法務の業務に占める契約審査業務の割合はかなり多めであることが多く、ここを効率化することが法務の業務効率化の第一歩です。(企業法務の実態調査(2022年6月実施))では、「法務業務で最も時間がかかっている業務を教えてください」という質問に対して41%もの方が契約関連と回答しているようです)

そこで、ここまでの一人Advent Calendarのエントリーとは少し毛色を変えて、契約書のドラフティングを少しでも早くするためのTipsをまとめてみることにしました。
こういうのも有効だよ、みたいなTipsがあったらぜひおしえて下さい。そしてみんなで楽をしましょう。

ショートカットキーでカーソル操作をする

概要

修飾キー(CtrlとかAltとか)と特定のキーとの組み合わせに、カーソルの移動、バックスペース、デリート、改行等のよくある操作を割り当てる

やり方

AutoHotKeyを使う

  • 無変換を修飾キーにすることも可能で幅が広がる
  • 安定している
  • 高機能過ぎてセキュリティインシデントの原因になることもあり、禁止アプリ指定を受けがち
  • GUIがないのでとっつきづらい

PowerToyesを使う

  • GUIが用意されているので誰でもかんたんに使い始められる
  • Microsoft製なのでインストール許可を取りやすい&安心感
  • 不安定(特に早く入力しすぎると取りこぼしてしまう挙動が痛い)
  • 設定の自由度が低い

Macを使う

  • OSレベルでショートカットキーがサポートされているので安心安定
  • Mac版WordはBoostDraftを使えない(致命的)

メモ

  • Windowsの場合はアプリケーション側で割り振られてしまっているショートカットキーと衝突するのを防ぐためにAltを操作系ショートカットキーにするのがおすすめ。
  • なぜか日本語キーボードの一等地にあるCapsLockをAltに、無変換をCtrlにするとちょうどいい


Wordのよく使う機能に、使いやすいショートカットキーを設定する

やり方

  • ファイル→オプション→リボンのユーザー設定、という謎に深い階層にある「ショートカットキー:ユーザー設定」からよく使う機能のショートカットキーを設定/変更する。
  • Ctrl+Alt+Num+(テンキーの+キー)を押してからリボン上の機能を選択すると、その機能のショートカットキー設定に飛べるので、それも上記では機能を探せないときは便利です。

メモ

  • 設定しても使わないと無意味&ショートカットキー設定は必ず忘れてしまうものなので、体で覚えるまではすぐ参照できるメモに設定したショートカットキーを書き留めておきましょう
  • 「NextChangeOrComment(次の修正履歴かコメントの場所に移動」「RepeatFind(検索がヒットした次の場所に移動)」あたりは高頻度で使うと思うので、大抵の人は設定しておくと便利になると思いますが、基本は「よく使う(押す)機能にショートカットキーを設定する」ということです。たまにしか使わない機能なら、リボンから起動してもそんなに手間は変わらないですからね。
  • マクロを使えるようになると、蛍光ペン(ハイライト)を消すとか、変更履歴表示のON/OFFや最終版と初版を切り替える、みたいな操作にもショートカットキーを設定できるようになりますが、そのためにわざわざ覚えるのはちょっとコスパが悪いかもしれないので、まずはCtrl+Alt+Num+から始めましょう。


アウトライン設定が仕込まれたテンプレートを使う

概要

  • 条文タイトル、項・号の書式設定がアウトラインとして仕込まれたテンプレートを使って契約書を書く。
  • アウトライン設定によって、タブ/shift+タブで条文タイトル⇔1項のみ⇔複数項あり⇔号の書式を行き来でき、インデント設定の煩わしさから開放される

やり方

  • Wordのアウトライン設定から書式を仕込んだファイルをテンプレートとして使う。
  • 自分で作るのがめんどくさい方はサンプルはこちらからどうぞ


クリップボード履歴管理ツールを使う

概要

クリップボード履歴(コピーの履歴)を管理できるツールを使って、コピーの回数を減らす

やり方

Windows標準機能(Winキー+v)

  • 標準機能なのでインストール不要で誰でも使える
  • 書式も保持する
  • 順序の入れ替えができない
  • 保持してくれる件数が少ない&増やせない
  • 再起動すると消える

Cliborなどの外部ツール

  • 大量に保持可能
  • 使うと上に移動させることができるので、よくペーストするものが消えない
  • たいていスニペット管理もついてくる

BoostDraftを使う

概要


やり方


メモ

  • えっ?BoostDraft使わずに、契約書ドラフティングの効率化をするとか、優先順位おかしくないっすか?

