昨日ポストしたエントリー(法務部門長のおしごと)は、実は20時にそれまで書いていた草稿を捨ててがーっと書いたものだったのですが、捨てた方もせっかくなので#LegalAC外でひっそりポストしておこうと思います。
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法務部門長になる道筋


法務に限らず、部門長の求人は、原則として現任の部門長か、部門長の経験者であることが要件になっていることがほとんどなので、「なりかた」という意味では、現実的な答えとしては昇格するしかありません。
参考:

そこで、まず把握しなければならないのは、状況的に、あなたが法務部門長に昇格できる可能性はあるのか、です。まず、以下のマトリックスをご覧ください。
matrix
「次の部門長候補」は、上長から特命的なミッションを依頼されたり、上長の不在時に決裁の代理や会議のファシリテーションをすることが(同僚からではなく)上長から期待されている人です。多くの組織では「候補」が明確なことが多いのではないかと思います。

AまたはBの場合


上記のマトリックスに当てはめて、Aの環境にいる人が自分の努力だけで法務部門長になるのが難しいということについて、特段の説明は不要でしょう。また、Bの環境にいる人も、「候補」が次の法務部門長になることが見えている以上、Aの人と状況に大差はありません。
つまり、「候補」になれていないAまたはBの方は、そのままでは何年経っても法務部門長になれないと考える必要があります。

そこで問題になるのが、「候補」になる方法です。
これについては、ある程度合理的に運営されている組織においては、身も蓋もない話ですが、チーム内で最も高いパフォーマンスを発揮し続けることしかないと思っています。ただ、ポイントなのは、ここでいうパフォーマンスの高さは、あなたの自己評価も、依頼者からの評価も、同僚からの評価も無関係で、評価者から見たパフォーマンスの高さだということです。
特にBの環境では現任の法務部門長がいないため、被評価者からの評価と自己評価も含む法務内の評価との間にギャップが生じることが少なくありません。しかし、こと「候補」になることを目指す場面では、「評価者がわかっていない」ではなく、「自分が評価されるポイントを把握できていない」という発想を持たなければ、このギャップを埋めることは難しいのですが、ここはなかなか理解を得にくいポイントであるように感じます。(諦めてしまったり不満を抱くだけで、堂々巡り・足踏み状態になってしまう人が少なくない。そうさせてしまうのは上長の責任でもあるのですが…)

Dの場合


では、「候補」でもあり、現任の法務部門長もいないDのようなケースは安泰かというと、そうとも言えません。Dは、組織としてはあなたを法務部門長にする余地があるにも関わらず、そうしていないという状態だからです。
Dの状態にある方への処方箋としては、まずは意志の表明、つまり、上長との1on1や、目標設定の場で法務部門長を目指すという意志を表明するということをお勧めします。能力的に問題ない場合には、案外するっとなれたりすることも少なくありません。自分のキャリアを、自分以上に真剣に考えている人はいないのです。がんばっていれば人は見ていてくれるという考えは美しいですが、ある種の甘えも含んでいるということもまた事実だと思うのです。

仮に、能力的に足りない部分があるなどの部門長に昇格させられない理由がある場合でも、意志を表明することでクリアすべき課題を明確にしてもらえることや、そのための助言や支援を受けやすくなるので、やって損はありません。
なお、事実上法務の責任者であるにも関わらず、部門長の役職を付与されない結果としてDになっている場合は、対外交渉の際に肩書があると便利とか、親が喜ぶとか、年始のおみくじにかいてあったとか、何でも良いので理由をつけて肩書を貰ってしまうことをお勧めします。冒頭で書いたとおり、「部門長の求人は、原則として現任の部門長か、部門長の経験者であることが要件になっている」ので、肩書がないと転職のときにハンディキャップを負うことになってしまうからです。

Cの場合


Cの中には、仮に現任の法務部門長がいなくても法務部門長に選任されない人と、現任の法務部門長がいなければ後任として昇格する人が含まれ、前者については前述のDのアドバイスがそのまま当てはまります。
後者については、上が詰まっていない会社に転職するのも悪くはありませんが、転職先で再度「候補」になれるとは限りません。その人が活躍できるかは、その人自身の能力と同じくらい、ときにはそれ以上に、環境(上司・同僚との相性、カルチャー、規模など)に左右されるということには注意が必要です。(ちなみに、募集要項の「マネージャー候補」という記載は、現時点でマネージャーや強い「候補」がいないことと、この採用では「候補」になれそうな人を採りたいという募集企業の意向を示しているだけであり、採用された人が「候補」になれることを約束するものではないことにも注意が必要です。)

そのため、一番におすすめしたいのは、いずれは部門長になりたいという意志を表明しつつ、部門長の右腕に徹することです。あなたが「候補」である限り、権限移譲や陪席という形で部門長の業務に携わったり至近距離で見たりする機会は少なくないはずで、それは座学では絶対に得られない学びの機会になります。
そうは言っても、現任の法務部門長がいる限り、自分がその席に座ることはないじゃないかというのはそのとおりではあるのですが、あなたが活躍すればするほど、現任の法務部門長が更に昇格する(その結果席があなたに回ってくる)チャンスも増えますし、そうでなくてもあなたのためにポジションが作られたり、役職がつくことは大いに期待できるのです(それが転職の際に武器になるのは前述の通り)

おわりに


向き不向きはあるにせよ、マネージャーという仕事には、一生をかけて取り組むに値するおもしろさがあると思っているので、将来どうしようかなーと思っている人がとりあえず目指す選択肢としてはありじゃないかな、と思ってこれを書きました。
ただ、多分大企業だとこんな単純な話ではないんでしょうね。