カテゴリ: 雑記 【おしごと関係】

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2026年は日本の契約法務のやり方が大きく変わる1年になるだろうと予想しているので、1年後の答え合わせを楽しみに、柄にもなく未来予想をしてみようと思います。

1.人間の役割は「書く」から「指示」「調整」にシフトする
AIの契約書ドラフティング能力は、chatGPT5.2/Gemini3の時点で、既に標準的な法務担当者のレベルに相当程度近づいており、対応できる幅の広さを加味すると既に凌駕しているとも言える状態にあります。
2026年は当然ながら今よりもAIの契約書ドラフティング能力は高くなるので、必然的に契約書はAIにドラフト又は修正させ、人間はその仕上げをする、という役割分担が主流になります。
その結果、これまでは「書く」能力が重視されていたところ、「(AIに)指示する能力」の重要度が高くなります。
また、AIの進化とともに、AIが乗っかるツールも劇的に進化し、契約審査は、ツールの支援を受けながら行う場合とそうでない場合とで生産性と品質に大きな差が出るようになります。

2.プレイブック/契約審査基準の拡充の優先度が上がる
前述のとおり、AIの契約書ドラフティング能力は人間を凌駕するわけですが、自社特有の前提条件の折り込みを行えるようになるわけではありません。
そこを補うのがプレイブックということになり、これまでは人間が参照するものだったプレイブックは、AIに食わせるものという位置づけに変わると同時に、「あったらいいよね」から「なくてはならない」ものに昇格します。なにしろ、これがないとAIによるドラフティングの精度が上がらないわけですからね。
この流れに乗って、プレイブックに関するセミナーや記事が今以上に増えるのではないかと思いますが、現時点では



の2本を読めば十分だと思っています。
なお、本来はCLMがここらへんを支援すべきだと思っており、ずーーーーーーーーーーっとその期待をお伝えしているつもりなのですが、今の調子だと2026年もここは実現しないだろうな、とも思っています。(なので、予想としては入れられない)
必要な情報は、全部中に入っているのにね…

3.契約書の精度は総じて高くなる
今でも目を疑うようなひどい品質の契約書は少なくありませんが、それはひとえに最初にドラフトした法務担当者の力量不足によるものであるはずなので、ここがAIによって底上げされることで、「一目でわかるひどい契約書」を見かける機会は、「以前からこの雛形でやってます」系を除くとかなり少なくなります。
他方、パッと見はおかしくないが、条件設定が実態に合っていなかったり、大切な条件が抜けているような契約書は今後も残り続けます(わかっている人による適切な調整が入らなかった契約書)

いかがでしょうか。
1年後なので固めの予想にとどめたつもりですが「そうはならない」や「これもありそう」などがあればぜひ教えて下さい。
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このエントリーは、2024年の法務系Advent Calendarの24日目です。(メリークリスマス!)
前日はYujin Genさんの「トランザクションロイヤーからスタートアップインハウスロイヤーになって気づいたこと」でした。




2024年は日経の記事の影響もあってか、例年以上に法務業務のアウトソーシングが話題に上ったように感じます。
そこで、今年のAdvent Calendarのエントリーでは、法務業務のアウトソーシングを通じて得られる効果について書いてみようと思います。

なお、本稿では、法務業務のアウトソーシングを以下の3パターンに分類します。
パターンA:法務部門からの案件ベースの依頼に対応してもらうパターン
ALSPやLPOなどの言葉が出回る前から行われていた法律事務所への依頼も、大きな意味では法務業務のアウトソーシングに該当すると考えています(なので、法務業務のアウトソーシングは別に新しい話題ではない)

パターンB:事業部等の依頼部門からの依頼に直接対応してもらうパターン
一定の領域に限定して直接外部の法律事務所が対応する窓口を設けたり、アサインした案件に外部の法律事務所が直接対応するのがこのパターンです。
日経の記事が取り上げたのはこちらのケースで、最近流行りのパターンでもあります。

パターンC:法務部員と同じような位置づけで能動的に対応するパターン
出向で実現することもあれば、「インハウスサービス」として業務委託で提供されることもあります。(出向はアウトソーシングには通常含まないと思いますが、インハウスサービスと機能が共通するため、便宜的にここに含めます)
存在を知らないとなかなか選択肢に入ってこないパターンですが、うまく活用できると法務部門の機能を劇的に高めることができます。

以下、上記のパターン分けを前提に、効果とコツとFAQについて書いてみます。

法務業務のアウトソーシングを通じて得られる5つの効果


専門性・知識の補充


A〜Cのいずれのパターンでも期待される、リソース拡充と並ぶアウトソーシングの最も基本的な機能の一つです。カバー範囲が広すぎて対応が難しい国外の法制度や、目まぐるしく変化するためキャッチアップしきれないプライバシー法制など、社内のリソースでは対応しきれない専門領域を、アウトソーシングによってカバーする動きです。
この効果を得るためには、専門性を持つ法律事務所・弁護士を知っていることと、必要なときに依頼できるだけの関係性があることが必要になります。
そのような知見やコネクションがないと、とりあえず大手に、ということになりがちですが、大手だから十分な効果を得られるともいえないのが難しいところ。(しかも、コストは高くなりがち)

リソースの拡充


パターンBとパターンCで得やすい効果です。
従来からの法律事務所と法務部のお付き合いで多かったパターンAでは、法務部門の省力化にはあまり効果がありませんでした。この悩みに応えるサービスとして、法務部門の業務の一部を肩代わりしてくれるサービスが登場し、普及したことにより、近年、法務業務のアウトソーシングに注目が集まるようになってきました。
本来内部でやるべき業務を肩代わりしてもらえるということは、慢性的な人材難に苦しんでいることの多い法務部門にとっては魅力的ですが、この効果を十分に享受するためには契約審査基準(プレイブック)の整備や雛形の整備などの事前準備が必要になります。それらがないと、対応方針について確認されることが多くなって手離れが悪くなってしまったり、法務部門による対応と毛色が違う対応をされてしまって依頼部門の不信を招くことに繋がりかねません。
また、特にパターンBにおいて、法務部門の空洞化につながるのでは、という危惧を示されることがありますが、アウトソーシング先は独自の判断で動くわけではないので、各メンバーに属人的に帰属している暗黙知を形式知化することを促すという意味では、むしろ空洞化とは逆に作用するような実感を持っています。社内のメンバーに属人的に知見が蓄積されている状態の場合、その人が辞めたらすっぽり空洞化してしまうという意味では、潜在的な空洞化リスクは高い状態であるということは意識する必要がありそうです。

