法務系AdventCalendar2019の7日目エントリーを執筆されたNakagawaさんに先週お時間をいただき、お話をお伺いしてきました。

Nakagawaさんは、上記エントリーでも触れられていらっしゃるとおり法務からコンサルタントに転身された方で、僕が所管を法務から管理部門全般に広げたのとNakagawaさんお転身とが時期を同じくしていたことから、Twitterでたまに言及される領域変更の難しさに一方的にシンパシーを感じており、いつかお話をお伺いしたいと思っていました。

法務から他職種への転身に関するエッセンスは上記エントリーをお読みいただくとして、こちらでは二人で共感しながら話した転身の実体験について掘り下げたいと思います。

実際に実務をやっていない状態の勉強は、実務にはそんなに役に立たない


僕は去年の撤退エントリーでの反省点の一つとして、領域を広げる前に他領域の情報をもっとインプットしておくべきだったといったことを書きましたが、この点についてNakagawaさんから、実務をやる前の勉強と、実務に携わってからする勉強は全く質が異なる旨のご指摘を頂きました。
確かに、自分に何が足りていないかがわかっていない状況の勉強は、必死さという意味でも、ポイントの精度という意味でも今ひとつになってしまうのは自然なことで、予め必要な情報や知見をインプットした上で転身に備えるなんてことは、アサインされたあとキャッチアップするよりずっと難易度が高いことなのだろうと思います。つまり、転身に伴う苦しさを、直前のインプットによって事前に緩和することは基本的にはできないのです。
ではどうするか、という点についての一つの解は、先日中根さんからお伺いしたお話にもあった、法務の仕事をしながら、法務以外の仕事にもどんどん絡んでいくという姿勢なのだろうと今は思っています。Nakagawaさんのようにコンサルタントに転身したいのであれば経営企画やマーケ部門の業務に絡んでいく、管理部門所管役員になりたいのであれば、人事・経理・財務の役割も平時から分担するなど。
そうすることで、自分に足りないこと、わかっていないことが可視化され、意味のある勉強ができるようになるのかな、と。

わかった瞬間は、超気持ちいい


領域が変わったときの苦しさの正体は、正解がわからないことにあります。
正解がわからないとどうなるかというと、だいたいこんな感じになります。
・正解がわからないので、当然成果は的外れです。
・軌道修正しようとする質問も的はずれです。
・成果も質問も的はずれなので、決裁者はがっかりします(そしてそれがこちらに伝わってきます)
・どうすればいいのかわからないので、PCを開いても手が動かなくなります

どうですか?読むだけで苦しくないですか?
これ、実際に超苦しいんです。
Nakagawaさんがこれの苦しさをどう乗り越えたかと言うと、コンサルタント特有のPJ間のアイドリング期間に、ひたすら過去受けた指摘を振り返ったり、できるコンサルタントの資料を写経したりしたのだそうです。つまり、シャープに正解を抑えに行ってるんですよね。問題解決のプロたるコンサルタントの面目躍如って感じですが、心底すごいなって思いました。そしてその結果、(具体的なエピソードを書くのは憚られるので結論だけ書いちゃいますが)次のプロジェクトで正解を出していらっしゃるんです。
その話を聞いたとき、ちょっとおしゃれなレストランで不相応に大きな声で「超気持ちいいですね!」って言っちゃいました。んで、何人かこっちを振り返りました。しょうがないですよね。だって、超気持ちよかったんだもん。

法務から他職種への転身に、法務の経験は役に立つか


この点はNakagawaさんのエントリーでも触れられていますし、裏のcoquelicotlogさんのエントリーでも取り上げられていますので、まずはそちらをお読みください。

・・・読みましたか?
まぁ、こう書いても実際に読みにいってくれる方なんてほとんどいないことを僕はもう知っているので続けちゃいますけど、結局一言でいうと、法務から他職種への転身に、法務の経験はそんなに役には立たないが、結論なんですよ。残念ですが。
法務が他職種との決定的な違いは、論理的思考力や交渉力や問題解決力なんてところにはありません。そんなスキルは他部署のメンバーも普通に持ち合わせています。ではなにが違いなのかというと、それは法律知識や、法務実務の知見の有無でしかないと思っており、そんなものは他職種への転身を成功させることには寄与しないんです。coquelicotlogさんがおっしゃるとおり「役に立つ」ことでしかない。
これはつまり、転身を成功させるためには、法務特有のスキルではないところで勝負して勝たなきゃならないということであり、しかも、勝負の相手は、すでにその道で経験を積んだ人たちであるというのが、法務からの転身の実態なのです。
だからこそ、中根さんや、Nakagawaさんや、coquelicotlogさんや、はっしーさんのように、法務から飛び出てご活躍されている方を見ると、心から尊敬の念を覚えるのです。

ちなみに、法務から他職種への転身に際しての法務の経験の寄与は限定的ですが、更にその後法務に戻った際の「他職種に移った」という経験は、法務業務の品質向上にかなり強く寄与すると感じており、この点もいろいろな方のお話をお伺いしつつ、別の機会にまとめたいと思っています。

といったところで外出しなければならなくなったので、推敲ゼロでエントリー!(後で修正するかもしれません)