インハウスや法務プロパーの人だけで構成されていく法務部にずっといる人は驚くかもしれませんが、世の中には法務も他部署に普通に異動したり、他部署からの異動の対象になっている会社は普通に存在しています。
でも、そんな会社の法務部の業務レベルが低いかというと、そんなことはまったくありません。むしろ、視野の広さや他部署での経験とのシナジーによって、ずっと法務だけをやってきた人より仕事ができる、みたいなケースだって普通にあるのです。要は、他職種と同様、法務という仕事も、向き不向きこそあれ、必要な移行期間を経れば普通にでやれる仕事なわけです(何でこんなわかりきったことを冒頭に持ってきたかというと、そう思われていないケースをそこそこ見かけるからです)

もちろん、他部署から異動してきた方は、法務プロパーの人に法律知識では敵いません。知識は、基本的には鍛錬の量と比例するからです。(フリーレンの世界の魔力と同じですね。)
ただ、企業内の法務業務においては、「専門性」の優劣が総合的な人材の優劣に与える影響はそこまで大きくはないのでは、という気もするのです。もう少し正確に言うと、最低限わかっていて欲しい、というレベルをクリアさえしていれば、あとは信頼できる情報源にあたってしっかり調べる姿勢や、わからないことを専門家に確認して結論を導けるコミュニケーションのうまさや、人の指摘を虚心坦懐に聞ける素直さの方が、ずっと影響度は大きいように思うのです。

消費者保護法制とプライバシー保護法制の変化にキャッチアップしつつ、会社法上の組織再編に関する手続きも抑え、M&A指針の勘所やシステム開発訴訟に関する裁判所の判断傾向を把握する、なんてことを日々大量の契約審査その他の業務を捌きながらやるのはもう無理なわけで、「専門性」には必ず偏りが出ることになります。
法務担当者が持つ偏った専門性を価値の源泉とすると、「できるところはできる」という価値しか発揮できません。もちろん、異なる専門性を備えた多様な人材を確保できる大企業では、力技でこの偏りを均すことはできるのでしょうが、多くの会社では現実的ではありません。

そこで、分野を絞って積極的に専門性を外注する、という動きが重要になってきます。わからないから聞くのではなく、この分野については、解決済みの問題を除いて自己判断をしないという割り切りをするのです。
ポイントは、聞くべきことを聞く、ではなく、解決済みの問題以外は聞く、ということです。なぜなら、聞くべきことを正しく仕分けるためにも専門性が必要性になるからです。

なお、この動きを現実的なものとするためには、ある程度阿吽の呼吸が効く専門家との関係も必要になります。確認頻度が上がる分、(専門家の手によれば)サクッと終わる問題は、文字通り秒殺していただけないと回らないからです。

このような使いやすい専門家ネットワークを築ける能力は、限られた人数で多様な問題に対処しなければならない法務にとっては自分自身のスキルアップよりずっと会社に対する貢献度は高いのかもしれません。また、個人視点でも、陳腐化しづらい分、ポータビリティやサステナビリティも高くなりそうです。

これまでも、年1しかなく、かつ特殊性が高い株主総会対応ではそのような機能を法律事務所に外注している会社は少なくなかったと思いますし、個人情報保護関連や消費者保護法関連でも社内に詳しい人がいない場合は自己判断を避けるという動きは既にあると認識していますが、どちらかというと「できないからしょうがなく」という必要悪的な対応と捉えられているのではないかと思います。
しかし、法務としての機能を拡充するために、今の法務の能力に合わせて、柔軟かつ積極的に専門性の外注を行っていくことを推進してもいいんじゃないかな、ということを今は考えています。