英文契約書を初めて読むよ!という方をターゲットに、これを知っておけば役に立つんじゃないかという豆知識をまとめてみました。
ツッコミ、補足大歓迎です。

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shallとmay
契約書においては、ほとんどのケースでshallは義務、mayは権利を示す助動詞として機能します。
shallが出てきたらこの文には義務が、mayが出てきたらこの文には権利が書かれていると割り切ってしまって続きを読むことで、スムーズに権利と義務を整理することができます。

大文字で始まる単語は定義されてる
文頭でも固有名詞でもない(通常の英語のルールでは大文字で始まるはずが無い)のに大文字で始まっている単語は、契約書のどこかでその意味が定義されています。
このような単語は、通常とは異なる意味が付与されていますので、文意を誤解してしまわないよう、定義済み(のはず)の用語を見かけたら、その意味を確認する必要があるのです。
逆に、契約書の最初に登場する定義をまとめた条項は、それだけ読んでも何の意味もないので、通読する際は読み飛ばしちゃってOKです。

条文のタイトルで内容を推測する
多くの契約書では、内容を一言で言い表すタイトルがつけられており、タイトルから内容を推測してから読み始めると、内容を理解しやすくなります。
なお、以下のタイトルは日常ではあまり用いない表現だったり、内容とタイトルが正反対だったりするので、内容と一緒に覚えてしまった方が手っ取り早いと思います。
  • Force Majeure
    不可抗力、つまり、当事者ではどうにもならないことに起因する義務違反に関する免責が定められています。たまにとんでもないことが不可抗力として列挙されていることがあります。
  • Representation and Warranty
    相手方に対して「ここに書いてあることはほんとだよ」と保証する旨が定められています。たまに神様でもない限り保証できっこないことや、驚くほど白々しい嘘がちゃっかり書かれていることがあります。
  • Assignment
    契約上の地位や権利、義務の譲渡・移転を”禁止”する旨が定められています。
  • Severability
    契約条件の一部が無効になった場合でも、他の条件は生き残る旨が定められています。丁寧な契約書だと、例外として、契約書もろとも無効になる条項を別途指定していることもあります。
  • Waiver
    権利を行使しない場合であっても、その権利を放棄したわけではない(後で行使することができる)旨が定められています。
  • Entire Agreement
    この契約が、契約締結以前になした合意よりも優先する旨が定められています。契約書に規定した内容が、交渉時の議事録等でひっくり返されるのを防ぐ条項です。
  • Whereas/Recitals
    WhereasやRecitals はタイトルではありませんが、この後ろに「契約書がなぜ締結されるに至ったか(締結の背景)が書かれている」という目印になります。とはいえ、WhereasやRecitalsには、大抵、毒にも薬にもならないようなことしか書いてありません。

全部大文字の条項
契約書の中には、全てが大文字で記載されている条項が登場することがあります。
これは、「よく読め!」という意味だそうで、大抵は原案作成者に有利な条件、多くの場合は「保証などの責任を制限する内容」が定められています。

原則例外パターン
多くの条項は、原則と例外・条件の組み合わせで構成されています。
以下の用語が登場したときは、ここから先は例外・条件だ、と認識しながら読むことで、立体的に把握することができるようになります。
  • Notwithstanding 〜,
    〜に関わらず、という意味で、Notwithstanding the foregaing,(上記の規定に関わらず)や、Notwithstanding Section 2.1(2.1条の規定に関わらず)といった形で登場します。
  • , unless 〜
    〜の場合を除き/〜しない限り、という意味で、unless otherwise agreed(別途合意しない限り)といった形で登場します。
  • , provided that 〜/, provided, however, that 〜
    (但し)〜ならば/〜という条件で、という意味で、provided that the other party uses best efforts to 〜(相手方が〜するために最善の努力を払うことを条件に)といった形で登場します。

契約書特有の表現
契約書特有の表現は上げればきりがありませんが、これだけは覚えておくと絶対に役に立つというものが一つあります。
それは、here+前置詞というもの。
契約書では、hereunderやらhereinやら、やたらとこのhere+前置詞が登場しますが、これは全て前置詞+this agreementと読み替えてください。
例えば、set forth hereinと書いてある部分は、set forth in this agreement(本契約に定められた)と読み替え、grant a right hereunderと書いてある場合は、grant a right under this agreement(本契約に基づいて権利を許諾する)と読み替えればいいのです。

ではでは〜