短縮読みの単語登録をたくさん入れる

概要

  • 短縮読みの単語登録に契約書でよく使う言い回し(”(以下、「”と、”」という。)”のセットとか)を短縮読みのカテゴリで登録する

メモ

  • ショートカットと同じで使わなければ意味がないので、高頻度で書くものを登録することが第一です。
  • また、暴発を防ぐために短縮読み用のプレフィックス記号とセットで登録したり、ローマ字入力の方はアルファベットを読みにして登録するのもおすすめです。僕の場合は「?」をつけて登録してます(”?いか”とか)

番外編:入力方式をローマ字から効率的な方式に変える

概要

  • ローマ字入力は覚えやすいこととどのPCでも使える以外にはほとんどメリットがない非効率な入力方式なので、より効率的な入力方式に切り替える。

メモ

  • 僕の場合は新下駄という方式に去年の夏頃から切り替えているんだけど、まだローマ字より早く打てるようにはなってはいない。習得にめちゃくちゃ時間がかかっているので人にはおすすめし辛いんだけど、打鍵速度の限界(僕の場合は30秒で110打鍵くらい)で頭打ちになってしまっていたローマ字入力より、伸びしろは圧倒的に大きい実感はある。
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2020年春の新型コロナウィルス感染症起因の緊急事態宣言以来ずっとフルリモートで働いてきたので、もうぼちぼち4年も自宅から働いていることになる。10月に転職した会社も、(別にそれを条件としていていたわけではないのだけれど)全社フルリモートの会社なので、まだしばらくはフルリモート勤務は続いていきそう。
というわけで、今回は4年弱の経験から、フルリモートに向いている性格を書き出してみようと思う。

図々しい

フルリモートでは困っているときや弱っているときに人から気づいてもらうのが難しいので、「今、困っているので助けてください」ということが言えないと、業務的にも精神的にもパンクしてしまいがち。その意味で、遠慮せずに自分の希望を伝えられる性格の人はフルリモートには向いていると言えそう。

かわいげがある

ただ図々しいだけだと嫌われてしまうので、それを補うかわいげや愛嬌も重要。
テレカンだと仏頂面が5割ましで不機嫌そうに見えるし、slackだとぶっきらぼうな物言いが攻撃のように受けとられてしまいがちなわけで、実際の気持ちはさておきニコニコ機嫌良さそうにしていられる人はリモートではやっぱり強い。

勘ぐらない・裏読みしない

対面よりも情報量が限られるリモート下では、伝達された情報を無意識に補って膨らませてしまいがち。
「後はこっちでやっておきますね。」を「(これ以上あなたにやらせても時間の無駄なので)後はこっちでやっておきますね。(あー、無能な部下を持つと辛いわ)」って受け取ってしまうとあっという間に病んでしまいます。
たとえそれが本当に嫌味だったとしても、嫌味として受け取らなければノーダメージですからね。

責任感がある

人目による監視がないので、サボろうとすれば果てしなくサボれてしまうのがフルリモートの怖いところです。サボれると聞くと楽ができるように思えるかもしれませんが、当然アウトプットは少なくなるので評価は下がりますし、成長も止まりますので超短期目線以外ではサボって得られるいいことなんてほぼありません。
そんなことはわかっちゃいるけど、それでも労働強度は低くなりがちなので、歯止めになる程度には責任感がないとキツい気がします。

能動的に動ける

図々しさにも通じるところはありますが、フルリモートだと業務指示の密度は薄くなりがちなので、能動的に動けないと手持ち無沙汰になりがちです。
わからないことがあったら教えてくれそうな人を探して質問したり、蓄積された情報を掘り起こして読んでみたり、おもしろそうな取り組みをしているチームに声をかけてみたりと、どんどん動ける人は物理的な制約がない分あっという間に深くて広いネットワークを築いてしまったりします。

仕事最優先ではない

リモートではプライベートと仕事の境界が曖昧になりやすいので、仕事以外にやることがない人は際限なく仕事をしてしまって燃え尽きてしまいがちです。
仕事を早く切り上げてやりたいことがある人の方が、かえって長くフルリモートを続けられる気がします。
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自明のことですが、Slay the Spireは名作です。
なにしろ、おもしろいというだけでなく、マネージメントも学べてしまうのですから、最高です。

