ある行為から得られる利益が少ないからといって、その行為が包含するリスクが小さいとは限らない。

こう書くと、「そりゃ、そうだろうよ」って思うかもしれないけれど、具体的な案件が目の前にあると、こんな当たり前のことを見失ってしまうことがあるみたいだ。

先日たまたま見かけたエントリーで
今朝メールをチェックしてたらA8.net経由で損害賠償がどうこういうメールが来てました。内容はまず、「価格変更及び、今までは紹介の対象プログラムにおいて内容に満足がいかなかったときの返金保証を廃止します」と。

で、広告で旧価格や返金保証を謳っている場合は、内容を差し替えて欲しいとのことです。まぁ、それはいいです。それは広告主の自由ですもんね。

問題は次、 「差し替えていない広告を見て申し込んだ人との間に、紛争が起こった場合、掲載者の責任として損害賠償を請求する可能性があります」 なんだ、そりゃ? あまり法律とかに詳しくないのでわかりませんが、こんなことが可能なんでしょうか?僕が思うに、アフィリエイトではあくまで客を誘導するのであって、販売行為はあくまで広告主側が行っているのであり、購入者と我々の間には何の契約関係もないはずですよね?
ってのがあった。

キモチはよくわかる。
わずか数千円から数万円の報酬しか通常は得られないのに、ちょいとミスったら損害賠償請求のトラブルに巻き込まれるなんてかわいそうな話だと思うし、実際請求するつもりが無い(と思われる)損害賠償をちらつかせて法律に疎い個人を脅すこの企業の経営姿勢はちょっとひどいとも思う。
でも、もし本当にそう考えるのであれば、この会社の広告なんて取り扱わなきゃいい(もっといえば、こんな会社の広告を取り扱うアフィリエイト会社のプログラムになんて参加しなきゃいい)って話に落ち着くわけで、これを理由に損害賠償義務から解放されるわけじゃない。

たとえば、極論ではあるけれど、委託料3,000円/月でメガバンクの基幹システムの運用を請け負っている場合に万一システムを止めちゃったら、「委託料は月に3,000円しかもらってなかったので。えへへ」なんてのは言い訳にすらならない。
そんな契約を締結してしまった自分がいけないんだから。

同様に、広告主が相当な期間をおいて合理的な方法で周知を図ったにもかかわらず、それをすっかり忘れて既に終了したキャッシュバック等を宣伝して顧客を誘導してしまい、その結果広告主や顧客に損害を与えた場合、いくらそれがお小遣い程度の収入しか生まないアフィリエイト行為であっても、少なくとも不法行為責任は成立するんじゃないかと思う。(実際に賠償請求されるかは別として)


もっとも、アフィリエイトプログラムの参加者はほとんど個人であり、他方、広告主やプログラム提供者は企業であるということからすると、あんまりやりすぎな賠償請求は権利濫用で棄却されるって可能性も充分にあるのだろうけれど。

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なお、一番怖いのは、独自の判断(嫌な言い方をすれば「素人考え」)です。
それはたとえば、このエントリーを読んで、ふむふむ、この警告に従わなかったらやべぇな、とか思っちゃうことです。
不安に思ったら、どっかの自称会社員が昼休みにちゃちゃっと書いただけの文章なんか参考にせずに、法律相談に行くべきですよ。
まじで。

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