カテゴリ: 雑記【利用規約】

こんにちは。
突然ですが、師匠、商法総則参照し賞賛を素早く3回口に出して言ってみてください。
どうでしたか?

じつはこれ、難しいのは「総則」のところだけなんです。
難しいように見えて、実はかんたんということ、世の中には結構たくさんあるみたいですよ。


えー、さて、タイトルのとおり、今回のテーマは「登録不要の無料サービスに関する利用規約」についてです。

登録不要の無料サービスと言うのは、たとえばニュースサイトとか、お天気情報サイトを想定しているわけですが、これがなんでわざわざブログで取り上げるようなテーマになるかと言うと、このようなサービスは、ユーザーから明示的な同意を取るチャンスが基本的にはない、という特徴があるからです。(だからこそ、気軽に利用でき、ユーザーのすそ野を広げやすいわけですが。)

この点について、先日開催された利用規約ナイトVol2のパネルディスカッションで「ユーザーから利用規約に対する許諾を取らなくても利用規約によって拘束できるような方法はないか」という質問を頂き、また先日の長い名前のイベントでもまた同様のご質問がありました。

ご存知の通り、契約は意思の合致によって成立する法律行為なので、ユーザーからの明示的な同意を取れないとなると、「利用規約によってユーザーを拘束する」=「ユーザーとの間で利用規約を内容とする契約を締結する」ということは、とても難しいということになります。
そのため、利用規約ナイトVol2での回答も「原則として、同意を取らなきゃユーザーを拘束できません」であり、先日の長い名前のイベントでの回答も「同意を取らないと厳しいが、同意を取れないのであれば、ユーザーの目につきやすい場所に利用規約を常に表示しておくことでなんとか・・・」といった感じだったと記憶しています(完全に僕の記憶頼りの再現なので、勘違いや誤解をしていたらごめんなさい。)

この回答は、契約の原則に照らせば当然の結論ではあるのですが、その一方で、どうしても違和感を拭い去ることができません。
そんなわけで、今日のお昼にお弁当を食べながらもう一度考えてみたところ、どうやら違和感の源泉は、「登録不要の無料サービスって、そもそもユーザーとサービスプロバイダの間に何の契約もないんじゃね?」ということに思い至りました。
これはつまり、何の契約もなければサービスプロバイダはユーザーに対して契約責任は負わないので、まっとうなウェブサービスを展開しているだけであれば、ユーザーに対してもともと何の責任も負ってない(だから、利用規約なんて不要)と言うことになるんじゃないか、ということです。

「仮にユーザーに対して法的責任を負わないとしても、事実上のクレームを捌くために利用規約はあった方がいいんじゃないか」、というご指摘もあるかもしれませんが、そもそもユーザーに対して何の責任も負っていないのであれば連絡先を明らかにする必要もないわけで、連絡先を隠しちゃえばクレームどころかユーザーから何の連絡も受けずに済んでしまいます(それをサービスプロバイダが望むことかはわかりませんが・・・)

といったところで、お昼休み終わりでーす。




【追記】
Twitterで以下のご指摘を頂きました。ご指摘の通りだと思いますので、本エントリー中の「登録不要」は、「ユーザーから同意を得るチャンスの無い」に読み替えていただければと思います。
ご指摘ありがとうございました!



このエントリーをはてなブックマークに追加

みなさん、お元気ですか?
僕は元気です。

さて、昨日(4/10)に開催された「シード・アーリースタートアップのためのウェブサービスを支える「利用規約」の基本」という、おそろしく長いタイトルのイベントに、昨日パネリストとして参加してきました。

タイトルに「シード・アーリースタートアップのための」と書いてあるのに、参加者層は明らかに違う属性のかっちりとした皆様で、利用規約ナイトに続いて「どうしてこうも法務系の人がたくさん参加されるのだろうか(別に呼んでないのに)」という疑問を感じながらのスタートとなったわけですが、考えてみれば、利用規約についてまとまった知識を得られる場って、今までほとんどなかったんですよね。