今回のエントリーでは、またもやエアロバイクを漕ぎつつSlay the Spireから学んだマネージメントの要素を振り返ってみようと思います。

今の手札で戦うしかない

スレスパは手札を出して戦うカードゲームです。つまり、手札にないカードは使えません。
そして、毎ターン持っている手札を全て使えるわけではなく、ターンごとに使えるのは配られる6枚+強化で足した枚数だけなのです。
あー今あのカードが手元にあればうまくいくのに、と思っても無意味です。だって、手元にないんだもの。
マネージメントも同様で、彼が今いてくれたらな、とか、自分が英語をスラスラ喋れたらな、とか思っても無意味です。あなたが今持っている手札でなんとかするしかないのです。

勝ちパターンは一つではない

スレスパはキーとなる強いカードを持っているだけで勝てるというゲームではなく、キーカードを活かすためのカードやレリックの組み合わせと相まって、勝ちパターンを作って始めて勝てるようになるゲームです(カードゲームは基本的に全てそうですよね)
そして、どんなカードやレリックをひくかはランダムなので、run(1ゲームの単位)ごとに勝ちパターンを変える必要があります。というか、状況に合わせて作りにいく勝ちパターンを変えないと、勝ち続けることができないのです。
マネージメントも同様で、チームの状態や外部環境に合わせてやり方を変えなければ頓挫してしまいます。自分の勝ちパターンに寄せるのではなく、今のチームにとっての勝ちパターンを見つけて、それを実装する必要があるのです。

準備がいまいちだとがんばっても勝てない

今の手札で戦うしかないということの裏返しですが、手札やポーションやレリックが揃っていない状態・勝ちパターンを作れていない状況でボスやエリートと戦っても勝てません。戦う前から負けが決まっているのです。
マネージメントも同様で、平時にちゃんと準備をしていなければ、問題が発生したときに対処することができません。平時も、後から振り返ると、常に戦前なのです。

準備しても常に勝てるわけではない

ここが大切なのですが、カードの引きが悪かったり、勝ちパターンと相性が悪い強敵と当たってしまうと、デッキ(手持ちのカードのセット)をどんなにうまく作れていても負ける時は負けます。でも、それでいいのです。負けたら次のrunを始めればいいだけなのですから。
マネージメントも同様で、どんなに準備をしていても、予想もしていなかった事態や考慮漏れや判断ミスにより、必ずどこかで酷い失敗をすることになります。でも、それでいいんです。ひとしきり振り返ったら、次のrunを始めればいいんです。

何かを得るためには何かを諦めなければならない

エリートと戦うとレリックを得られるのですが、高い確率で大きなダメージを受けるとこになりますし、エナジー(カードを使う際に消費されるリソース)を増やすレリックは必ず大きなデメリットを伴います。キャンプでカードをアップグレードしたければ、代わりに体力を回復する機会を諦めなければなりません。
これらのダメージやデメリットを負いたくないといって避け続けていると、勝ちパターンを作らないままに敵が強くなり、ジリ貧になります。
マネージメントも同様で、みんなにいい顔をしたり、抱えている組織課題を全て解決しようとすると、どこかで破綻してしまいます。何かを捨てなければ、何かを得ることはできないのです。

使い方が下手だと強いカードも使い物にならない

スレスパの攻略サイトを見ると、自分が使えないと思ってスルーしていたカードが実は相当な強カードだったことが判明することがあります。要は、カードの使い方・活かし方がわからずに「使えない」と判断していたってことです。
もちろんその逆もあって、自分の勝ちパターンにハマっているから便利に使っていたカードが、実は普通の使い勝手のものでしかないこともあります。自分の勝ちパターン自体がへぼい時が典型です。悪いのはカードではなくあなたの方なのです。
マネージメントも同様で、全然ダメだと思っていた人や、他所でそう見なされていた人が、使う人が変わると大化けするということは珍しくありません。また、あなたが優秀だと思っていた人が、単に(へぼい)あなたとの相性が良かっただけの普通の人ということもあり得るのです。

所詮はゲーム

くどくど書いてきましたが、どんなに名作であろうとスレスパは所詮ゲームの一つに過ぎず、あなたの人生ではありません。
マネージメントも同様で、所詮は会社などの特定の組織における役割の一つに過ぎず、あなたの人生そのものではありません。楽しければ楽しめばいいし、合わなければやめちゃえばいいんですよ。そんなもん。

