2015年07月

最近の関心事は、どれだけ効率的に契約法務のスキルを人に伝えられるか、なのですが、その一環として契約書のスタイルガイドを作ってみたので公開します。
こちらからどうぞ

目新しい内容は含まれていませんが、既存のものは、内容が分散していたり、書き方という切り口でまとめられていなかったりと、スタイルガイドとしての使い勝手が悪いことも少なくなかったので、コンパクトにまとめたこと自体に一定の意味があるんじゃないかと期待してます。
また、水野先生のGitLawに関するエントリを読んで初めてGitに興味を持たれた法務畑の方もいらっしゃるのではないかと思いますが、そのような方に「Gitのはじめの一歩」として軽い気持ちでいじっていただく材料としても、ちょうどいいのではないかとおもってます。
→forkからプルリクまでの流れは、このエントリが分かりやすいのでオススメです。

いずれにせよ、これが最終版というわけではなく、今後も更新を続けていきたいと思っているので、お手元に似たようなガイドをお持ちの方(規模の大きな法務事務所や伝統のある法務部には、内部的にはこんな感じのガイドはあるんじゃないかと期待してます)がいらっしゃったら、差異についてご指摘いただけるとすんごく嬉しいです。

それでは!
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転職してそろそろ1年が経とうとしています。

今所属している会社は、ありがたいことに売上は右肩上がりで、しっかりと利益も出していて、きれいで先進的なオフィスに、著名なエンジニアも多数所属していることもあり、外部から高く評価していただけていることを実感する機会に出会うことが多々あります。
このことはとても素晴らしく、ありがたいことだなぁと思うのですが、同時にある種の居心地の悪さを感じずにはいられません。

わずか1年前に転職してきたばかりの僕は、このポジティブな評価の源泉である売上にも、利益にも、就業環境にも、メンバーの質にも、直接的には何も貢献していません。それにもかかわらず、イベントの集客の際や、話してみたい人に声をかける際(ランチしませんか、とか)にはこのポジティブな評価からの恩恵をふんだんにうけているのを感じますし、(今のところそのつもりは全くないけれど)もしかすると何年後かにまたすることになってしまうかもしれない転職の際にもきっと役にたつことでしょう。
こんな具合に、自分の貢献が寄与していない評価から実利を得るということは、ありがたいと同時に、なんとも居心地が悪いものなのです。

でもまぁ、今の状態はいわば対価を支払わずにサービスの提供をうけているようなものなので、これはこれでむしろ健全なのかもしれません。
というか、自分が所属している会社に対するポジティブな評価に貢献していないのに、その評価を享受することに疑問を感じなくなっちゃったらマズいじゃないですか。これじゃ、「大企業に所属していることを誇りにしている人」と何も変わらない。

というわけで、2年目以降は、自分も今の会社の価値向上にちゃんと貢献できているという実感をちゃんと持てるように、目に見える成果を出していきたいなーと思う所存です(きれいにまとまった!)

ではでは!
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前回ダブルチェックを通じたスキル継承に対する優位性をお伝えした法務版ペアプロですが、本来のペアプロと同様、ただ単に一人が契約書を作る様子をもう一人が眺めているだけでは高い効果を得ることはできません。
というわけで今回は、法務版ペアプロの進め方とコツをお伝えしたいと思います。

    事前準備
  1. 契約書の作成・修正の方法(スタンスや考え方に留まらない、具体的な手順)を教える
    自分が実際にやっている手順でOK
    教える人は事前に棚卸しをしておく必要がある(体に染み付いたことでも、わかりやすく言語化できるとは限りません)
    確固たる手順を持っていない人は、人に教える前に自分が手順を確立する方が先・・・かも・・・
  2. 法務版ペアプロの趣旨を教える人と学ぶ人との間で確認する
    ・スキル継承の手段であること
    ・質問でカットインすることにためらってはならないこと
    ・自分なりのやり方と違っても、言われた方法でやってみること(スキル継承のため)
    は必ず確認すること。

    【進め方・コツ】
  1. 学ぶ人が、自分なりに契約書の作成・修正を行う
    このステップを飛ばすと、学ぶ人の質問が薄くなってしまう
  2. 教える人がドライバー(書く人)、学ぶ人がナビゲーター(見る人)になって、契約書の作成・修正を行う。
    この際、学ぶ人は、1で作成・チェックした契約書を印刷して手元に持っておく。
    学ぶ人は、教える人の修正の意図が分からなかったら、都度質問をする。
    教える人は、考えていることや浮かんだ疑問などをできるだけ口に出す。(別の場所に書いてあるのかな・・・とか、これおかしくないか?とか)
    作成・チェックの完了後、1と2の成果物のギャップを確認し、ギャップが生じた理由を確認する
    最初に学ぶ人が作成・チェックした契約書は無駄になるが、スキル継承のために必要なコストとして割り切る。
  3. 上記2を何度か行い、学ぶ人が契約書の作成・修正の手順を概ね理解できたタイミング(概ね3〜4案件が目安)で、ドライバーとナビゲーターを交代する
    教える人は、言葉遣いに注意!
    過去の否定は、それ自体が人を傷つけてしまうことを忘れずに。
    教える人は別の作業をせず、ナビゲーターに集中すること。
    指摘は理由を必ず添えること。


なお、法務版ペアプロに限らず、スキル継承は、教える人が学ぶ人に継承すべきスキルを持っていることが当然の前提になります。
特に2で教える人が負担する工数が気になってしまうかもしれませんが、そもそもスキル継承には工数がかかるもので、この程度は必要なコストだと思っています(逆に言えば、この程度のコストもかけずにスキル継承をしようとするから、無駄にスキル習得に時間がかかってしまう)。