AZX雨宮さんのセミナーを拝聴したり、利用規約本を書いたりしている中で少し麻痺していましたが、僕自身、利用規約やPPに関するまとまった情報がどこにも存在しておらず、法務として「これでいいのかなぁ」という疑問に常に不安を抱きながら業務にあたっていたわけで、僕だってパネリストとしてお声掛けいただいていなければ、普通に(呼ばれてないのに)参加していたと思うのです。


ところで、当日出た話題の中で
アプリの売買が行われる際、異なるアカウント間でアプリを移動させるためには、移行元アカウントでのアプリの取り下げと移行先アカウントでのアプリの申請を行うしかなく、ダウンロード数等の実績がリセットされてしまうが、これに対して有効な手立てがないか

というものがあり、後で皆さんと意見交換しようと思っていたのにすっかり忘れていたので、ここでこの点について考えたことを書いてしまおうと思います。

まず、GooglePlayはよく知りませんが、少なくともAppStoreにおいては、ランキングに載るか載らないかということは売り上げを大きく左右するとても重要な要素です。その意味で、現在ランキング上位にいるアプリについてアカウント移動のために取り下げ&再申請をするのは合理的な選択とは言えないと思います。
加えて、レビューサイトやブログ等に貼られているアプリダウンロードページへのリンクもおそらく無効になってしまうでしょうから、なおさらです。
となると、既にランキング上位のアプリや、レビューサイト等で取り上げられているアプリについては、アプリの売買の実態を「著作権&ソースコード譲渡とAppStoreへの掲載維持&申請代行&収益の分配等に関する業務委託」契約とするのがいいんじゃないかなぁと考えるわけです。
この方式では、「〇〇によるiPhone App」の欄に譲渡先のアプリを表示できないという問題もありますが、大した問題ではないと思います。

逆に、まだランキングに載っておらず、大手レビューサイトに取り上げられてもいないようなアプリについては、普通に取り下げ再申請方針で譲渡をすればいいんじゃないかと思います。

といったところで昼休みが終わったのでばいばーい。

このエントリーをはてなブックマークに追加

1.はじめに
BtoCの契約には消費者契約法という法律が適用され、その消費者契約法の中には「消費者に一方的に不利な条件は無効になる」という規定が存在しています。
そして、無効とされるケースの一つとして、事業者の不法行為や、事業者が義務を果たさなかったことによって消費者に生じた損害の賠償責任について
A. 全部免責する条項
B. 事業者側に故意または重過失があるケースで一部を免責する条項
が定められています。(消費者契約法第8条1項1号〜4号

この消費者契約法の制限は、仮に消費者が同意していたとしても覆せない性質のものであるため、避けて通ることはできないのですが、ウェブサービスにおいては多くのユーザーから薄く広く売り上げを上げるモデルを採ることが通常です。そこで、事業者としてはユーザーによる損害賠償請求からは極力逃れようとがんばるわけです。
そこで今回のエントリーでは、有名どころのウェブサービスがどうやって消費者契約法に対応しているかについて、実例を見ていこうと思います。

2.他社の実例
GREEhttp://gree.jp/?mode=doc&act=misc&page=terms
9-2 (略)また、ユーザーは、グリーに故意または重過失がある場合を除き、いかなる場合においても、(i) かかる損害賠償の対象となる損害が、グリーの責に帰すべき事由に起因して現実に発生した、直接かつ通常の範囲の損害に限定されること、および(ii)グリーがユーザーに対して賠償する損害の累積額は、グリーが本サービスに関連してユーザーから支払を受けた金銭の合計額を上限とすることに同意します。

