(最低限)月1ブックレビューのお時間です。
今回取り上げるのは、親戚の子どもが法学部に入ったらプレゼントしてあげたい書籍ランキング第1位を獲得(片岡調べ)した名入門書、スタートライン債権法です。
早速参りましょう!

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    いいところ

    • 基礎の基礎から説明されているので、民法の知識0からでも独習可能
    • 文章構造がシンプルかつ明確で、とても読み易い
    • 教科書としては学説の対立にあまり踏み込んでいない
    • 実況中継系参考書のような展開(通年講義を念頭に置いた季節感のある雑談や試験のお知らせなど)がちょくちょく登場して楽しく読める
    • 読者に対する愛情がすごい。愛されてる。

    残念なところ

    • 判例の引用は限定的(結論だけ)
    • 教科書なので、「明日から実務で役に立つ」といった内容はあまり含まれていない。

よく、「試験勉強や学校で勉強したことなんて、仕事する上ではほとんど役に立たないんだよ」という言説を耳にすることがありますが、こと企業法務に関して言えば、民法前三編の「お勉強で得た知識」が無いと、かなりアイタタタ・・・な状況に陥ってしまいます。
そう、企業法務と民法の知識は、切り離すことのできないほどに密接に関わりをもっているのです。
それにも関わらず、一旦現場に出てしまうと、特殊な場面に関する知識のインプットに励むことはあっても、初歩的な知識のメンテナンスは怠りがちで、その結果、基礎的な知識であるにも関わらずあやふやになってしまっていたり、抜け落ちてしまっていることがあります。

こんな情けない状態に陥るのを防ぐためには、「簡単すぎないかな」なんて思わずに、刀を研ぐようなイメージで入門書を通読することは有用だと思います。
そして、このスタートライン債権法は、そのような用途に最適だと感じました。
何しろこの本、すらすら読めるんです。
「破産から民法をみえる」は、僕の破産法に関する知識が薄いこともあって「もしかしてもう知識をインプットできなくなっちゃったんだろうか」と思うほどに読了するのが苦しかったんだけど、スタートライン債権法は、楽しささえ感じながら読み進めることができました。
これは、民法の、しかも入門書ということも当然大きいんだろうけど、池田先生の「理解させてやろうという情熱」や「記述・構成の巧みさ」の寄与がなければここまで判りやすい内容にはならなかったんじゃないかと思います。
スナップショット
  • 安心してほしい。わからないのが普通である。(p31危険負担の説明にて)」
  • 著者としては、まだ教えていない概念は極力使わず、現在あるはずの知識だけで理解できるように注意して説明している(p56)
  • 本書の読み方も、惰性で「愛読」しないで、著者のあら捜しをするような批判的な目で読んでいっていただきたい。(p102)


  • ところで、この本を読み終わるまで気づかなかったのですが、第二弾のスタートライン民法総論も出ているそうなので、こちらも後で読んでみたいと思います。

    ではでは!

    スタートライン債権法
    池田 真朗
    日本評論社
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