リソースの安定供給


パターンBとパターンCで得やすい効果です。
社内のメンバーは退職する可能性もあれば、様々な理由で休職したり、休みをとることもあるため、稼働が不安定です(だからアウトソーシングよりも劣っている、というわけではなく、あくまで性質の問題です)が、その点、アウトソーシングは、「法律事務所」という単位で抽象化されていることが多いため、担当者の退職や休みによる影響を考慮する必要があまりありません。
会社に所属するメンバーは、会社の業績が傾くと将来の不安から転職してしまう可能性もありますが、アウトソーシング先からは、支払いが滞るようなことがない限り、取引を中断されることがないという意味でもリソース供給の安定性は雇用よりも高い場合が少なくありません。
また、パターンBとCは、法務部員の休職や退職の穴を一時的に埋める施策としても機能するという意味でも、リソースの安定供給に寄与してくれます。ただ、「リソースの拡充」の項目でお伝えしたとおり、事前の準備なくアウトソーシングを始めてもすぐには十分な効果を得ることは難しいため、リソースの問題が顕在化・深刻化する前に、アウトソーシングできる素地を作っておくということも、マネージャーの重要な役割の一つになってくるのではないかという気もしています。

コストとリソースの最適化


パターンBとパターンCで得やすい効果です。
雇用と異なり、繁忙期にだけ依頼し、閑散期には費用発生を抑えるといったことが可能でなアウトソーシングは、採用よりも機動的に供給リソースを調整できるため、急な需要の変化にも比較的迅速に対応する事が可能です。
雇用だけであれば、余剰人員を抱えないよう、慢性的な人材不足を許容しがですが、アウトソーシングを組み合わせることで、ちょうどいいリソース供給を実現しやすくなります。
単純な時間単価の比較ではなく、コストの柔軟性に着目すると、コストパフォーマンスに対する評価も変わってくる場合もあるのではないかと思います。

スタンダードの引き上げ


パターンCで得やすい効果です。
契約審査に長けたメンバーがいないチームや他社経験の少ない一人法務が回している法務では、契約審査の業務レベルを高めにくいというネックがあります。
そのような課題感がある場合には、熟練の外部人材に法務メンバーとして稼働してもらうことで、相対的な自社の法務のレベル感を把握でき、もしそれが低い場合には改善に向けて動き出すことが可能になります(こんなに回答が速いのか!こんなにリサーチが深いのか!など)。そして、実際に改善に向けて動く際には、その方向性や具体的な施策についてアドバイスを受けることも可能でしょう。
なお、パターンBでは、依頼者とアウトソーシング先のやり取りに接する機会が限定されるので、この効果を直接得ることは難しいのですが、高品質な対応をしているアウトソーシング先の横でずさんな仕事はしづらいという意味では、間接的に業務品質を向上させる効果は望める場合もあるのかもしれません。

よりアウトソーシングの効果を得るためのコツ


複数のサービスをトライアルし、比較検討する


法務部門が抱えている課題や依頼の傾向、使っているコミュニケーションツールやCLMツールなどによって、適したアウトソーシング先は全く異なるのですが、実際にお付き合いをしてみるまでは、合う合わないはわかりにくいものです。
そのため、月額10万円程度のトライアルを2〜3ヶ月回してみて、期待した通りのパフォーマンスを発揮していただけるのかや、ストレスなくやり取りできるのかを確認し、もし合わなければ別のサービスを試すといった動きが効果的です。

フィードバックをする


「先生へのご依頼」というスタンスではなく、二人三脚で法務業務を回していくパートナーというスタンスで、より良く業務を遂行するために必要なフィードバックは積極的かつ具体的ににしていきましょう。改善できることであれば、依頼側としては驚くほど迅速に改善していただけることがあります。
プロに対する敬意を持ってコミュニケーションする必要があるのは当然ですが、だからといってフィードバックをオブラートに包む必要はありません。同時に、希望に沿った対応をしてもらったときにも、何がなぜよかったのかを具体的に伝えるポジティブなフィードバックも、アジャストの為には有用です。

能動的・積極的にオンボーディングをする


自社の契約審査基準・プレイブックを整備したり、コミュニケーションツールやCLMのアカウントを発行したり、ファイルをスムーズに共有する仕組みを用意したり、依頼部署の特徴を伝えるなど、新たにメンバーを採用したときのようにオンボーディングをすることで、スムーズな立ち上げが可能になります。
言い方を変えると、アウトソーシング先のオンボーディングを通じて、メンバーを採用したときのオンボーディングのやり方が洗練されるという副次的な効果も得ることができます。
また、多くのサービスでは、サービスの利用開始時にキックオフミーティングを実施しますが、その際にアウトソーシングを通じて解決したい課題(特にリソース不足なのか、スキル不足なのかは重要です)やスピード感などの期待レベルを明確に伝えることも重要です。


法務業務のアウトソーシングのFAQ


アウトソーシングは、コストが割高なのでは?


依頼する業務内容がアウトソーシング先の専門分野の場合は、処理に要する時間がそうでない人と比べて非常に短くなるので、絶対的なコストは抑えられる場合もありますが、アウトソーシングサービスのタイムチャージの単価は、インハウスを含む大抵の法務部員の概ね2倍〜5倍のため、基本的にはコストは割高にはなります。
そのため、人件費との比較ではなく、社内にない知見を活用できる、必要になったときだけ起用できる、社内では確保できない量のリソースを利用できる、というメリットを買うという観点で、そのメリットに見合ったコストなのかを見ていかないと判断を間違えてしまうことがあるという点には注意が必要だと思います。

アウトソーシング先は社内の事情に疎いので、ワークしないのでは?