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給与に対する不満は、抽象化すると大抵「このくらい欲しいのにこれしかもらえない」に収斂するわけですが、これって「あー、500億欲しいな〜」と寝転んで鼻ホジしながら言うのとほとんど同じことであって、その先には何もないよなと思ったので、よくある給与決定プロセスから逆算して給与を上げる働きかけをするとしたらどんな感じになるのかな、と思って考えてみることにしました。
こんな感じで書いたものなので、実際に自分で試したわけではありませんし、そもそも給与決定プロセスも5社分しか関与したことがないので的外れかもしれません。そんなわけである程度割り引いて読んでくださいね。あと、真に受けて怒ったりしないでくださいね

よくある給与決定プロセスの想定

  1. 会社から各部門に昇給予算が渡される(ターゲット料率の場合もある)
  2. 自己評価に対して部門長評価を出す
  3. 部門長評価を昇給テーブルに当てはめて理論値昇給額を算出する
  4. 昇給予算に応じた部門内の調整をして部門長素案を決める
  5. 評価会議において部門長素案が揉まれて(部署間調整もなされつつ)最終評価と昇給額が決まる
実際にこれがよくあるかパターンなのかは一旦脇に置いてください。多分それは重要なことではないので。
大切なのは、「決定プロセスから逆算する」という視点です。

ステップ1(予算からの逆算)

昇給予算やターゲット料率は、会社によって設定や天井の堅さが大きく変わります。傾向としては、儲かっている会社や成長期の会社は緩く、儲かっていない会社や安定期の会社は渋くなっているはず。
もし、あなたの会社における昇給の基本方針が、一部の例外を除いて昇給見送り、みたいなものだった場合(儲かっている会社や大企業にいる人には信じられないかもしれませんが、元気のない中小企業では普通にあることです)、この会社にいながら直近での大幅な昇給を目指すのは、流れ星に願うこととそんなに変わりはありません。
つまり、昇給という面に限っていえば、がんばるだけ無駄、ということになります。

ステップ2(一次評価からの逆算)

多くの会社では恣意的な運用やどんぶり勘定を防ぐ仕掛けとして評価と給与テーブルが紐づけられていますそのため、大幅な昇給のためには高い評価を獲得することが前提となります。
そして、もう少し解像度を上げると、評価は自己評価→部門長による評価(一次評価・二次評価)→最終評価というステップを踏んで決まるわけですが、これらの評価は、完全に独立してなされるわけではなく、前の評価を参照しつつ行われることが一般的です(この点も所属先によって違うはずなので実務を確認することをお勧めします)
前の評価が参照されるというとこは、アンカリング効果が効くということでもありますので、高い最終評価を獲得するための第一歩は、高く自己評価をつけることであるといえます。
たまに自分の真意よりも控えめな自己評価をつけておいて、「いやいや⚫︎⚫︎さんはこんなもんじゃないでしょ」と部門長評価で上方修正してもらうのを好む人もいますが、これは悪手です。昇給という面に限っていえば、下方修正されないギリギリラインを狙って高い自己評価をつけて評価社にプレッシャーをかけるのがお勧めです。大切なことなのでもう一度繰り返しますが、これは、こと昇給の獲得に限っていえば、という話ですからね。

ステップ3(給与テーブルからの逆算)

給与テーブルを見ると、昇給のためには、結局のところグレード(階層)を上げなければ非連続的な昇給はないということは理解できると思います。
そのため、昇給獲得のためにあなたがすべきなのはグレードを上げることとほぼイコールです。
そして、グレードを上げるためにすべきことは
  • 期首にグレードを上げることを希望している旨を評価者に明示的に宣言する
  • 期首にグレードを上げるために自分が獲得しなければならない能力や改善しなければならない点を具体的に評価者と握って、それを明確に達成する
の2点です。「いっしょうけんめいがんばる!」みたいなことではありません。それは大抵の人がすでにやっているので、必要なことではありますが充分ではないのです。がんばっている人の給料をバンバン上げていたらその会社はすぐに営業赤字になってしまうでしょう。
なお、期末ではダメです。評価者の意思決定に介入することができないので。
ちなみに、これをしたからグレードがすぐ上がるとは思わないようにしましょう。物事には順序やバランスというものがあり、昇格はあなた個人の働きだけを見て決められるものではないからです。ですが、毎期プレッシャーをかけ続ければ、評価者はきっと動きます。誰だって嘘つきにはなりたくはないですからね。

ステップ4(部内調整からの逆算)