GREEのスタンスは、
1.損害賠償の範囲を直接損害・通常損害に限定
2.ユーザーが支払った金銭の合計額を損害賠償の上限として設定
という限定をかけつつ、
3.上記1&2の限定は、故意または重過失がある場合には適用しない
という構造で、消費者契約法第8条1項の制限ギリギリを狙っています。
消費者契約法にヒットする部分を除いて制限をかけるというオーソドックスなスタイルですが、GREEは基本無料のサービスであり、無料でGREEを利用しているユーザーにとっては本項が「A. 全部免責」となってしまう点がどう判断されるのかやや気になるところではあります。


mobgehttp://yahoo-mbga.jp/page/kiyaku/index2.html
第12条
4 本規約において当社の責任について規定していない場合で、当社の責めに帰すべき事由によりモバゲー会員に損害が生じた場合、当社は、1万円を上限として賠償します。
5 当社は、当社の故意または重大な過失によりモバゲー会員に損害を与えた場合には、その損害を賠償します。

mobageのスタンスは、
1.DeNAの故意または重大な過失により会員に損害を与えた場合には損害を賠償する
という原則を5項で規定しつつ、
2.DeNAの責任について規定がない場合は1万円を損害賠償の上限として設定
という制限を4項でかけてます。
5項が「DeNAの責任について規定がある場合」に該当するため、GREEと同様の消費者契約法にヒットする部分を除いて制限をかけるというオーソドックスなスタイルと言えると思います。
しかし、
・DeNAの規約の12条4項が除外対象としているのは「規約に当社の責任について規定がない場合」であって5項以外も上限が外れてしまう場合が文理上はあり得るという点、
・12条5項は故意・重過失時の責任限定を明示的には排除していないため、他の条項に損害賠償責任の免責が規定されていた場合に「故意・重過失時に責任が限定されている」と解釈される可能性が文理上はあり得るという点
で、やや危うさを感じました。

LINEhttp://line.naver.jp/terms/ja/
14.2. 当社は、本サービスに起因してお客様に生じたあらゆる損害について一切の責任を負いません。ただし、本サービスに関する当社とお客様との間の契約(本規約を含みます。)が消費者契約法に定める消費者契約となる場合、この免責規定は適用されません。
14.3. 上記14.2.ただし書に定める場合であっても、当社は、当社の過失(重過失を除きます。)による債務不履行または不法行為によりお客様に生じた損害のうち特別な事情から生じた損害(当社またはお客様が損害発生につき予見し、または予見し得た場合を含みます。)について一切の責任を負いません。また、当社の過失(重過失を除きます。)による債務不履行または不法行為によりお客様に生じた損害の賠償は、お客様から当該損害が発生した月に受領した利用料の額を上限とします。

LINEは、GREE及びmobageと異なり、
1.最初に全部免責としたうえで、
2.消費者契約法が適用される場合に上記の全部免責を外し、
3.さらに消費者契約法が適用される場合において、
 (1)過失(重過失を除く)によって生じた特別損害を賠償対象から外し、
 (2)損害発生月の利用料の金額を損害賠償の上限額として設定
するというスタイルを採っています。
LINEも基本無料なので、3(2)について、無料で利用しているユーザーにとっては事業者の全部免責になってしまうという点がやや気になります。

Yahoo! Japanhttp://docs.yahoo.co.jp/docs/info/terms/chapter1.html#cf1st
13.免責事項
当社の債務不履行責任は、当社の故意または重過失によらない場合には免責されるものとします。

なお、お客様との本利用規約に基づく当社のサービスのご利用に関する契約が消費者契約法に定める消費者契約に該当する場合、上記の免責は適用されないものとし、当社は、当社の故意・重過失に起因する場合を除き、通常生じうる損害の範囲内で、かつ、有料サービスにおいては代金額(継続的なサービスの場合は1か月分相当額)を上限として損害賠償責任を負うものとします。

Yahooは、
1.故意・重過失によらない場合は債務不履行責任について免責
と定めつつ、
2.消費者契約法が適用される場合に上記の免責を外し、
3.消費者契約法が適用される場合において
 (1)故意・重過失時を除いて損害賠償の範囲を通常損害に限定し、
 (2)故意・重過失時を除いて、有料サービスに関しては代金額を損害賠償の上限として設定
するとしています。
不法行為責任は免責の対象とせず、また消費者契約法が適用されない場合にも故意・重過失時の免責を放棄している点が特徴的です。
また、金額限定を有料サービスに限定することにより、GREEやLINEの「無料ユーザーはどうなるんだ?」という疑問も回避しています。