アウトソーシング先は社内の事情に疎いということは基本的には*間違いなく、なんのケアもしなければその点が障害になりうるということは、抽象的にはその通りだと思います。他方で、契約審査においておさえておかなければ業務に支障が生じる「社内の事情」として、一体どのようなものがあるかについては具体的に明らかにしたうえで判断する必要もあると思います。
もし、契約審査基準・プレイブック・オンボーディングマニュアルといった形で、上記のような情報がすでに明文化されている場合は、その情報をアウトソーシング先に渡すことでスピーディにキャッチアップしていただくことができますし、もしそのような明文化が行われていない場合は、まずは「社内の事情」の明文化をしたうえで、それが本当に社外の人材に対応できないことなのかを具体的に検討することをおすすめします(アウトソーシングだけでなく、新たなメンバーを迎える際にもオンボーディングツールとして使えるので無駄にはなりません。)。なお、法務業務のアウトソーシングに対応していることを明示的に打ち出して法律事務所は、すでに業務の遂行方法や社内の立ち位置が多様なクライアントから業務を受託していることや、インハウス経験の豊富な弁護士が対応することなどにより、法務部門が考える以上に「社内の事情」に対する柔軟性は高く、また高い解像度で理解もしている印象です。

* 創業者の同級生の弁護士が創業から支援しているとか、法務部員の入れ替わりにより、最古参のメンバーよりもアウトソーシング先のほうが「社歴」が長いといったケースでは、例外的に従業員よりもアウトソーシング先のほうが社内の事情に精通している、ということもありえます。

どんなタイミングが始めどき?


以下の理由から、アウトソーシングする必要が生じてからではなく、できるだけ速いタイミングで小さく始めることをおすすめします。
理由1:最初からうまくいくとは限らない
特にパターンBやCについては、アウトソーシング先にしっかりパフォーマンスを発揮していただくためにはオンボーディングがある程度必要であり、オンボーディングのために必要なポイントは、やってみなければ見えないものでもあります。
その意味で、ある程度余裕があるタイミングでアウトソーシングを始めてみて、何が不足しているのか、何があればより良くなるのかの肌感覚を掴んでおくことが重要です。

理由2:選定先と自社との相性が良いとは限らない
アウトソーシング先の性質は様々であり、画一的な業務を大量かつ安定的にさばくことに長けた法律事務所もあれば、高い専門性を活かして特定領域の業務品質をジャンプアップさせてくれる法律事務所もあります、その差異は小さくなく、また外から見えづらいものです。
そのため、まずはトライアルをしてみて、お互いのニーズと供給がどの程度マッチしているかを確認するとともに、相性がいま一つの場合には機動的に別のアウトソーシング先を試すといった動きが必要になります。

理由3:依頼したいときに依頼できるとは限らない
従来から行われていたパターンAに加えて、2025年以降は、パターンBとパターンCの法務業務のアウトソーシングも急速に広まっていくことが見込まれます。もし、供給が需要拡大の波に追いつかないと、しばらくは(特に評判の良い法律事務所には)依頼したくても受けてもらえない、またはインハウスロイヤーの経験があったり、アウトソーシング対応の経験豊富な弁護士をアサインしてもらいにくくなるといったことも予想されます。
そのような状況になるかは不透明ではありますが、まずは取引を開始しておくことは予防措置としては有用です。

理由4:料金プランは比較的柔軟
パターンBで同一類型の契約審査を大量に外注するような場合でなければ、大抵のサービスでは月額10万円のような従来の顧問料と同等の基本料金から契約できるプランが用意されており、小さいコスト負担でアウトソーシングを開始することは十分に可能です。しかも、大抵の場合はLegal Techサービスと異なり契約期間の縛りは緩めです(そもそも民法651条もあるわけですし)
まずは小さく始めて、導入効果を実感できたり、より効果的な起用方法の勘所が掴めたところで本格的に利用するという動きが許容されやすいということは、特にアウトソーシングに不慣れな法務部にとっては大きなメリットとなります。

アウトソーシング先に頼ってしまうと、社内のメンバーのスキルアップに繋がらないのでは?


パターンBで特定の領域の契約類型をすべて外注する場合や、パターンCで特定の領域に関する依頼を外部のメンバーに委ねる場合にこのような不安が生じます。
確かに、実務経験を積む機会がアウトソーシング先に奪われてしまう以上、アウトソーシングに出した業務についてのスキルアップの機会は少なくなることは避けられません。ですが、そのようなスキルを社内の人員が保有する必要があるのかについては一考の余地はあるとも思います。
社内のリソースは有限である以上、何かを辞めなければ、新しい何かを始めることはできません。現状も、将来予測としてもリソースが潤沢であるような会社でない限り、なし崩し的に「やりきれなかった…」として何かを諦める状態を避けるためにも、辞める対象と辞め方を能動的に選択する必要はあるのではないかと思います。




最終日の明日は、keibunibuさんです〜
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今回は、「チャレンジしようというけれど、みんながみんなチャレンジできるわけでもないよね」という話を書きます。

チャレンジにはコストがかかる

まず最初に強調したいのは、チャレンジはタダではない、ということです。
チャレンジは、既存の運用に異を唱えることから始まるわけで、必然的に慣れない仕事を伴いますし、うまくいかない可能性も高いものです。普通の人は、そんなことをわざわざやろうとするわけがありません。
つまり、放っておいてもチャレンジングな仕事をしたいと思っているのは一部の変な人に限られるというのがスタート地点となるはずです。

他方で、現状維持は、基本的には緩やかな衰退と同義なので、誰かがどこかのタイミングでチャレンジをしない限り、組織は徐々にダメになっていきます。そこで、組織を預かる者としては、メンバーに何とかしてチャレンジしてもらおうと躍起になるわけですが、発破をかけるだけではなかなかうまくいきません。
これは、個人にチャレンジのコストを負担させつつ成功の果実だけもぎ取ろうとしているからと考えると当たり前のことではあります。
つまり、メンバーにチャレンジをさせたかったら、チャレンジのコストを軽減する必要があるわけです。

チャレンジのコストの軽減方法

では、チャレンジのコストを軽減するためには具体的にどうするのが良いのでしょうか。

失敗を歓迎する

ポイントは、失敗を「許容」するのではなく、「歓迎」するというところです。失敗を許すのではなく、失敗を喜ぶ。もっといえば、失敗していないことに危機感を覚えるくらいでちょうどいい。
人は誰しも失敗なんてしたくはないので、歓迎すると言われても進んで失敗する人なんてそうそういません。
チャレンジの結果の失敗を目にした時にかける一言目は、「ナイスチャレンジ」の一択です。

