から法務に配属された方の中には「法務なんてやりたくなったよ。とほほ・・・」という方もいらっしゃるかもしれません。
また、希望通りではあったけど、実際に業務に携わってみたら、イメージとぜんぜん違ってがっかりする方もいらっしゃるかもしれません。
でも、法務という仕事には、他の職種には無い、すばらしい面がいくつもあります。
「会社の意思決定に若いうちから関与できる」こともそうでしょう、「様々な情報に触れることができる」こともそうでしょう、「つぶしが利く専門性を身につけられる」こともそうでしょう、「会社のお金で勉強させてもらえる(機会が多い)」こともそうでしょう。
そしてなにより、僕が一番「法務という仕事を選んでよかった」と思うのは、「自分の仕事をするだけで、とても感謝してもらえる」ということ、これです。
営業部門が顧客を獲得しても、製造部門が製品を製造しても、経理部門が決算を締めても、経営企画部門が中期経営計画を立案しても、広報部門がプレスリリースを出しても、普通は誰からも「ありがとう。」とは言ってもらえません。
でも、法務は違います。
ちゃんとした仕事をすると、結構な頻度で「ありがとう。」とか「助かったよ。」とか「●●さんがいてくれてよかった」という声をかけてもらえるのです。
自分の仕事をしているだけなのに。
これは、とってもすばらしい法務の特徴だと思います。

繰り返しになってしまいますが、最後にもう一度書きます。
せっかく法務になったんだから、楽しみましょう!