人間関係を中の人と外の人に分けるとします。中の人というのは自分の仲間で、外の人というのは自分が相対・対峙する相手というイメージです。
依頼部門にとって、法務の人が「中の人」であることはさまざまなメリットをもたらします。例えば、早い段階で相談をしてもらえる、バッドニュースを隠さず伝えてくれる、ネガティヴなフィードバックをしてくれる、などです。
逆に言えば、「中の人」になれていない法務部門は、存在意義が危ういという言い方もできるかもしれません。なにしろ、「外の人」としては多種多様な法律事務所が存在していますからね。

というわけで、このエントリーでは、法務部門が「中の人」になるための心がけについて書いてみようと思います。

依頼者の取り組みに興味を持つ

例えば契約書の内容チェックの依頼を受けたときに、契約条件をどのように設定するのかにとどまらず、「契約締結に至る背景事情」や「どうやって儲けるのか」や「他社の似たような取り組みとどこが違うのか」といった具合に、依頼者の取り組みそのものに興味を持つことは、中の人に近づくための大切な第一歩です。
もちろん、適切な契約条件の設定のための付随情報としてもこれらの事項な重要なので、契約審査の観点で普通に確認するという方も少なくないとは思いますが、ここで言いたいのはそういうことではなく、興味を持つ、というスタンスです。意外にスタンスというのは相手にも伝わるものですからね。こういうことを言えば、興味を持っていることが依頼者に伝わるかな、みたいな下心は不要です。

コミュニケーションする場所や内容を変える

そもそも依頼者のやってるのとに興味を持てないという方もいるかもしれませんが、そういう方におすすめなのが、コミュニケーションする場所や内容を、変える、ということです。別に難しいことではなく、仕事の話を会議室やテレカンでするだけではなく、休憩室で会った時に雑談をしたり、ランチに誘ったりするだけのことでOK。唯一のポイントは、業務以外の話をする、ということだけです。
相手のことを知れば知るほど、相手のやっていることにも興味を持てるようになるのが人間ですからね。
場所が変わればいいだけなので、飲み会に行く必要まではありません(別にいってもいいですけど)

依頼者の課題に向き合う

依頼者が解決しようとしている課題を把握し、その解決に共に取り組みましょう。
課題解決の障害になっている人は、決して中の人にはなれません。むしろ、敵ですからね。
なお、これは不適切な行為に目をつぶれということではありません。不適切な行為が新たな問題を生み、依頼者の課題を増やしてしまうのであれば、それを止めるのは依頼者の課題に向き合う行動です。他方で、どっちでもいいことを指摘してみたり、ビジネスジャッジの領域にべき論で口を挟むのはやめておきましょう。

依頼者と同じ言葉を使う

営業部門や開発部門などで特有の用語が用いられている場合には、極力その用語をそのまま使いましょう。普段自分たちが話しているように話せる相手でなければ、中の人には見えませんからね。
法務以外の人にはわからなかったり、伝わりづらい用語を使わないようにすることも同じ意味で有用なのですが、逆に法務特有の言葉を正確に理解してくれる相手には、あえてそれを使うのはアリです。要は、その人を、法務の中の人にしてしまうということですね。
また、依頼部門の担当者であれば当然の前提については、法務としてもそれを前提にするということも当たり前の仕草ではありますが大切です。法務としては暗黙の了解のようなものについても念のため確認しなければならないことも多いのですが、その際もゼロベースのオープンクエスチョンで聞くのではなく、「いつものように⚫︎⚫︎と考えて良いんですよね?」という確認形式の方がベターです。

依頼者が普段使っているツールでコミュニケーションをする

依頼者が部内でslackを使っているならslackを使い、メールを使っているならメールを使うということです。
もちろん、利用しているCLMの仕様や情報集約の観点で、全てのコミュニケーションの場所を依頼者に合わせるわけにはいかないとは思いますが、そういった制約がないコミュニケーションについては、極力依頼者に合わせた方が早く中の人に近づけるはずです。

敬語を抑える

中の人同士のやり取りでは、必要以上の敬語は使われていません。それ故に、丁寧すぎる言葉遣いは「中の人」感を削いでしまうのです。
怒られたり不快に思われない程度に、敬語を減らしていきましょう。
なお、過度な敬語は、手っ取り早く頭が良い人っぽく見せるためのツールとしても使われがちなのですが、この用途での敬語の利用はもっぱら自分だけのためのものなので、すぐにでもやめた方がいいと思います。

呼び名を変える

これはなかなか難易度が高いので最後の仕上げっぽい要素と捉えた方が安全なのですが、チーム内でニックネームで呼ばれている方がいたら、しれっとそのニックネームで呼んじゃうのはかなり効果的です。
これが受け入れられたら、もうあなたは中の人といっても過言ではないでしょう。


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書いてて思ったのですが、中の人になるって一言で言うと、阿吽の呼吸ってことなのかもしれませんね。