チャレンジする際の仕組みを作る

チャレンジする際はここで宣言をしようとか、新しい取り組みを始める時はこのシートでリスクアセスメントをしようといった具合に、チャレンジの際の型や仕組みを作りましょう。
型や仕組みがあれば、最初の一歩を踏み出しやすくなります。

変化することを当然のこととする

変化によって得られるメリットは未確定のものであり、変化によって失われる便益は確定的です。また、人は失うものの価値を、得るものの価値の2倍高く評価する生き物なので、変化自体に異議を唱える人の主張の方が、変化を起こそうとする人の主張より正しく聞こえるものです。
この変化に対する抵抗に抗うためには、変えるか否かの是非を問わず、いつ、どう変えるかのが良いかだけを問うことが有効です。
変えないという選択肢を持たないことで、変化に対する許容度は格段に上がります。今がベストでない限り、変えないという選択肢が最善であることはありませんし、今がベストであるわけはないのです。

みんながチャレンジすべきというわけではない

他方で、どんなに負荷を軽減しても、チャレンジのコストはゼロにはなりません。なので、みんながみんなチャレンジをしなければならないと考えるべきではありません。できる人ができるタイミングにやればいいのです。

例えば、家族の介護や育児等で業務の負荷を重くしたくない方にチャレンジを求めるのは明らかに不適切でしょう。また、そもそも不確実性の高い業務への耐性という向き不向きの問題もありますからね。


ただ、自分でチャレンジできない人にもできる貢献があります。それは、他人のチャレンジのコストを上げない、ということです。
簡単なことです。邪魔しなければいいんです。もっといえば、応援してあげられたら最高です。
当事者でない立場から出されるアドバイスより、ずっとずっと役に立つことでしょう。
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契約法務に携わったことのある方は誰しも、「何でダブルチェッカーの先輩が気付けたあの穴を自分は見落としてしまったのか」という情けなさを抱いたことがあるのではないかと思うのですが、今日書くのはその話です。

人が持つ注意力の総量は決まっていると仮定する

実際どうかなのかはよくわかりませんが、「人が持っている注意力の総量は決まっている」「穴の発見のためには一定量の注意力が必要」と仮定すると、この現象に説明がつくように思います。
どんなにがんばっても投入できる注意力の総量は変わらず、そしてその総量が契約書の隅から隅まで行き渡らせるには足りない場合、契約書のどこかに注意力の投入不足の部分が生まれます。そして、そこに穴があると、発見できずにスルーしてしまうことにつながるわけです。

なぜ先輩はあなたが見落とした穴に気づけるのか

ダブルチェッカーの先輩があなたの見落としたミスに気づけたのは、あなたより注意力量が多かったからとは限りません。
最も大きいのは、先輩はダブルチェッカーであり、あなたがいったん注意力を消費して整えてある程度綺麗になった成果物を確認しているので、変なところで注意力の損耗が発生しないという点です。逆にいえば、先輩が穴に気付けたのは、その穴以外を綺麗に整えたあなたの功績でもあるのです。
また、先輩が優秀な方である場合は、注意力を投入すべきポイントをあらかじめ把握していることで注意力の集中投下が可能になり、あなたが見落とした穴を発見できたということもあるかもしれません。
いずれにせよ、あなたが無能だったからではなく、ダブルチェッカーとの関係とはそういうものだと思うのです。

注意力のリセットを意識する

一旦仕上がった後一晩寝かして翌日再度チェックしてから返す、という対応はよく行われていることだと思いますが、実際そうすることでミスを発見できることはままあります。これは、時間を置くことで注意力の減耗がリセットされるからだと考えるとしっくりきます。
印刷して読むとミスが見つかるのも同様に、媒体が変わることでリセットが起きます。このようなリセットのトリガーを持っておくことで、擬似的にダブルチェックを行うことが可能になります。
ポイントは、2回見ることではなく、注意力のリセットを発生させた後に再度確認することなのです。

注意力の無駄な損耗を避ける

注意力の総量を意識し始めると、インデントを整える、表記揺れを避ける、正確さだけでなく読みやすさも考慮する、といったことがなぜ必要なのかも肌で理解できるようになります。これらができていないと、注意力が無駄に損耗してしまうのです。ただ単に、綺麗な方がいいよね、みたいなお気持ちの問題ではないのです。
他方で、これらの事項に注意力を消費してしまっては本末転倒なので、みんな大好きBoostDraftやGVA assistやLAWGUEなどに肩代わりさせるのが良いのだと思います。

プレイブックや雛形を注意力効率を上げるために使う

プレイブックは人による判断品質や判断内容のブレを抑制する機能を、雛形は効率化機能を重視して備えられていることが多いと思いますが、いずれも注意力が無駄に損耗するのを避ける機能も発揮してくれます。
つまり、軸が定まっているから、その軸からの距離が離れているポイントに注意力を集中的に投下できるようになるのです。

まとめ

一晩寝かしてもう一度見ましょうとか、形式を整えましょうとか、雛形を整備しましょうといったよくある親父の小言を注意力を切り口に整理してみたら意外にしっくりくる感じになりました。
注意力の無駄打ちを避けつつ、穴の発見に至らないような注意力の小出しで無駄に損耗するのもやめにして、注意力の的確な集中投下をやっていきましょう!
これが、言うは易し、行うは難しってやつですね!
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インハウスや法務プロパーの人だけで構成されていく法務部にずっといる人は驚くかもしれませんが、世の中には法務も他部署に普通に異動したり、他部署からの異動の対象になっている会社は普通に存在しています。
でも、そんな会社の法務部の業務レベルが低いかというと、そんなことはまったくありません。むしろ、視野の広さや他部署での経験とのシナジーによって、ずっと法務だけをやってきた人より仕事ができる、みたいなケースだって普通にあるのです。要は、他職種と同様、法務という仕事も、向き不向きこそあれ、必要な移行期間を経れば普通にでやれる仕事なわけです(何でこんなわかりきったことを冒頭に持ってきたかというと、そう思われていないケースをそこそこ見かけるからです)