もし、もっといいやり方があるよ、といったアドバイスがあればぜひ教えてくださいませ〜

ではでは
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昨日のエントリーで書いたダブルチェック&フィードバックに代わるスキル伝達方法について、Twitterでこんな言及を頂きました。

そうなんです、これ、ペアプログラミングを契約書作成に適用してみたやつなんです。

一般的に、契約書作成スキルの承継は、ダブルチェックとその結果のフィードバック(DC)を通じて行われていると思いますが、契約書版ペアプログラミング(PP)は、DCが持つ以下のような欠点を補ってくれます。

・フィードバックの効果が高い
DCでは、成果物を作成してからそのフィードバックを受けるまで、短くても数十分、長ければ数日間隔が開いてしまいます。間隔が開けば、それだけ「何を考えて、何に悩んでいたか」に関する記憶が薄れてしまうので、フィードバックの効果が低減します。
これに対してPPでは、フィードバックを即時に得られるので、フィードバックの効果を最大限に活かすことができます。

・やり方を伝えられる
DCでは、チェック結果のやり取りによってスキルの承継を行うことになるので、どうやってその結果にたどり着いたかという「やり方」を伝えることはできません。
これに対してPPは、契約書を作成し、または修正する過程をつぶさに見ることができるので、「やり方」を学ぶことが可能です。

・疑問をその場で解消できる
DCでは、フィードバックをまとめて渡されるので、チェック者を捕まえて確認する程ではない些細な疑問については、そのまま放置してしまいがちです。
これに対してPPは、リアルタイムでフィードバックが渡されるので、個々のフィードバックについて都度不明点等を確認することが可能なので、疑問が放置されにくくなります。

・緊張感を持てる
DCでは、特に業務の繁忙期には、「この後ダブルチェックをしてもらえるから」「自分が見る前に別の人がチェックしているから」という甘えから、チェックが緩くなりがちです。
これに対してPPには上記のような甘えが入り込む余地はなく、それどころか後ろでつぶさに作業を見られるため、通常時以上に緊張感をもって作業にあたることができます。


次回は、法務版ペアプロの具体的な進め方やコツを書きたいと思います〜
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7月になりました。
今年も半分が終わったという事実に愕然とします。

・・・さて、先々月から、何度目かの「人に契約法務のスキルを人に伝える」ということに携わっていて、当初から一区切りの時期として設定していた6月末が過ぎたので、備忘録も兼ねて、ここで一度振り返りをしてみたいと思います。

1.ダブルチェックを、スキル伝達ツールとして使わない
今までも何度か「教育係」的な役割を任せられたことがありますが、今思うと本当に申し訳ないことに、なんとなく「とりあえずチェックしてみて」からのダブルチェックで追加修正&フィードバックを重ねる、場当たり的で非効率な方法を採ることしかできていませんでした。
でも、こんなやり方で自分が持つスキルを伝承しようとしたら、何年かかるかわかりません。というか、何年かかってもしっかりとは伝えきれないのではないかと思います。というわけで、今回は「スキルを伝えるための方法として、ダブルチェックは使わない」という方針を立てることにしました。
その代わりにやったのは、
1.自分が契約書を作ったり、修正する作業を全て後ろで見ていてもらう
2.作業をしながら「考え方」や「コツ」を伝える
3.見ていてわからないことがあったら、その場でカットインして質問してもらう
4.質問を受ける都度、作業を中断して理解を得られるまで説明をする
を何度か繰り返し、わかってきたかな、というタイミングで、今度は
1.契約書を作ったり、修正する作業を全て後ろで見る(並行して他の作業はしない)
2.作業を見ながら「考え方」や「コツ」を伝える
3.見ていて意図がわからないことがあったら、その場でカットインして質問する
4.質問の都度、作業を中断して共通認識に至るまで協議する
を繰り返す、という方法です。

2.「考え方」「やり方」を棚卸しして、検証する
教える側にとっての「守破離」というエントリーは、「人に何か教えるなら、教えることについて明確な型を持っている必要がある」と思って書いたものです。
そして今回、自分の「型」を明確にするため、契約書を作ったり修正したりするときに、どのように考え、どのようなツールを使い、どのように作業しているのかを棚卸しして、上記の1に入る前と、上記1の2において伝えるようにしました。

3.ブレない
人に何かを教えていると、どうしても「人にはこんなこと言ってるけど、自分でもできてないかも」という気後れや、「やり方はこれだけじゃないんだよな」という思いが脳裏をよぎり、どうしても断定的な言い方を避けがちになってしまいます。
でも、こういったブレって教える人の保身に過ぎなくて、教えられる人にとっては迷惑でしかないと思うんですよね。正直、「いや、これは人によるんだけどね。」とか言われても、言われた方は困るじゃないですか。
というわけで、最初に「教えたやり方がベストではない可能性はあるけど、6月末までは、とにかく教えたやり方通りにやって欲しい。」と伝え、その後は極力やり方については断定的な言い方で伝えることを心がけました。

4.期限を切る
スキルの継承は明確な終わりが見えづらいタスクないものなので、だらだら進めてしまいがちですが、効果を検証するために、いつまでに、どのレベルまでできているようになるべきか、現時点での到達度はどうかを対象者と日々確認することを意識してスキル継承に取り組みました。



ブラッシュアップする余地はまだまだ大きいですが、それでも日常業務の片手間に、しかも本来は成果物の品質向上のための施策であるダブルチェックを通じてスキルの継承に取り組んでいたときとは段違いに効率的にスキルを継承できた気がします。
とはいえまだ情報が少ない分野だと思うので、「自分はこうしてるよ」といった情報やノウハウがあれば、ぜひ教えて下さい〜。

ではでは。
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