ピョートル・フェリークス・グジバチさんは、0秒リーダーシップにおいて、リーダーシップとは何かという問いに対して
  • リスクを取って自ら行動を起こすこと
  • 他者に影響を及ぼし、変化をもたらすこと
という答えを提示しています

そして、このリーダーシップは、チームリーダーだけが持てば良い者ではなく、チームのメンバー全員が持つべき(持っていることが好ましい)マインドセットであると指摘しています。

言われてみれば確かに・・・とは思うものの、「リーダー」という言葉に引きずられて、無意識にリーダーシップはリーダーが備えるべき資質として捉えていたので、この定義は目から鱗でした。

そもそも、部門横断プロジェクトや活発な兼務により、ポジションとしてのリーダーの役割がよくわからなくなっている会社は増えているのではないかと思います。メンバーが自分以外からも仕事をバンバン振られる状況下ではリーダーがメンバーの状況を掌握して業務のアサインをするといった従来の機能を果たすことは困難になることは避けられません。

また、リーダーをハブとしてチームを作るやり方だと、リーダーがボトルネックになってしまってパフォーマンスが上がらないという現象が生じているチームも少なくないようにも思います。正解がわかりやすい業務においては効率的だったトップダウン型・ファクトリー型の組織は、誰も正解を知らない中で試行錯誤を繰り返す動きには不向きです。そんな中、自分でもよくわからないことについて判断を求められ、メンバーが対応できない業務(その多くはリーダーだってうまくやれるとは限らない業務)を巻き取り、疲弊しているのが今のリーダーだと思うのです。

上記の様な状況下では、リーダーシップはメンバー全員が持つべきマインドセットであるという0秒リーダーシップの指摘は救いのようにも聞こえます。ですが、リーダーシップがリーダーのものではなくなったら、リーダーは何をすればよいのでしょうか。

もしこの問いに答えを出せないのであれば、リーダーという存在はメンバー全員がリーダーシップを持てないチームにおかれる必要悪、又はだめなやつを見張る看守のような存在ということになってしまいそうです。ですが、それではあまりにさみしいなと思って少し考えてみた結果、これからの時代におけるリーダーは、「リーダーシップの模範を見せる存在」「リーダーシップの伝道師」として存在意義を発揮していくのがいいんじゃないかという結論に至りました。
全員がリーダーシップを備えているチームは理想ですが、現実にはそんな状態を作ることは簡単ではなりません。そこで、リーダーは、このチームにいるメンバー全員が備えていてほしいリーダーシップとは、こういうマインドセットなのですよ、ということを、その行動や発言で示し、メンバーをその方向に導いていく存在と考えるのです。

業務をアサインすることも、メンバーのお悩み相談にのることも、難しい業務を引き受けることも必須ではありません。
リーダーがすべきことはただ一つ、メンバーをリードすることだけなのですから。