もちろん、他部署から異動してきた方は、法務プロパーの人に法律知識では敵いません。知識は、基本的には鍛錬の量と比例するからです。(フリーレンの世界の魔力と同じですね。)
ただ、企業内の法務業務においては、「専門性」の優劣が総合的な人材の優劣に与える影響はそこまで大きくはないのでは、という気もするのです。もう少し正確に言うと、最低限わかっていて欲しい、というレベルをクリアさえしていれば、あとは信頼できる情報源にあたってしっかり調べる姿勢や、わからないことを専門家に確認して結論を導けるコミュニケーションのうまさや、人の指摘を虚心坦懐に聞ける素直さの方が、ずっと影響度は大きいように思うのです。

消費者保護法制とプライバシー保護法制の変化にキャッチアップしつつ、会社法上の組織再編に関する手続きも抑え、M&A指針の勘所やシステム開発訴訟に関する裁判所の判断傾向を把握する、なんてことを日々大量の契約審査その他の業務を捌きながらやるのはもう無理なわけで、「専門性」には必ず偏りが出ることになります。
法務担当者が持つ偏った専門性を価値の源泉とすると、「できるところはできる」という価値しか発揮できません。もちろん、異なる専門性を備えた多様な人材を確保できる大企業では、力技でこの偏りを均すことはできるのでしょうが、多くの会社では現実的ではありません。

そこで、分野を絞って積極的に専門性を外注する、という動きが重要になってきます。わからないから聞くのではなく、この分野については、解決済みの問題を除いて自己判断をしないという割り切りをするのです。
ポイントは、聞くべきことを聞く、ではなく、解決済みの問題以外は聞く、ということです。なぜなら、聞くべきことを正しく仕分けるためにも専門性が必要性になるからです。

なお、この動きを現実的なものとするためには、ある程度阿吽の呼吸が効く専門家との関係も必要になります。確認頻度が上がる分、(専門家の手によれば)サクッと終わる問題は、文字通り秒殺していただけないと回らないからです。

このような使いやすい専門家ネットワークを築ける能力は、限られた人数で多様な問題に対処しなければならない法務にとっては自分自身のスキルアップよりずっと会社に対する貢献度は高いのかもしれません。また、個人視点でも、陳腐化しづらい分、ポータビリティやサステナビリティも高くなりそうです。

これまでも、年1しかなく、かつ特殊性が高い株主総会対応ではそのような機能を法律事務所に外注している会社は少なくなかったと思いますし、個人情報保護関連や消費者保護法関連でも社内に詳しい人がいない場合は自己判断を避けるという動きは既にあると認識していますが、どちらかというと「できないからしょうがなく」という必要悪的な対応と捉えられているのではないかと思います。
しかし、法務としての機能を拡充するために、今の法務の能力に合わせて、柔軟かつ積極的に専門性の外注を行っていくことを推進してもいいんじゃないかな、ということを今は考えています。
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世の中には、転職者が転職先で孤立しないようにするためのtips(現職を落とす形での前職との比較は避ける、とか)や、早く成果を出せるようになるためのコツ(キーマンを特定しよう、とか)を読む機会はあるのですが、心を守るという軸での話はあまり見かけないな、と思ったので、3年に一度転職するkataxさんに、この点について再度お話をお伺いすることにしました

こんにちは。転職してそろそろ3ヶ月ですが、お仕事の調子はいかがですか?

こんにちは。
業界が変わったこともあり、慣習がわからない、相場感をつかめないという難しさは日々感じています。ただ、チームメンバーがみんないい人なので、難しさを感じつつも日々楽しくやれてます。


それは何よりです。
ところで、会うたびに名刺が変わるので名刺交換をする意味がないと言われるほど節操なく転職しているkataxさんですが、転職による環境の変化に馴染むのはもうお手のもの、という感じなのでしょうか?


いえ、全くそんなことはないです。さすがに緊張することはもうありませんが、転職直後はパフォーマンスは毎回ガクンと落ちるのでできない自分と否応なく向き合う羽目になりますし、人間関係もリセットされるのでその再構築もしなければならず、心の負荷は毎回かなり重いものを感じています。


そうだったんですね。では、転職直後の心の負荷はどのようにかわしているのでしょうか?

正直、そういうものだと思って首をすくめて体が新しい環境に馴染むのを待つしかないのだろうとは思います。とはいえ、そういているうちにバリバリ働いている周りの同僚に比べて自分は何をやっているんだ…という思いが首をもたげてきちゃうのが怖いところではあります。そして、焦って塹壕から飛び出したところに砲弾が直撃して瀕死、みたいな。
他方で、いつまでも塹壕の中でうずくまっていると、「なんだこいつ?使い物にならんぞ」ということになるわけで、結局はバランスなんですけどね。


どうやってバランスを取っているのですか?

まずは、焦らないことです。焦った人は判断ミスをしますからね。
そして、焦らないために重要なのは、自分が首をすくめながらもやれていることに着目することだと思っています。


やれていること、ですか?

そうです。
先ほどお伝えした通り、転職直後は誰しもたいていパフォーマンスが大きく落ちるものです。なので、転職前はもっとやれていたのに、とか、自分は持ってできるはずと思ってしまいがちなのですが、これは焦りそのものですよね。
なので、今日できたことに着目するんです。そして、明日できるようになることを積み上げていく。
塹壕の底でうずくまっているだけでなく、少しずつ安全な顔の出し方を学んで反撃していくイメージです。


理屈としてはわかりますが、うまくいくものですか?

まぁ、確かに、こんなことをいわれて「確かに!」とすぐに納得するのは、金持ちになる壺とかがんが治る浄水器を買わされるリスクが高いタイプだけで、普通の人は「そうは言っても…」ってなりますよね。
でもですよ。だからこそ、意図的にそうする必要があると思うんです。
こう考えればうまくいく、ではなく、塹壕から飛び出そうとする自分を押し留め、塹壕の底でうずくまる自分を奮い立たせるために、無理やりそう考えるんですよ。

あと、もう一つ重要なのは、できる同僚と自分を比較しない、ということですね。


といいますと?

転職者、特に即戦力枠で入ってきた方の中には、自分がチームで最も仕事ができる人でなければならないと気負っている方が一定割合でいらっしゃる印象です。
そういう方は、チーム内で最も仕事ができる人と自分を比べてその差を見ることになりますが、それだと差分が圧倒的すぎるんですよね。


そして、その圧倒的な差に怯んでしまうということですね?