3.どうやって消費者契約法に対応すればいいのか
事業者の債務不履行と不法行為に基づく損害賠償責任の免責に関しては、
1.事業者に故意・重過失がある場合は事業者の損害賠償責任を免責しないことを明記する
2.事業者に軽過失(重過失でない過失)がある場合は、損害賠償の範囲を限定し、上限金額を設定する
の2段構えで対応するのが最もスタンダードな対応です。
なお、消費者契約法には、「消費者の利益を一方的に害する条項は無効」というキャッチオール規定(同法第10条)が存在しており、また、そもそも重大な事故が発生した場合に免責規定で損害賠償請求をすべて突っぱねることはレピュテーションが激しく傷ついてしまう可能性も高いので、特に有料サービスで、かつトラブル発生時には利用者に損害が生じることが見込まれるケースでは、免責でがんばるよりも、賠償責任保険やシステム上の手当てでがんばる方がベターな場合もあるという点には注意が必要かもしれません。

4.話は変わりますが
4/10に「シード・アーリースタートアップのためのウェブサービスを支える「利用規約」の基本」というイベントが開催されるのですが、このイベントにパネリストとして登壇してきます。
このブログをご覧になっている方でその属性にヒットしている方がいらっしゃるか極めて不安ではありますが、ベンチャー企業の経営者の方やウェブサービスを営んでいる個人の方は、ご興味があればぜひエントリーをお願いします。
なお、参加者からの事前質問も受け付け中です。→事前質問はこちらから


3/19に発売になった利用規約本も、引き続きよろしくおねがいしまーす。

このエントリーをはてなブックマークに追加

1.はじめに
ウェブサービスにおいて、UGC(User Generated Content)、つまりユーザーによって生成されたコンテンツを受け入れる機能は、多くのウェブサービスに備えられています。
そして、UGCの著作権(または利用権)は原則としてユーザーにある以上、たとえばUIの都合でコンテンツの一部を切り抜いたり、マーケティング資料にウェブページのスクリーンショットを掲載する際に、UGCの利用権を確保できていなければ、そのような切り抜きやスクリーンショットの掲載は(少なくとも形式的には)著作権侵害を構成してしまう可能性が高いと言えます。
そのようなわけで、UGCの投稿を受け付けるウェブサービスを運営する上では、UGCの利用権をどのような方法で確保するのかを検討する必要が生じるのです。


UGCの利用権の確保というと「UGCを流用した金儲け」が連想されがちですが、そもそもユーザーの明示的・積極的な同意がないにもかかわらずUGCを流用して金儲けなどすれば、仮に利用規約等で著作権の処理をきっちり規定していたとしても、間違いなくそのサービスのレピュテーションは地に落ち、まともなサービス運営を継続することはできなくなるでしょう。その意味で、「UGCを流用した金儲け」は、実際にはあまり心配する必要はないと個人的には思っています。



2.UGCの利用権の確保の選択肢
さて、UGCの利用権の確保の方法についてですが、大きく3つの方法が考えられます。
1.UGCの著作権の譲渡を受ける
2.UGCの無制限な利用許諾を受ける
3.UGCの制限つきの利用許諾を受ける
※ちなみに、例の本には、上記の3つの方法の具体的な条項例やpros/consも掲載されていますよ!

