はじめに


弁護士さんからみた企業法務担当者の困る行動について、Googleフォームでご意見募集をしたところ、意外にたくさんの投稿をいただけたのでまとめてみました。

こんな法務担当者は困る


締め切り設定の問題


当日締め切りや金曜夜に月曜朝指定などの超タイトな期限設定は当然不評。
0営業日発注
ショートノーティスの依頼
納期が急
当日中や明朝までの回答を求められること。
会議や他の急ぎの案件で日中はスケジュールが既に埋まっていることもあり、夜も家族の都合があるので(子供の迎えや寝かしつけなど)かなり迷惑です。
「いつも急なご相談ですみません」などの一文が添えられていたとしても、あまりにも頻回だと依頼を受けたくなくなります。

なお、急ぎの理由が不合理だったり、その後の対応が雑だと、困るというより辟易しているという温度感に。
「急ぎ」「大至急」がデフォになっている。そして、ファイルを開くと先方のコメントなどの日付が古くて、滞留していたことがうかがえる。
急ぎです!とか「至急」というのを必ずつけてくる人。そして急ぎ対応したのに、あとで「金額が間違っていたのでやり直したいです。」とか言ってくる人。
急ぎで回答くれ、と言って内容不十分な質問メールを投げてきたので、当該不十分な内容について質問するメールを即座に返信したのに、なんらレスがない
納期が急すぎる(明日、明後日まで)

締め切り設定そのものが悪いわけではなく、タイトでないなら逆に助かるよ、というコメントも頂いています。
「明後日中」「1週間後まで」などのリーズナブルな期限設定であれば、むしろ期限を設定していただいた方が助かります!こちらも優先順位をつけやすくなるので。

また、むしろ法務サイドのレスが遅いぞというお叱りも。
レスポンスが遅すぎる担当者

依頼の品質の問題


依頼が雑で困っている先生方もたくさんいらっしゃいました。弁護士はエスパーではないのです。
依頼が雑
依頼メールの情報量の不足、添付ファイルが解読困難
メールを一読しても意味のわからない相談。
社内用語の多用、5W1Hの欠落など。メールを送信する前に、「会社のことや当該案件の背景をよく知らない人間が読んでも理解できる文章か?」確認していただきたいです。
「不明な点があればおっしゃってください」などの一文が添えられていたとしても、忙しい弁護士はなるべくさっさと返信して仕事を終わらせたいと思うものなので、不明な点があると場合分けして回答したり、文面から予想した前提のもとで回答することが多く、結果として弁護士・依頼者の双方に余計な時間がかかります。

また、その依頼だと充分な品質のアウトプットができない、または期待に応えるのは難しいといった声も多かったです。
「雛形でいいので契約書が欲しい」と言われる(ちゃんとアレンジしたい)。
「簡単に」「ざっとで良いので」対応してもらえますか?という要望。
実際にさっと対応できる相談もありますが、それなりに深いリサーチが必要な場合もありますし、契約書のレビューも、元のドラフトの出来が悪いと、ちょっと手直しするだけでは足りずほぼゼロからドラフトし直すこともあります。
着手してみないことには、「簡単に」「ざっと」作業できる性質の仕事かどうかはわかりません。そのため、(全力は尽くしますが)短期間で対応できるかどうかや、フィーが抑えられるかどうかは依頼時点ではお約束できません。
顧問料の範囲内で対応して欲しいのか、それとも個別案件として予算を確保しているのかを明示しない。
弁護士の活動の箸の上げ下げまで一方的に細かく指示する。
経営陣以外が、社内の内紛・ハラスメント等の従業員と会社との間で利益相反がありうる相談をする(会社の顧問ですので‥‥)


依頼方法の問題


人によるのかもしれませんが、電話しがちな法務担当者に困っている先生は複数いらっしゃいました。
平時からまず電話で連絡がくる(大体出れず折り返すことになる)
電話が多い。メールで済ませられる要件でも電話をかけてくる。