そうです。もちろん、壁は高い方がいいと言った感じで果敢に挑めるマッチョな方はそれでもいいのですが、僕を含む多くの普通の人は卑屈になってしまったり、競争心が変な形で発露して微妙な空気をチームにもたらしてしまったりしがちです。

そもそも、まともな会社は転職者がすぐに100%のパフォーマンスを発揮することなんて期待していないので、最初からトップを目指す必要なんてないんですよ。


では、転職者は何を目指せば良いのでしょうか

一つ目は、いいやつだと思ってもらうことだと思います。
こいつを塹壕の中で死体にさせたくない、とテーマメンバーに思ってもらえる人は、自然とな穴倉から引き上げてもらえますからね。

もう一つはチームに具体的な価値をもたらすことだと思います。
たくさんでなくても、トップレベルでなくても、独自性がなくてもいいんです。来てくれて良くなったね、楽になったね、と思われるくらいのところをゴールにするだけでいい。


なるほど、そのくらいならやれるかもしれません。
そろそろお時間だと思いますので最後に一つだけ良いでしょうか?

もちろんです。


今回、塹壕のメタファーでがんばりましたが、正直、あれ、イマイチでしたよ。
それでは、今日はありがとうございました。

あ、ありがとうございました…



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日々漫然と業務をしてしまうことのないよう、法務としても提供価値に着目して業務にあたろうという話を聞くことがままあるのですが、誰に対して価値を提供しようとするのかで話が噛み合わないことってあるよね、という話を書きます。

依頼者への価値提供

依頼者が法務に求める価値には大体3つくらいの段階があると思っています。
1段階目は、手続の充足
2段階目は、安心
3段階目は、壁打ち
そして、この段階は移行するものではなく、上に積み重なるものです。段階が進めば要求も高くなっていくイメージですね。

かお、この3段階は、法務だけがどうこうという話ではなく、依頼者と法務の信頼関係や依頼者側の意識に大きく左右されるので、進んだ段階にあるから偉い、みたいなものではなく、段階に合った価値提供をしないと空振りになっちゃうよという話でしかないということは初めにお断りしておきます。


では、それぞれの段階について少し詳しく見ていきましょう。

手続の充足

法務に見せないと契約を締結できない、上司から「法務の意見を聞け」といわれた、みたいなルールや指示を充足することが依頼者の目的となっている段階です。
この段階では、依頼者に対して最も効くのはスピードとシンプルな結論です。多少杜撰な回答でも早い方が喜ばれますし、条件が端折られて正確性を欠く場合でもシンプルでわかりやすい結論の方が評価されます。
この段階では「法務としてそれでいいのか」みたいなことを言ってもあまり意味はありませんし、だからといって、これを法務の仕事だととして身につけてしまうとより進んだ段階にある場所では使い物にならない人材になってしまうのが怖いところです。

安心

よくわからない法的な判断や契約書の記載について、法務に見せることで安心したいという段階です。
ここから実質的な存在意義が生まれ始め、法務に見せることが必須でない場合にも声がかかるようになります。
この段階では、依然としてスピードが最重要ですが、それに加えて具体的で現実的な代替案を出せることも大切になってきます。「ここが問題です」で終わったら安心を買えませんし、ゼロリスクのために相手に受け入れられることがなさそうな代案を出して、あとは事業部の判断で、と返すだけのも同様です。

壁打ち

依頼者がより良い結論に辿り着くための検討パートナーになる段階です。
この段階では、法務の知見を活用して、依頼者が実現したいことを実現できるサポートができるか、依頼者にその効果を実感させられるかがポイントになります。
「法務に相談することじゃないとは思うんだけど」から始まる相談(書面の提出場所ってどこでしたっけ?みたいな質問ではなく)が来るようになったらこの段階に到達している可能性があります。

経営者に対する価値提供

経営者との関係では徐々にレベルアップする段階ではなく、以下のような要素の組み合わせというイメージを持っています。

事業部門の負荷軽減

捺印や契約書チェックのような瑣事から事業部門を解放することを求めているパターンです。
この要素を重視する経営者に対しては、当然ながら事業部門の負荷をどれだけ軽減できたかが意味を持ちます。
それは法務の仕事ではありません、といって仕事を仕分けていると、たとえそれが正論でも無能者の烙印を押されかねないので注意が必要です。

情報のハブ

法務に聞けば事業部門の情報が大体わかる、という状態に利便性を感じてくれるパターンです。
法務は、適切に機能していると管理部門の中では最も事業に関する情報が集まることに加え、当事者ではないので報告がねじ曲がったり隠蔽される恐れが小さいことから、「あれどうなった?」を聞く先として便利というわけです。
この要素を重視する経営者に対しては、実際に法務に情報が集まっていることと、それが部門長に適切に集約されていることが重要です。他方で、それができているからこの機能を期待されるという面もあるのでニワトリと卵みたいな面はあるわけですが。

全社のリスクマネージメント

法務が本来果たすべき機能を正しく期待してもらえている幸せなパターンではあります。ただ、契約書をチェックしたり訴訟に対応したり取締役会事務局を運営するだけではほぼこの機能を発揮することはできないのも辛いところです。
他方で、いろいろな方にお話を聞いても、大抵は「経営者が法務に期待するのはリスクマネージメントである」という回答が返ってくるのもまた事実なので、ここはがんばるしかないんでしょうね。

【番外編】何も期待してない

なんとなくうちもそろそろ、とか、面接にたまたまそれっぽい人が来たから、みたいな理由で法務が設置され、それ故に特になんの期待もされていないというパターンです。
こんなことあるんでしょうかと思いますが、他社の法務の方のお話を聞くとそうとしか考えられない、みたいなケースは実際あるのが怖いところですね。現代の怪談です。
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だいたい3年に一度転職する法務の人といえば?
そうです。kataxさんです。
今回は、そんなkataxさんに、転職先を決める際の軸についてインタビューをしてみました。


kataxさんの質問箱には転職について質問がきていますが、転職先を選ぶ軸としてkataxさん自身はどんなポイントを判断軸を置いていますか?