予算やターゲット昇給率は大抵は各部門に割り振られるものなので、自部門に自分より高く評価すべき人がいる場合は、あなたのお鉢に回ってくる昇給枠も少なくなります。なので、今期が自分の番なのかはよく周りを観察して確認することをお勧めします。「今期は君じゃない」というときに昇給!昇給!と騒いでも、ただうるさいだけの人になってしまいます。潮目に合わせてメリハリをつけるからこそ騒いだときのインパクトは大きくなるのです。

ステップ5(最終評価からの逆算)

最終評価は、基本的には昇給が高すぎないかを検証する場です。なので、最終評価者が誰かを把握して、その人に「あー確かにこいつは昇給相当だな」と認識してもらう必要があります。そして、グレードが上がれば上がるほど、この必要性は高くなります。
最終評価者は経営者であり、PLの仕上がりについて責任を負っている人たちなので、そういう方が「こいつは昇給相当」と考えるのは、結局のところ「給与の金額よりアウトプットしている価値の方が高い」「こいつを昇進させた方が自分の仕事がやりやすくなる」みたいな実利に依るものか、または単なるお気に入りかのどちらかです。
お気に入りになれれば色々捗るのでそれはそれで目指すのもいいですが、やはり不確実性はとても高いので、正攻法である経営者に実利をもたらすことに注力するのがお勧めです。
実利というのはつまり、インパクトです。「全社でコンプライアンス研修を実施し、満足度は95%」でしたとか言ってる場合ではないのです。「コンプライアンス研修の結果、このリスクの発生数が昨年比⚫︎%になって重点リスクから外せました」が必要な成果だということです。あー大変。

おわりに

上で書いたのは、エアロバイクを漕ぎながら40分で書き下したものです。ちゃんとした文献に依拠したものではないですし、前提や想定にも不正確な面が含まれていると思います。
他方で、「自分は⚫︎円欲しいのに、会社は⚫︎円しかくれない」と嘆くのは、お菓子売り場でチョコレートをねだる子供と本質は変わらないので、そういうステージから一歩外に踏み出すのもありなんじゃないかな、とも(自分のことは棚上げして)思ったりしました。
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今から20年以上前に大ヒットした世界に一つだけの花では「ナンバーワンにならなくてもいい。元々特別なオンリーワン」と歌われていました。それとはちょっと意味は違いますが、掛け算や軸ずらしでライバルを減らしてナンバーワンをとりに行くという意味でオンリーワンも、一時期盛んにもてはやされていました。
でも、このオンリーワンというのはくせものだよな、というのが今回のテーマです。

存在価値の脆さ

人がナンバーワンまたはオンリーワンを目指すときは、その人自身の価値に着目しています。「その人が一番上手くやれる」「この人にしかできない」という具合ですね。
ただこれ、うまくいっている時はいいのですが、自分がオンリーワンはおろかナンバーワンにもなれないとわかったときには、呪詛の言葉となって我が身に降りかかってきてしまうのです。そしてキツいのは、ほとんどの人は、ナンバーワンはもちろん、オンリーワンで居続けることはできないということです。
うまく戦場を区切ってオンリーワンになれたとしても、そこに価値やニーズがあるとわかれば新規参入が起こってオンリーワンではくなりますし、その戦場が魅力的であればあるほど新参の人数もレベルも高くなり、自分の影は薄れていきます。そのときに自分の存在自体に価値があると考えている人は、足元が大きくぐらつくのを感じるはずです。
そして、さらに良くないことに、この足元の揺らぎは自分をもっと磨かなきゃ、みたいな清く正しいモチベーションではなく、嫉妬や不満のような黒い感情と結びつくものです。なにしろ、自分の存在価値を上げることは一朝一夕にはできませんから。

存在価値のことは忘れて提供価値に着目しよう

このような黒い感情から距離を置くためにどうすればよいでしょうか。
まず、人のことを気にしない、と言うことは挙げられると思います。ただこれはほとんどの場合は机上の空論でしかないんですよね。人のことを気にしない性格は確かに素晴らしいのですが、そういう人はそもそも人と自分を比較しないので、「ナンバーワン」とか「オンリーワン」みたいな基準に囚われていないはずだからです。
では、人と比較してしまう我々凡人はどうすれば良いかという話ですが、これは自分が今提供している価値に着目するしかないんじゃないかな、と思っています。
世界にどんなにすごい人がたくさんいたとしても、今、この場でこの取り組みをしているのはあなたであって、どこかにいるすごい人ではありませんし、隣に座っている自分より仕事ができる同僚でもありません。なので、現時点で自分が取り組んでいる仕事においては、外野にいるすごい人たちの存在は完全に無価値なわけです。
もちろん、すごい人があなたの業務にアサインされて、あなたが外されるということも起こりうるでしょう。しかし、そのような場合にも、新たにあなたがアサインされた仕事で価値を出すことに注力すればいいのです。あなたの代わりにアサインされたすごい人は、その人がどんなにすごかろうと、新しいあなたの仕事を担当することはできないのですから。