このうち、1については、これをやってしまうとユーザー自身も原則としてUGCの利用ができなくなるため、特殊な事情(たとえば買取価格として合理的な対価をユーザーに支払っている、など)がない限り、もんんんんのすごい勢いで反発を受けることになります。
そのため、普通のウェブサービスでは2または3を採用することになるのですが、ではウェブサービスを立ち上げ、利用規約をドラフトする際、2と3のどちらを採用すればいいのでしょうか。

3.他社の実例
利用規約をドラフトする際に欠かすことができないのは、「同業他社がどのように定めているか」の調査です。
・・・調べるの、めんどくさいですか?
そうですよね、めんどくさいですよね。
いやぁ、きっとめんどくさいっていうと思ったから、こっちでやっておきましたよ。

無制限許諾チーム
Facebook(https://www.facebook.com/legal/terms
2-1 写真や動画など、知的所有権で保護されるコンテンツ(以下「IPコンテンツ」)について、利用者は弊社に次の許可を与えるものとします(プライバシー設定およびアプリケーション設定が適用されます)。Facebookで、またはFacebookに関連して投稿したIPコンテンツを使用する、非限定的、譲渡可能、サブライセンス可能、使用料なしの、全世界を対象としたライセンス(以下「IPライセンス」)を弊社に付与します。このIPライセンスは、コンテンツが他の人と共有され、その人がそのコンテンツを削除していない場合を除き、利用者がIPコンテンツまたはアカウントを削除したときに失効します。

GREE(http://gree.jp/?mode=doc&act=misc&page=terms
5-2 ユーザーが本サービスを利用して投稿・編集した文章、画像、映像(動画)等の著作権については、当該ユーザーその他既存の権利者に留保されるものとします。ただし、本サービスを利用して投稿・編集された文章、画像、映像(動画)等については、グリーおよびグリーと提携するサイトまたはその他の媒体・サービスにおいて、グリーが必要と判断する処置を行った上で、グリーが利用できるものとします。ユーザーは、本項に基づくグリーによる著作物の利用について、著作者人格権を行使しないものとします。

mobge(http://yahoo-mbga.jp/page/kiyaku/index2.html
5条3項 当社は、当社の運営するサイト内にモバゲー会員が記述した日記、掲示板、伝言板上の記述情報等のすべてのモバゲー会員記述情報を無償で複製その他あらゆる方法により利用し、また、第三者に利用させることができるものとします。

Livedoorブログ(http://docs.livedoor.com/rules/
1.3.1
1.利用者は、本サービス等の利用に際して利用者が掲載・表示・送信等(以下「掲載等」といいます。)を行ったデータ(映像・音声・文章・写真・電子メール・メッセージ・アップロードされたウェブコンテンツ、ソフトウェアその他一切のデータをいう。以下同様とします。)につき、当社が、利用(複製、上演、演奏、公衆送信(自動公衆送信における送信可能化を含みます。)、口述、展示、頒布、譲渡、貸与、翻訳・翻案を含み、以下「利用等」といいます。)することを、無期限かつ無償にて、非独占的に許諾します。
2.利用者は、利用者が掲載等を行ったデータにつき、当社が自らの判断で、有償・無償を問わず、当社の指定する第三者に対して利用等を許諾する非独占的な権限を、無期限かつ無償にて付与します。
3.利用者は、前二項に基づく当社ないし当社の指定する第三者による利用者が掲載等を行ったデータの利用等について、著作者人格権を主張せず、行使しないものとします。
4.利用者は、利用者以外の第三者の情報やコンテンツ等の著作物が利用者が掲載等を行ったデータに含まれる場合、当該第三者から利用等の許諾を得、または、当該第三者に著作者人格権を行使させないなど、当社ないし当社の指定する第三者が当該データの利用等を行うについて支障の生じないよう、適切な権利処理を行うものとします。
※制限つき許諾チームから鞍替えした際に炎上

こえ部(http://koebu.com/about/terms/
7条
6.弊社は利用者が送信した当該情報を、本サービスの提供、利用促進及び本サービスの広告・宣伝する目的で公に発表する権利を持つものとし、弊社に対して利用者は本サイト上において無償かつ非独占的に使用する権利を許諾するものとします。また、弊社は同様の権利を弊社が指定する第三者に対して再許諾できるものとします。
7.利用者が本サービスを利用するに当たって送信したテキスト、音声等を含む情報(以下「当該情報」とします)に関する著作権は、利用者に帰属するものとします。ユーザーは、弊社および再許諾先による利用に対して著作者人格権(公表権・氏名表示権・同一性保持権)を行使しないものとします。


