はじめに
法務を含むバックオフィスは、一人ひとりが粒が小さめで、かつ幅広い業務を担当していることや、リアクション系の業務の割合が多くなりやすいことから、いい感じの目標を設定できないという悩みを抱える方が少なくありません。
そんな悩みを受け、以前法務の目標設定って、難しいよねというエントリーを書いたのですが(最近書いたと思っていたのにもう4年経ってた・・・恐ろしい・・・)、理屈としてはわかるけど、実際に目標を書く際にはあんまり役に立たないという指摘を受け、今回は個別の目標をどんな感じで表現すればよいかについて、もう少し具体的なアドバイスをお伝えしたいと思います。ほんとうにちょっとしたことなのですが、これをやるとやらないとでは、結構印象に差が出るんです。
評価者に響かない目標
皆さんは、今期の目標として何を設定しましたか?(多分すでに忘れていると思うので、一旦思い出してください)
無事思い出せたら、その目標がどのような要素で構成されているのかを確認してください。
私の経験からの推測ですが、目標として、「何をやるか」しか書いていない方が少なくないのでは無いかと思います。
例えば、「取締役会議事録を電子化する」とか、「●●業務のマニュアルを整備する」とか、「●●社とのM&A手続きを遺漏なく完遂する」といった具合です。(もちろん、実際にはもう少し肉付けがされた記載になっているとは思いますが)
これらの目標はそれぞれ必要なことでしょうし、目標設定でよく言われるSMARTに則っていれば、形式的にも何らまずいところは無いのですが、残念ながら評価者には今ひとつ響きません。なぜなら、あなたがその目標を達成した場合に、法務部に、ひいては会社にどんな良いことが起こるのかがまったく伝わって来ないからです。
ポイントは目的とインパクト
ではどうすりゃいいのよ、というところで出てくるのが今回お伝えしたいちょっとしたアドバイスなのですが、それは
の2点です。
まず、目的についてですが、これは文字通り「なんのためにそれをするのか」ですね。
例えば、「取締役会議事録を電子化する」であれば、ちょっと考えただけでも目的としては
といった具合に色々と思い浮かぶのですが、あなたが取締役会議事録の電子化を目標として設定した理由は何なのかを明確にすると、まず目標の輪郭がぐっとシャープになります。
もちろん、上記の目的は相当生煮えなので、これだけではちょっと物足りないのですが、例えば、「ブームに乗りたい」というちょっとふざけた目的も、最新のトレンドを取り入れることで「当社の法務部門はイケてるぞ」と候補者にアピールする材料にするという視点を加えることで、目先の業務だけでなく、採用も視野に入れていますよ、ということを評価者に伝えられるわけです。(それが響くかは会社によると思いますが、なにもないよりマシなのは間違いありません)
次に、インパクトについてですが、これは「それをしたことによってどのような影響が生じるか」です。
例えば、「●●業務のマニュアルを整備する」という目標で考えてみましょう。それによって恩恵を被るのは誰でしょうか。もしあなただけが担当する業務であれば、インパクトの範囲としては物足りないでしょうが、全社員が関与する業務であれば「お、それはすごいね」となるかもしれません。また、そのマニュアルの存在によって、どの程度業務が効率化されたり、業務品質が向上したりするでしょうか。もし、作っても誰も見ないだろうね、というマニュアルであれば、インパクトは皆無なので、目標としてそれを掲げるセンスに疑問符がついてしまうかもしれません。
このように、インパクトを明記することで、自己満足な目標を立ててしまうことを防ぐことができるのです。
具体的にどう書けばよいのか
上記を踏まえて目標を書く場合、
【目的】のために、【やること】を行う。それによって【インパクト】という効果を得る。
といった感じになります。
そして、【目的】を書くにあたっては、組織の目標とリンクさせましょう。組織の目標を達成するために自分が何をするか、という位置づけを明らかにするだけで、組織と有機的につながった目標設定ができるのです。(OKR的な発想ですが、OKRを採用していなくても組織目標と個人目標のリンクが有用であることに違いはありません。)
また、【インパクト】を書くにあたっては、【やること】と【インパクト】との間の因果関係を冷静に見積もりましょう。もし【インパクト】が物足りないのであれば、【やること】を変える必要があります。間違っても、【やること】を変えずに【インパクト】をいじってはいけませんよ。そうした瞬間、それは目標ではなく、願望や夢になってしまいますからね。
といった感じで、誰でもすぐ実践できて、かつ即効性があるので、意識していなかった方はぜひお試しください〜