存在価値はいつのまにか上がるもの

ここまでしつこく「あなた自身の価値にこだわるな」と言っておいてなんなのですが、実際に存在価値というものは大切です。
昇進する時に見られるのは、建前はどうであれ「あなたがどういう人であるか」が主であり、転職の際にも同様です。
ただ、自分の上位互換のようなすごい人を見つめて、どうにもならないモヤモヤを抱えてうなだれていたり、嫉妬の炎を燃やすだけではあなたの存在価値は上がりませんが、日々の仕事で価値を提供し続けている人の存在価値は間違いなく上がっていきます。逆にいえば、あなたの前にいるすごい人は、日々あなたより大きな価値を提供していたからこそ、今、すごい人としてあなたの前にいるわけです。

残念ながら、僕を含む多くの人は、ナンバーワンはもちろん、オンリーワンになることもできないでしょう。でも、そんなこと別にいいじゃない。彼らは彼ら、僕は僕。素直に尊敬しつつ、自分の持ち場でがんばっていきましょう。
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1on1って、「あー、良かったな」と感じるときと、いまいち手応えというか、やった意義を感じられないときに大きな差があると思う一方で、人とのコミュニケーションの話なので、成功パターンを定型化することは難しいわけですが、名著「ヤフーの1on1」を頼りに手探りでやり続けるのもなんだな、と思い、どうすればそれを達成できるかの前段階として、これまで自分が「良かったな」と感じた1on1がどういうものだったかを言語化してみようと思う。

価値観を確認できたケース


人によって大切にしているものや、判断基準は大きく異なるものですが、こういった価値観のようなものは言葉や行動のようにそのまま表面に現れるわけではないので、推測はできても、そのものを直接確認する機会は少ないものです。そもそも、自分の価値観がどんなものかを明確に意識したことのない人も普通にいるはずですし、もっといえば、自分がこういう価値観に基づいて生きていると考えていたものが、単なる思い込みに過ぎなかったということすらありうると思うんですよね。
なので、対話を通じて自分が大切にしていることが何かを明確に認識できたときは、独特な満足感というか、大げさかかもしれないけれど救われたような感覚を覚えるんですよね。

考えを話すことを通じて腹が決まったケース


こういうことで悩んでいる、困っている、という話をしていただけなのに、自然と「悩んでいてもしょうがない。やるしかないんだよな。」と腹が決まることってありますよね。
自分でやると決めたことは、人からやれと言われたことよりがっちりコミットできるので、そういう腹決めの場になった1on1は、振り返ってみてもよかったな、と思うものです。
自分の進むべき道が見えたというか、トンネルを抜けて視界が拓けたような快感がある。

苦しさを分担してもらえたケース


思うように成果を出せないとか、同僚より自分が劣っているように思えてならない、みたいな苦しさは、基本的には自分ひとりに帰属するものなのですが、誰かと話すことで少し心が軽くなるものです。
そういう王様の耳はロバの耳的な吐露をできる相手との1on1は本当に心が苦しいときには意外に強い支えになってくれることがあります。別に話したからといって成果を出せるようになるわけではないですし、自分の能力が上がるわけでもないのですが、結局のところ、こういう苦しさは慣れの問題であって、あとになって振り返ると「なんで自分はあんなに悩んでいたんだ?」と不思議に思うことも珍しいことではないものです。
であれば、話した悩みを受け止めてもらえる相手と1on1をして苦しい期間を凌ぐことができたら、それは価値ある1on1だよね、と思うわけです。


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こう、思いつくままに書いてみて思ったのが、1on1というのは何を話すかはあまり重要ではなくて、本心をできる限りさらけ出すことが要諦なんじゃないか、という気がしてきました。
対話や問いかけが重要だと思っていたけれど、それらはあくまで本心をさらけ出すための仕掛け、という感じ。
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知り合いに「こんなマネージャーは嫌だ」という話を振ったところ、しばらく考えた上で、こんな感じでスラスラ〜と答えてくれました。

