たとえば、公園にりんごの木が生えていたとする。
そのりんごの木には、おいしそうなりんごがたわわに実っている。
そして、そのりんごの木の側には、男が立っている。
うわさでは、「このりんごの木は俺のものだ」と主張しているらしい。
あなたはそのりんごを食べたいと思っている。
こんな場合、あなたはどういった行動をとるべきだろうか。

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  1. 男が自分を見ているかどうかは気にせず、りんごをもぎ取る。りんごはたくさん実ってるんだから、一つくらいもいでも文句を言われるわけは無いだろ。
  2. 男が自分を見ているかどうかは気にせず、りんごをもぎ取る。文句を言われたら、「お前の言い分はおかしい。公園のりんごの木はお前のものじゃない。」と反論する。
  3. 男が自分を見ていない隙を狙ってりんごをもぎ取る。きっとばれない。
  4. 男に「りんごをもいでいいですか?」と聞き、OKであればもぐ。

どうだろう。
まっとうな人であれば、迷わず4を選ぶんじゃないだろうか。
まぁ、もし、あなたがこっそりと事を成し遂げる自信を持っているのなら、3は選ぶことまではあるかも知れない。
でも、1や2を選ぶことは、きっと無いだろう。
思い込み(1)は間違っていたら大変な目にあうし、人に文句を言われるリスクにむざむざ首を突っ込む(2)のはバカげているってことがわかってるからだ。


でも、なぜか、これが「りんごの話」から「著作権の話」になると、とたんに1や2を選択する人が多くなる。
なぜだろう。
りんごは取ったらなくなっちゃうけど、著作物はコピってもなくならないからだろうか。
おいしいりんごは手にしたことがあるけど、価値のある著作権の権利者にはなったことがないからだろうか。

この前軽く問題提起をしたtwitter実況(通称tsudaる)についてもそうだ。
何もどこにいるかわからない権利者を探して許諾を取れといっているわけじゃない。
あなたの目の前でしゃべる予定の発言者に対し、「あなたの発言を要約してネット配信していいですか?」と聞けばそれですむ話なのに、なぜか多くの人は「こんなことで文句を言われるはずは無い」とか、「●●という理由で著作権侵害じゃないと解釈できる」といった方向へ進みたがるのだ。
そりゃ、あなたの考えは、後々正しと判断されるかもしれない。
でも、それはあくまで"後々"の話であり、今目の前に実っているりんごをどうにかできるわけではないというのに。

僕にはそれが、不思議でならない。

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  • この分野での議論が深まり、「その公園のりんごの木は、誰がりんごをもいでも構わないものである」って結論がでたら、そもそも「このりんごの木は俺のものだ」と主張する男もいなくなるはずなので、この問題も発生しないことになりますね。早くそんな日が来るといいですね。そうですね。
  • ちなみに、男の了解を取りたくない人に僕がお勧めする解決法は、「いまからりんごをもぎまーす。もぎまーす。」と大きな声で連呼しながらりんごをもぐ、というものです。
    文句を言われたらやめればいいし、文句を言われなかったら、きっと男は気にしてないんだろうってことがわかるから。
    テレビ局は、テレビカメラという「もぎまーす」の象徴があるからいいですよね。うらやましくはないけど。なんか重そうだし。