制限つき許諾チーム
LINE(http://line.naver.jp/terms/ja/
10.5. 本サービスは、複数のお客様が投稿、修正、削除等の編集を行える機能を含む場合があります。この場合、お客様はご自身の投稿コンテンツに対する他のお客様の編集を許諾するものとします。
10.6. お客様は、投稿コンテンツに対して有する権利を従前どおり保持し、当社がかかる権利を取得することはありません。ただし、投稿コンテンツのうち、友だち関係にない他のお客様一般にも公開されたものに限り、お客様は、当社に対し、これをサービスやプロモーションに利用する権利(当社が必要かつ適正とみなす範囲で省略等の変更を加える権利を含みます。また、かかる利用権を当社と提携する第三者に再許諾する権利を含みます。)を、無償で、無期限に、地域の限定なく許諾したこととなります。

comm(https://ssl.co-mm.com/sp/rules?lang=ja
6条3項 当社は、すべてのcomm会員記述情報を本サービスの提供を目的とする範囲において無償で複製その他の方法により利用できるものとします。ただし、comm会員間でメール・チャットによりやりとりされる情報を、令状等による場合を除き、当社、第三者が閲覧することはありません。
※炎上前までは無制限許諾チーム

mixi(http://mixi.jp/rules.pl
第18条 日記等の情報の使用許諾等
1 本サービスを利用して投稿された日記等の情報の権利(著作権および著作者人格権等の周辺権利)は、創作したユーザーに帰属します。
2 弊社は、ユーザーが投稿する日記等の情報を、本サービスの円滑な提供、弊社システムの構築、改良、メンテナンスに必要な範囲内で、使用することができるものとします。
3 弊社が前項に定める形で日記等の情報を使用するにあたっては、情報の一部又は氏名表示を省略することができるものとします。
4 弊社が第2項に定める形で日記等の情報を使用するにあたっては、ユーザーが設定している情報の公開の範囲を超える形ではこれを使用しません。
※炎上前までは無制限許諾チーム

pixiv(http://www.pixiv.net/terms.php
第17条
1.本サービスを利用して投稿された画像等の情報の著作権その他一切の権利は、当該画像等を創作したユーザーに帰属します。
2.当社は、ユーザーが投稿する画像等の情報を、本サービスの円滑な提供、当社システムの構築、改良、メンテナンスに必要な範囲内で、使用及び改変することができるものとします。
3.当社が前項に定める形で画像等の情報を使用するにあたっては、情報の一部又は氏名表示を省略することができるものとします。


4.無制限・制限つきのどちらを選択すべきか
実例を見ると、炎上後の鞍替えを除けば「ほとんどは2のパターン」であることに気づくと思います。

そう、どうしても無制限許諾は条文の見え方が「エグい」ので、パッと読むと、「えっ・・・私の著作権、利用されすぎ・・・」と思われてしまいがちですが、別にこれは、少なくとも現在の利用規約の傾向からすると特殊な条件ではないのです。
こう聞くと、「だったら3の方が炎上リスクを防げていいじゃない」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、無制限許諾チームに所属するLivedoorブログの利用規約騒動を思い出してください。
既にご記憶にある方は少ないかもしれませんが、かつてLivedoorブログは、「宣伝目的」という制限つき許諾チームに所属していたところ、ある日無制限許諾チームに電撃移籍し、そして見事に秋の夜空を紅く染め上げたことがあります。(参照)そう、制限つき許諾チームから無制限許諾チームへの移籍は、変更内容がユーザーの目に留まりやすいため、非常にリスクが高い行動なのです。