フィードバックに余計な一言がついてくる

余計な一言というのはつまり、「前も言ったけど」とか「そんなに難しいことじゃないでしょ」みたいな大したことのない言葉なんですが、それがさらにむかつかせるのだそうです。

できたことはスルーするのに、できなかったことを大目に見ることはない

その結果、いつもできてない人という位置付けになるのだそうです。

任せない・裁量を渡さない

気を回して何かしても、「勝手にやらないで」と言われてしまうのだそうです。

バカにする・ため息をつく

文字通り。「そんなんでよく今までやってこれたね」みたいなことを言われるそうです。

いつも不機嫌・イライラしてる

なので、気を使っていつも機嫌を取っていたそうです。

間違えを認めない・自分のミスはスルー

食い下がってミスを指摘するとカウンターで全然別件のダメ出しが返ってきて泥沼になるので、最後の方はもう何も言わずに黙るようになっていたとのこと。

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リアリティすごいですね。今の会社のマネージャーなんですか?と聞いたら、しばらく考えた後、「別れた元旦那の話。こんなに酷いマネージャーにはまだ出会ったことはないですよ。」だそうです。

ちょ!
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お仕事のマインドについて、
  • マネージャーはメンバーに自分の負担を分散し
  • メンバーはマネージャーの仕事を奪いにいく
ことを目指すのが良さそうだと思ったというお話です。

いつものように、アンチパターンで検証してみます。

メンバーに負荷を分散しないマネージャー

こう書くと良い人にも思えますし、実際にこういう動きをする方は「良い人」であることが多いのですが、これをやってるとマネージャーとしてやるべきことに手が回らなくなります。
マネージャーといっても多くの場合はプレイヤー仕事を完全に切り離すことはできないわけですが、これをメンバーに渡せるか、少し意地の悪い言い方をすると、過去の経験を活かして手っ取り早く付加価値を出せる仕事を手放せるかは、特に新任のマネージャーにとっての最初の関門になりやすいものです。
さらに一歩進めると、渡されたメンバーが気持ちよく仕事ができる渡し方というものもあって、ここら辺も心得ている上司の下で働いていると、メンバーとしても仕事が楽しくなって互恵関係が生まれたりすることもあります。まぁ、実際にはそんなにうまくはいかないんですけどね。

メンバーの仕事を奪うマネージャー

本来メンバーがやるべき業務を、自分がやった方が品質が高い・早いなどの理由でやってしまうパターンです。
メンバーの人数が少ない時は確かに自分でやった方が早いこともあるのですが、メンバーが3人を超えてくるあたりで必ずマネージャーがボトルネックになります。この状態になっても、主観的には自分がやったほうが早く終わるように感じ続けてしまうのが難しいところですね。
こうなってしまうと、任せないからできるようにならない。できないから任せられない。という悪循環の始まりです。「うちのメンバーは能動的に動かなくてさ」と言ってますが、その原因はマネージャーの方にあるのかもしれません。もしそうなら「それこっちでやっとくよ」とか言ってる場合じゃないですよ。

マネージャーの仕事に関与しないメンバー

給与も役割も現状維持のままで良いのであれば、皮肉でもなんでもなく、マネージャーの仕事になんてものに関与する必要は全くないのですが、ここら辺を実現したいのであれば、マネージャーの仕事に積極的に関与しに行く必要が出てきます。
また、これはマネージャーがやる仕事だろ?と感じることを頼まれるということは、あなたが少なくとも潜在的にはマネージャー候補だという事でもあります。なので、望んでいないのであれば、この段階でその旨をはっきり伝えた方がいいと思います。
基本的にマネージャーの給与が非マネージャーより高めなのは、マネージャーの仕事がクソめんどくさいものだからです。知識やスキルで他を圧倒できない人は、このクソめんどくささを引き受けなければなかなか給与を上げるのは難しいってことですね。

マネージャーに負荷を分散するメンバー

大前提として、マネージャーはいざという時のバッファみたいな機能も担うので、いざという時はいいんです。それは、当たり前にすべきことだから。問題は、平時にこれをやっちゃうことなんですよね。
典型的には、
  • 原案や仮説を持たずに相談する
  • 依頼された仕事を完成させない(8割くらいの出来で終わりにしちゃう)
  • 確認されるまで必要な報告をしない
とか。
マネージャーがいなくてもやっていることは、マネージャーがいる時にもやりましょう。
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今日の1人AC用のエントリーとしてマネージメント系のやつを一本予約投稿していたのですが、それを一日繰り延べてHuubleさんが主催してくださった法務の交流会について思いつくままに感想を書くことにしました。