僕にとっての最重要ポイントは、そこで働きたいと思えるか、です。そして、そう思うに至る理由は色々なパターンがあります。
たとえば、事業に興味がある場合もあれば、選考過程でお会いする人の魅力がそう思わせることもありますし、会社の綺麗なオフィスに魅力を感じることだってあります。最後のは、自分でも全然本質的ではないとは思うのですが。


給与は重要ではない?

あ、給与もめちゃくちゃ重要です。ただ、給与で行き先を決めるというより、今回の転職でクリアしているべき水準を超えていないと選択肢から外れるという位置付けでの重要性ですね。とはいえ、その水準も、現状より下がらないみたいな緩いものですが。


いいなと思った会社からの給与提示がイマイチの時は交渉しますか?

内定後応諾前という報酬提示のタイミングは候補者サイドの交渉力が最も高くなっているので、言えば上げてもらえることも結構多いのですが、これをやると、給与テーブル的に違和感のある場所に給与設定がなされることになりかねないので、避けるようにしてます。
それより、選考時に「御社に査定いただいた報酬額をご提示いただきたいです」と伝えて、最低ラインより査定が低かったら折り合わなかったんだな、と諦めるようにしてます。


「給与テーブル的に違和感のある場所に給与設定がなされる」というのはどういう状態ですか?

給与査定というのは、どんぶり勘定ではない多くの会社ではグレード評価と高い行為になるわけですが、年収500万円相当のグレードだなと評価された際に、600万円の希望を出されても、グレードを上げるわけにはいきません。とはいえ目の前の人は採りたい。
そういう時に、多くの会社では調整給というグレード外の報酬を加算して辻褄を合わせにいきます。これが、給与テーブル的に違和感のある場所に給与設定がなされている状態です。


調整給でも辻褄が合っているなら良いのでは?

入社直後は問題ないのですが、その後の昇給判断の際には、調整給の存在が「この人は査定より高く報酬設定されてますよ」というシグナルになることは避けられないと思うんですよね。
そもそも、普通に査定したら希望金額を下回ったということは、給与テーブル全体があなたの想定を下回っているか、評価者の応募者に対する要求レベルが高すぎる可能性が高いわけで、そういう会社と入口の給与交渉で頑張っても、持続的な昇給は難しいような気がするんですよね。もちろん、3年に一度転職するつもりならそれでもいいのかもしれませんが(笑)


逆に、とても高い給与が提示されても決定打にはならない?

そもそも複数の内定をいただいた際に、提示された給与が大きく違ったという経験をしたことがないので想像になってしまいますが、強く影響を受けるものの、決定打というか、それだけで行き先を決めるということにはならないと思います。
そもそも、怖くないですか?そんなの。なんでそんなに違うの?誰かと間違えてない?みたいな。


最初におっしゃっていた、そこで働きたいと思えるか、についてもう少し教えてください。
だいたいどのタイミングでそう感じるのでしょうか。

たいていは一次面接のときです。そこでピンときたらそれが先入観になっちゃうだけなのかもしれませんが、話してみて合わないな、と思うことももちろんあります。
自分が候補者としてそう感じた経験から、面接でお会いするときの態度にはより一層気をつけるようになりました。


そこで働きたいと思うポイントはどこにあるのでしょうか

年齢によって変わってきた気がします。
若い頃は楽しそうかや、色々経験できそうな環境かみたいな自分視点の要素だったり、オシャレな設備やナイスな福利厚生のような即物的な要素で決めていたところがありますが、最近は、そこで自分が役に立てるかが最重要ポインになっている気がします。


入社前に役に立てるかをどうやって判断しているのですか?

最近はもう普通に求人に応募することはあまりなくなっていて、たいてい元同僚から「そろそろでしょ?次はうちでやらない?」って声をかけられて話を聞く、みたいなパターンがほとんどになってきているので、声をかけてくれた人に組織課題を聞いて判断材料にしてます。
これはリファラルではない案件だったのですが、求人の背景をお伺いしたら明らかに自分ではない人を採用した方が良いだろうと思った案件で、「それ、自分のような流しのマネージャーではなく、こういう属性の人をとった人が絶対いいと思いますよ」と面接で話したこともありますからね(笑)


あ、そろそろエアロバイクが終わる時間ですね。
最後に一言、他職種から法務に転職することを希望される方にお願いします。

なぜかわからないのですが、この属性の方からご質問を頂くことが多いので、共通する要素をお伝えしますね。法務に限らず他職種からの転職で最も大変なのは、当たり前ですが入口です。
とにかく法務の入り口を潜ることに、最初だけは注力しましょう。給与や環境の改善はその次からでも遅くないです。
ただ、心を壊してしまうと「その後」の難易度がちょっと上がってしまいますので、面接の時に感じた違和感は大切にしてください。面接の時に感じた悪い予感や違和感は、たいてい現実化しますからね。


本日はありがとうございました

ありがとうございました。
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人間関係を中の人と外の人に分けるとします。中の人というのは自分の仲間で、外の人というのは自分が相対・対峙する相手というイメージです。
依頼部門にとって、法務の人が「中の人」であることはさまざまなメリットをもたらします。例えば、早い段階で相談をしてもらえる、バッドニュースを隠さず伝えてくれる、ネガティヴなフィードバックをしてくれる、などです。
逆に言えば、「中の人」になれていない法務部門は、存在意義が危ういという言い方もできるかもしれません。なにしろ、「外の人」としては多種多様な法律事務所が存在していますからね。

というわけで、このエントリーでは、法務部門が「中の人」になるための心がけについて書いてみようと思います。

依頼者の取り組みに興味を持つ

例えば契約書の内容チェックの依頼を受けたときに、契約条件をどのように設定するのかにとどまらず、「契約締結に至る背景事情」や「どうやって儲けるのか」や「他社の似たような取り組みとどこが違うのか」といった具合に、依頼者の取り組みそのものに興味を持つことは、中の人に近づくための大切な第一歩です。
もちろん、適切な契約条件の設定のための付随情報としてもこれらの事項な重要なので、契約審査の観点で普通に確認するという方も少なくないとは思いますが、ここで言いたいのはそういうことではなく、興味を持つ、というスタンスです。意外にスタンスというのは相手にも伝わるものですからね。こういうことを言えば、興味を持っていることが依頼者に伝わるかな、みたいな下心は不要です。