ちなみに、全然別の話題の一般論ですが、メールの返事が遅い先生に対しては、法務担当者は電話にシフトする傾向があります。いえ、全然別の話題の一般論です。

また、依頼時に適切なCCを設定していないっぽいけど大丈夫?という心配も頂いています。それ、多分大丈夫じゃないです。
ccに会社の人(ミーティング参加者)を入れないでやり取りをしたがる。弁護士との連絡は、自分とだけにしたいと思っているようだが、会社内でこちらの回答等が展開される際に正しく伝わらないという心配がある。
メールなどで、上司の方をCCに入れずカジュアルに新規相談をして来られる部下の方がいる(タイムチャージ発生しますがいいのでしょうか‥‥)

チャージの問題は稟議を取っていれば問題ないのですが、弁護士とのやり取りを自分だけに閉じる合理性は無いので、法務担当者のマインドまたは法務チームの心理的安全性に問題がないか、心配になっちゃいますよね。

法務の調整ミスの問題


弁護士さんからすると法務は会社との数少ない接点なので、法務が社内調整下手だと、その悪影響は弁護士さんにも波及してしまいます。
社内の稟議決裁が遅いまたは根回しができておらず、方向性がぶれる
会議で握った内容の撤回
方針が理由なくころころ変わる(一度相手方に方針を伝えた後に変更されるとすごく困る)

ただ、法務担当者もはしごを外された被害者の一人であるケースもそれなりにあるということは、先生方にもぜひご理解いただきたいのです・・・。

担当者の資質の問題


やる気が無いのはバレちゃっているみたいですよ。
やる気がない担当者
完全にお任せ状態(関心を示さないレベル)
丸投げの担当者
自己保身しか考えていない担当者


やる気があっても能力的に、または人格的にアレだとやっぱり困るみたいです。
理解力がない担当者
尋問に堪えられない豆腐メンタルの担当者
自社の見解を「常識」と考え、それに反する裁判所の考えや弁護士の考えを非常識と否定する言動。
担当者が異動しても次の担当者に引継ぎがなされない。
感情的な担当者
自分の考えにこだわりすぎる担当者


コンプレックスの問題


コンプレックスの裏返しで過剰にへりくだったり、逆に尊大な態度をとってしまったりして困らせるタイプ。いやまぁ、単に人格的にアレなだけで、コンプレックスが原因じゃないかもしれませんけどね。それはそれで。
最近は減りましたが、有資格者に過剰に対抗意識を持っていたり、慇懃無礼な方は本当に辛いなと思っていました。
事業部の前でいいかっこしたいのか、法的知識・見解をミーティングで開陳して、こちらの回答をそこに合わせたがるが、間違いが多かったり、エアプだったりして否定するのに困る。
自慢話をしてくる。


弁護士確認済み


法務あるあるの一つにやんちゃな「法務確認済み」があるのですが、法務担当者も立場を変えてやっちゃってるみたいです。社内と違ってバレにくいので、程度の差こそあれやってる法務は結構多いってWikipediaで読んだことがあります。
弁護士の見解のうち、会社(または担当者)の都合のよい一部だけを切り出して、弁護士がこういった、と流布する。
「弁護士確認済み」という不正確なコメントを稟議に書く。


値切り


値切られると困るみたいです。多分ですが、終わった後の値切りなんでしょうね。依頼前に金額交渉するのは珍しくないと思うので。
報酬を値切る
弁護士費用を値切ってくる担当者



その他


やたらとほかの事務所、弁護士の悪口をいう。(もしかすると自分たちを持ち上げているのかもしれないけれど、余所では自分たちのことを悪く言ってるんだろうな、と思うので、あまり信頼できない。)
あえて断言しますけど、他所では先生の悪口を言ってますね。こういう人は。

意味不明な感情論で好条件の和解に応じようとしない担当者
裏にいる偉い人が真犯人かな、と思ったのですが、そうだとしたらほぼ間違いなく「上がアレで。ほんとすみません。」って言うはずなので、やっぱり担当者なんでしょうね。

休日祝日に連絡がくる
ごめんなさい。


ご回答いただいたみなさま、ありがとうございました〜