外に出て、人と話さないと得られないものはやっぱりある

ここしばらくずっと夜の予定は入れないようにしていたので、他社の法務の方とお話しする機会もかなり限られていたのですが、やっぱり人と直接会って話さないと得られないものがあるな、ということを実感しました。
他方で、これはもっぱら僕のキャパの問題なのですが、一回でしっかり話せるのは2〜3人くらいまでだな、ということも再確認しました。
その意味で、立食パーティーとかでいろんな方と次々とコミュニケーションを重ねられる人はすごいですよね。あれは特殊能力の一種だと思う。

年齢は何の目安にもならない

昔から年齢はほとんど気にしていなかったけれど、自分が中年になり、若くて尊敬できる人とたくさん出会う機会を得たことで、ますますそう感じるようになった。
自分が若手だった頃は、すごい人はみんな歳上だったのだけれど、それは年齢を重ねたからというのが理由ではなくて、単なる年齢構成の問題であって、要は自分より年下の人数が単に少なかったというだけのことだったのこもしれない。もちろん経験による円熟という要素は間違いなくあるのだけれど、それはそれとして、すごい人は、若い頃からちゃんとすごかったのだ。

BLJは偉大だった

法務の交流会といえば、という文脈でBLJの話を複数の方から聞いて、やはりあの雑誌は、法務担当者にとって特別なものだったのだろうな、ということを実感した。
初めてお会いしたのはBLJの読者交流会でしたね、という話が通じなくなる日も近いのだと思うと、少し寂しく感じるとともに、今回のような新しい取り組みがその代わりになっていくのだろうな、とも思った。

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すぐに探せない


目当ての情報を探しだせないナレッジ管理は、当然使いものになりません。
こう聞くと当たり前のことなのですが、
・PDFにOCRをかけていない
・メタ情報が不十分/不正確
・検索精度が弱いシステム内に保存されている
・動作が遅いシステム内に保存されている
・フォルダの深いところに保存されている
みたいな形でそこそこ見かけることもあるのがこのパターンです。
変なシステムにきれいに保存するくらいなら、ファイル名の命名規則をきっちり決めてGoogleDriveに保存したほうがよっぽどマシだったりします。

優先度・重要度ががごっちゃまぜになっている


締結済み契約書のように重要度に差があまりない情報群であればほとんど気にしなくても良いのですが、玉石混交の情報を何も考えずに貯めても、そこに生まれるのはナレッジではなくゴミの山だったりしますからね。
依頼者と法務とのやり取りなんかが典型です。生のやり取りに価値があるケースはごく僅かなので、共有すべき情報を取り出して、そちらを蓄積するようにしましょう。

抽象化されていない


抽象化されていない情報は、再利用しにくい情報でもあります。
仕掛中の契約書案みたいなものが典型ですね。類似案件だからといって参考にしてみたら、交渉を経て譲歩した条項が入っていたり、個別案件特有のケアがされていたりして却って気を使う、みたいな経験は誰でも一度はしたことがあるはず。
雛形化(抽象化)して、具体的な事案から切り離すことで再利用しやすくしましょう。

余計な情報が書いてある


上記の3つは手を加えなさすぎて使えないパターンですが、逆に変に手が加わっているせいで使いづらいパターンもあります。
例えば、手順書以外の情報がたくさん書かれている手順書なんかが典型例ですね。知識をひけらかしたいタイプの人が暇だからといって作った資料に起こりがちなやつです。
目的のために必要な情報にしぼりましょう。

古い情報が残っている


情報は必ず古くなるので、古い情報が紛れ込むことは避けられません。問題は、古い情報が残り続けることです。
その原因の一つは、「古いな、これ」と気づいた人が、更新せずに閉じてしまうこと。
気づいた人が軽やかに更新できる仕組みを作って展開しましょう。更新のルールと判断者を決めるだけでOKです。判断者は別に部門長でなくてもOKだし、情報によっては担当=判断者にするのもありですよ。
そしてもう一つは、更新しづらい媒体で書いてある情報。
ナレッジ共有用途でパワポを使うのは、どうしてもその必要があるときだけにしておきましょう。情報以外に配置を気にしなければならず、ページ制限もあるので更新しづらく、情報が陳腐化しやすくなります。

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