コミュニケーションする場所や内容を変える

そもそも依頼者のやってるのとに興味を持てないという方もいるかもしれませんが、そういう方におすすめなのが、コミュニケーションする場所や内容を、変える、ということです。別に難しいことではなく、仕事の話を会議室やテレカンでするだけではなく、休憩室で会った時に雑談をしたり、ランチに誘ったりするだけのことでOK。唯一のポイントは、業務以外の話をする、ということだけです。
相手のことを知れば知るほど、相手のやっていることにも興味を持てるようになるのが人間ですからね。
場所が変わればいいだけなので、飲み会に行く必要まではありません(別にいってもいいですけど)

依頼者の課題に向き合う

依頼者が解決しようとしている課題を把握し、その解決に共に取り組みましょう。
課題解決の障害になっている人は、決して中の人にはなれません。むしろ、敵ですからね。
なお、これは不適切な行為に目をつぶれということではありません。不適切な行為が新たな問題を生み、依頼者の課題を増やしてしまうのであれば、それを止めるのは依頼者の課題に向き合う行動です。他方で、どっちでもいいことを指摘してみたり、ビジネスジャッジの領域にべき論で口を挟むのはやめておきましょう。

依頼者と同じ言葉を使う

営業部門や開発部門などで特有の用語が用いられている場合には、極力その用語をそのまま使いましょう。普段自分たちが話しているように話せる相手でなければ、中の人には見えませんからね。
法務以外の人にはわからなかったり、伝わりづらい用語を使わないようにすることも同じ意味で有用なのですが、逆に法務特有の言葉を正確に理解してくれる相手には、あえてそれを使うのはアリです。要は、その人を、法務の中の人にしてしまうということですね。
また、依頼部門の担当者であれば当然の前提については、法務としてもそれを前提にするということも当たり前の仕草ではありますが大切です。法務としては暗黙の了解のようなものについても念のため確認しなければならないことも多いのですが、その際もゼロベースのオープンクエスチョンで聞くのではなく、「いつものように⚫︎⚫︎と考えて良いんですよね?」という確認形式の方がベターです。

依頼者が普段使っているツールでコミュニケーションをする

依頼者が部内でslackを使っているならslackを使い、メールを使っているならメールを使うということです。
もちろん、利用しているCLMの仕様や情報集約の観点で、全てのコミュニケーションの場所を依頼者に合わせるわけにはいかないとは思いますが、そういった制約がないコミュニケーションについては、極力依頼者に合わせた方が早く中の人に近づけるはずです。

敬語を抑える

中の人同士のやり取りでは、必要以上の敬語は使われていません。それ故に、丁寧すぎる言葉遣いは「中の人」感を削いでしまうのです。
怒られたり不快に思われない程度に、敬語を減らしていきましょう。
なお、過度な敬語は、手っ取り早く頭が良い人っぽく見せるためのツールとしても使われがちなのですが、この用途での敬語の利用はもっぱら自分だけのためのものなので、すぐにでもやめた方がいいと思います。

呼び名を変える

これはなかなか難易度が高いので最後の仕上げっぽい要素と捉えた方が安全なのですが、チーム内でニックネームで呼ばれている方がいたら、しれっとそのニックネームで呼んじゃうのはかなり効果的です。
これが受け入れられたら、もうあなたは中の人といっても過言ではないでしょう。


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書いてて思ったのですが、中の人になるって一言で言うと、阿吽の呼吸ってことなのかもしれませんね。
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2020年春の新型コロナウィルス感染症起因の緊急事態宣言以来ずっとフルリモートで働いてきたので、もうぼちぼち4年も自宅から働いていることになる。10月に転職した会社も、(別にそれを条件としていていたわけではないのだけれど)全社フルリモートの会社なので、まだしばらくはフルリモート勤務は続いていきそう。
というわけで、今回は4年弱の経験から、フルリモートに向いている性格を書き出してみようと思う。

図々しい

フルリモートでは困っているときや弱っているときに人から気づいてもらうのが難しいので、「今、困っているので助けてください」ということが言えないと、業務的にも精神的にもパンクしてしまいがち。その意味で、遠慮せずに自分の希望を伝えられる性格の人はフルリモートには向いていると言えそう。

かわいげがある

ただ図々しいだけだと嫌われてしまうので、それを補うかわいげや愛嬌も重要。
テレカンだと仏頂面が5割ましで不機嫌そうに見えるし、slackだとぶっきらぼうな物言いが攻撃のように受けとられてしまいがちなわけで、実際の気持ちはさておきニコニコ機嫌良さそうにしていられる人はリモートではやっぱり強い。

勘ぐらない・裏読みしない

対面よりも情報量が限られるリモート下では、伝達された情報を無意識に補って膨らませてしまいがち。
「後はこっちでやっておきますね。」を「(これ以上あなたにやらせても時間の無駄なので)後はこっちでやっておきますね。(あー、無能な部下を持つと辛いわ)」って受け取ってしまうとあっという間に病んでしまいます。
たとえそれが本当に嫌味だったとしても、嫌味として受け取らなければノーダメージですからね。

責任感がある

人目による監視がないので、サボろうとすれば果てしなくサボれてしまうのがフルリモートの怖いところです。サボれると聞くと楽ができるように思えるかもしれませんが、当然アウトプットは少なくなるので評価は下がりますし、成長も止まりますので超短期目線以外ではサボって得られるいいことなんてほぼありません。
そんなことはわかっちゃいるけど、それでも労働強度は低くなりがちなので、歯止めになる程度には責任感がないとキツい気がします。

能動的に動ける

図々しさにも通じるところはありますが、フルリモートだと業務指示の密度は薄くなりがちなので、能動的に動けないと手持ち無沙汰になりがちです。
わからないことがあったら教えてくれそうな人を探して質問したり、蓄積された情報を掘り起こして読んでみたり、おもしろそうな取り組みをしているチームに声をかけてみたりと、どんどん動ける人は物理的な制約がない分あっという間に深くて広いネットワークを築いてしまったりします。

仕事最優先ではない

リモートではプライベートと仕事の境界が曖昧になりやすいので、仕事以外にやることがない人は際限なく仕事をしてしまって燃え尽きてしまいがちです。
仕事を早く切り上げてやりたいことがある人の方が、かえって長くフルリモートを続けられる気がします。
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