アルツハイマー・ケースという映画をDVDで見た(おもしろかった。)んだけど、本筋とはあんまり関係ないミニエピソードにちょっと驚いたという話。

そのエピソードは、重要人物の悪事を暴こうとする主人公(マルセイユ在住)の「私の証言が証拠になる」といったセリフに応じて刑事が「証言なんて意味が無い」ことを示すために語ったこんな話。
ある日、母親と娘が車にはねられた。
母親は即死。娘はまだ怪我を負ったもののまだ生きていた。
だが、運転手は周りを見渡すとおもむろに車をバックさせ、娘をもう一度轢いて逃げた。
証拠の隠滅を図ったのだ。
しかし、その一部始終を12歳の子供がずっと見ていた。
彼は車のナンバーを記憶しており、有罪の決定的な証拠になるはずだった。
しかし、彼は、ナンバーの一桁分だけをどうしても思い出せなかった。
彼の記憶と、凶器となった車のナンバーが完全に一致しない。
他に証拠が無かったため、被疑者は無罪放免となった・・・

細かいことを言えば、ひき逃げで被疑者のめぼしがついているのに証言しか証拠がないなんてありえないだろ、とか、ナンバーの一致以外の方法で証言の証明力を高めることはできないのか、とか突っ込みどころはいろいろあるんだろうけど、上記のエピソードが映画の中で語られているということは、少なくとも映画の舞台となったベルギーでは、こういった処理というか考え方(車のナンバーの一桁以外が一致しただけではまだ合理的な疑いをさしはさむ余地がある)が実際にも取られているということなんだろうと思う。

翻って日本で同様の状況が発生したら、どうなるだろうか。

別に、ベルギーのやり方が優れているって言いたいわけじゃない。(むしろ上記のエピソードはいくらなんでもひどいと思う)
ただ、憲法や刑事訴訟法の授業で「疑わしきは・・・」なんて言われて失笑した経験のある多くの(元)法学部生にとっては、新鮮な驚きを感じられる一幕であることは確かだと思う。

映画としてもおもしろかったので、ぜひ一度ご覧になってください。

それでは、今日も一日がんばりましょ〜。

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1 つまらなかった。以下ネタバレ含むかも。
4 たまにある出会い
4 原題[DE ZARK ALZHEIMER]
4 またの名を「アルツハイマー・ケース」