サービス内容がちゃんと固まっていない段階で制限範囲を定めてしまうと、後になって「あ、これが抜けてた」と気づくことになる可能性があり、それを受けて利用規約を変更することになった場合は、非常に大きな炎上リスクを負うことになります。
他方、最初から無制限許諾チームに所属しているケースでは、少なくともリリース直後は(commのような例外的な場合を除いて)ユーザーが少なく、それゆえ利用規約に注目する人はほとんどいないので、いきなり利用規約の文言を巡って炎上することは稀でしょうし、もし不幸にもそのような例外にあたってしまっても、「あ、それもそうっすね」と言ってすぐに変更をかければ傷はあまり大きくならないはずです。
その意味で、制限つき許諾を選択する場合には、しっかりとした準備が欠かせません。

その意味で、少なくとも個人やスタートアップが立ち上げるウェブサービスにおいては、2の無制限許諾を選択するのが無難といえると思います。

ちなみに、時代の10歩くらい先を行っているEvernoteの利用規約は、がっちりと3の制限つき許諾を選択しています。
本サービスの運営を可能にするために当社は、ユーザのみなさまからユーザご自身のコンテンツに関する所定の使用許諾や、その他の権利を取得する必要があります。これによって、ユーザのコンテンツに対する当社の処理、保守、保存、技術的複製、バックアップ、配布などの活動が、適用される著作権その他に関する法律に違反しないことになります。つまりユーザは、本サービスを利用しコンテンツをアップロードすることにより、Evernote がこれらのコンテンツを表示、実行および配布し、本サービスの運営を可能とするために当該コンテンツを変更(例えば、コンテンツをスマートフォン上でもコンピュータ上でも確実に閲覧可能にする等の、技術的な目的のため)および複製するためのライセンスを Evernote に供与するものとします。また、ユーザは、Evernote が自己の裁量によりコンテンツの受諾、掲載、保存、表示、公開または送信を行わないことを選択する権利を有していることにも同意します。

ユーザのみなさまには、これら当社に与えられた権利およびライセンスが、(ご自身のコンテンツが当社に保管されている限り)無償、取消不能および全世界に適用されることに同意していただきます。また、当社が、サービスの提供に関連して契約関係を持つ他者に対して、当該サービス提供の目的のみにおいて、かかるコンテンツを提供し、これらの権利を引き渡す権利を持つこと、さらには当社が法的義務を遵守するために必要だと判断した場合に、第三者にユーザのコンテンツへのアクセスまたは開示をする権利を含むことに同意します。

またユーザは、Evernote と連携する第三者のサービスまたはアプリケーションの利用をした場合、前述のご自身が Evernote に供与した使用許諾が、かかる第三者のサービスまたはアプリケーションを通じて提供またはアップロードされたコンテンツにも適用されることに承諾します。もしもユーザ自身が使用することを選択した第三者のサービスまたはアプリケーションがコンテンツにアクセス、またはこれを抽出する場合、ご自身のコンテンツへのアクセスを許可する権利およびライセンスをEvernote に供与することを承諾します。

当社は、ユーザが自らのコンテンツをアップロードし配信するという権利を尊重しています。その反面ユーザは当社に対し、コンテンツを Evernote に送信し、本サービスでコンテンツを公表あるいはその他の配信をするにあたっては、それらを行う法的権利と権限を完全に有しているということを表明し、保証していただいたこととします。また、当社にコンテンツを送信され、本利用規約に定める権利を当社に認めることを通じて、ユーザはいかなる者または第三者の権利も侵害していない、ということを当社に表明します。

最後に、当社がユーザにサービスを提供する際にコンテンツをネットワーク、各種デバイス、サービスまたはメディアに接続する為に必要な技術的措置を行う際に、必要な範囲においてコンテンツに変更を加えることができる、ということをユーザは理解し、同意します。

ここまで書ければ、利用規約は、従来の利用規約の役割を超えて、サービスプロバイダに対する信頼を高めるツールとしても機能するようになるのかもしれません。
いやはや、すごいね、まったく。

