昔「質問で評価を落としてしまう8つのパターンと改善方法」というエントリーを書いたことがあったのですが、これが想定していたのは新人や転入者が質問者になるケースでした。

ですが、つい先日、上司や先輩がよくない質問をしているケースもあるよね、という話を最近部内でする機会があったので、今回はそっち方面をまとめてみようと思いました。

テーマは、人を病ませてしまう質問。

1.質問の形をとった非難
期限までに依頼した仕事が仕上がってこなかったときの「なんでできてないの?」という質問の多くが、この「質問の形をとった非難」です。「なぜ」と聞きつつ、言いたいことは「期限までに間に合わせなかったことの不満」でしかないというもので、3パターンのうち、もっとも見かける頻度が高い質問です。
この「質問の形をとった非難」では、形式的には理由を尋ねていながら、その意図は非難にあります。そのため、回答者が「忙しくて手を付けられませんでした」「わからないことがあって調べていました」みたいに理由を答えてしまおうものなら、「言い訳するな!」とか「状況を聞かれる前に自分から報告しろ」と叱責されるのが関の山。質問者は「なぜ」とは言っているものの、別に理由を聞きたくて質問をしているわけではないので、このような理不尽なやりとりが発生してしまうのです。
そして、「質問の形をとった非難」が常態化した関係下では、質問への回答は、謝罪の言葉から始まるようになります。「なぜ」に対して「申し訳ございません」が返ってくる。全く噛み合っていないようでいて、実はぴったり噛み合っているのです。
こうなると、純粋な理由の質問も非難の色合いを帯びるようになり、「申し訳ございません」から回答が始まるようになってしまいます。そして、その原因は、質問者の方にあるのです。

2.宣言を強要する質問
まだ諦めるなよと思いながら「ここで諦めるか?」と聞いたり、チャレンジすると言えと思いながら「チャレンジしてみるか?」と尋ねる質問です。
質問された側には質問者の意図は透けるものなので、真意がどうであれ、この質問を受けたらやるというしかありません。また、もし勇気を出して諦める方向で答えても「本当にそれでいいのか?」などと聞かれてしまうのは、さながら「はい」を選ぶまで先に進めないドラクエのループ質問のようです。
それだけであればまだ良いのですが、「自分でやる/やれると言ったんだろう」といった具合に追い詰める材料に使われてしまいがちなのが罪深い。
言ってる方は自発性を引き出してるつもりかもしれませんが、やってることは、「やる気がないなら帰れ」と怒鳴りつける部活の指導者とさほど違いはありません。
シンプルかつストレートに「君にはやれると思っているし、やってほしいと思っている。諦めずにがんばってほしい。」と伝えたほうが、偽りの自発性を引き出すよりもよっぽど効果的ですよ。

3.正解を当てさせる質問
上司や先輩が、部下や後輩を教育する意図で、すでに自分の中に「こうすべき」という確信があるにも関わらず、「どうすればいいと思う?」と尋ねることがあります。それが、この「正解を当てさせる質問」です。
質問者は、自分の頭で考えて答えにたどり着いてほしいと願ってそうするのですが、基本的に、育成の対象になっている人が自分の頭で正解にたどり着くことはできません。そのため、「ちがうな」「もっとよく考えろ」といった具合に問答が何度も繰り返されることになり、その様相はまるで千本ノックです。
そして、この種の質問を受け続け、考えた答えを否定され続けた人は、「正解」ではなく、「質問者が正解だと思っていること」が何かを考えるようになってしまうのです。たまに正解を当てた際に「そうだよ、その通り」などと褒められてしまおうものなら、さらにその傾向は強くなるでしょう。
もしやるなら、正解にたどり着く思考法や前提知識をしっかり伝えた上で、それをどう使うか、どう適用していくのかの訓練の場面で質問を使うようにする必要があるのです。
育成のための質問のつもりが、ただのマウンティング、または質問者の自己満足になってはいないでしょうか?



上記の3パターンに共通するのは、「質問の形式を取っているが、質問する意図はない」という点です。そのため、このような質問を回避するための対策もシンプルで、それは「質問の意図があるとき以外は、質問の形式を取らない。」というだけのことなのです。
もちろん、コーチングに長けた方は、「質問の意図のない質問」をうまくつかってモチベーションを引き出したり、行動変容を促すことができます。しかし、それは素人が表面をなぞってやれるようなかんたんなことではありません。むしろ、コーチング的な、それとは似て非なるコミュニケーションで被質問者にダメージを与えてしまうケースが少なくないのです。

また、質問ではない質問の欠点にはもう一つの別の欠点があります。それは、質問者がポジションを明確にしなくて済む、ということです。
パターン1については「不満がある」というポジション、パターン2については「君はやれる」というポジション、パターン3については「この場面ではこうすべき」というポジション。
ポジションを明確にするということは、そのポジションを取ったことが評価にさらされる(間違えていた場合にそれが白日の元に晒される)ということでもあります。そのため、自分で発言の方向性を決められる上司や先輩は、意識しないと質問に逃げてしまいがちだと、自戒しています。

いやー、久しぶりにブログにエントリー書きました。
出かけられない4連休も、悪いことばかりではないですね。