んでは、また。
3/19発売の利用規約本も、引き続きよろしくおねがいしまーす。

このエントリーをはてなブックマークに追加

前回に続いて、良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方について。

おかげさまでSNSやはてブを通じ、多くの方から「楽しみ!」という声を頂き、Amazonのランキングでも、私が見ていた限りでは、予約段階であるにも関わらずコンピュータ・IT部門で1位、全体で44位まで駆け上がって行きました。発売前である以上、まだ立ち読みもできず、レビューもない段階でご予約頂いた皆様には感謝しきりです。

さて、今回のエントリーでは、本書の内容について簡単にご紹介したいと思います。
前のエントリーでも書きましたが、本書は「ウェブサービスを運営するエンジニアや経営者」をメインターゲットにした本であり、実務に即役立つ内容を指向しています。

まず「第1章 3大ドキュメント超入門」には、利用規約、プライバシーポリシー、そして特定商取引法に基づく表示という、ウェブサービスを提供する上で避けて通れない3つのドキュメントについて、「なぜ必要なの?」といった素朴な疑問への回答などの「はじめの一歩」的な情報がたっぷり盛り込まれています。


続く「第2章 トラブル回避のための注意点と対応策」では、起業家による弁護士への新規事業の相談を手がかりとして、ウェブサービスを始めるにあたって気を配る必要のあるトピックを網羅的に押さえることができます。

p49



アンダーラインが引かれた部分にはそれぞれ4〜5ページの解説がついており、全て合計すると、一つの相談案件から16ものトピックが引き出されています。


「第3章 すぐに使える・応用できるひな形」は、究極の具体例である利用規約・プライバシーポリシー・特定商取引法に基づく表示のひな形を、逐条解説の形式で徹底的に解剖します。
ひな形をひな形として利用する場合はもちろん、一つ一つの条項に解説がついていますので、特定の条項の意味が良く分からない場合のレファレンス資料としても使える情報になっています。


「第4章 ダメな利用規約を生み出す「3つの落とし穴」を回避する」は、1章で基本を、2章で網羅的なトピックを、3章で具体的なドキュメントを押さえた上で、それでもハマってしまいがちな3つの落とし穴、つまり「実効性の落とし穴」「違法性の落とし穴」「同意取得の落とし穴」を明らかにしています。もちろん本書は実務家向けのガイドブックですから、落とし穴の正体が何かを解説するだけでは終わらず、そしてその落とし穴をどうやって回避すればよいのかについてもきっちり説明しています。


これだけでも盛りだくさんの内容ですが、さらに一押し。
なんと本書には「利用規約のひな形の英訳版」がついているのです。
英文契約の作法に則った英文の利用規約は、英語圏のウェブサービスの数だけ存在していますが、和文の利用規約が高いクオリティで英文化されたものは、ほとんど存在していないのではないかと思います。
もはや利用規約の枠を飛び越えて、普通に法務系業務の資料としても有用なものが「おまけ」として手に入ってしまうのは、大盤振る舞い以外の何者でもないと思います。


こんなコンテンツがぎっしり詰まった良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方
既にご予約頂いた方も、まだの方も、どうぞお楽しみにお待ちくださいませ!

なお、詳しい目次は技術評論社のサイトから閲覧可能です。

このエントリーをはてなブックマークに追加

AZX総合法律事務所の雨宮さんと、企業法務マンサバイバルの橋詰さんという、今の日本で「利用規約といえばこの人」と言っても過言ではないお二方との共著で、利用規約の作り方に関する本を書きました。

タイトルは

です。

発売日は3/19ですが、amazonではすでに予約可能です。
お値段以上の価値があると自信をもってお勧めできる出来あがりになっていますので、ぜひお手にとって頂ければと思います。




---

思い返せばAZX法律事務所の会議室で技術評論社の編集者の傳さんを交えた4人で打ち合わせをしたのが去年の夏。
それから半年をかけて、ようやく完成までたどり着くことができました。

何度も書き直し、再構成を繰り返す中で、4人が常に口にしていた問いは、「これはウェブサービスを運営するエンジニアや経営者が求めている情報なのか」でした。
一旦原稿を書き上げた後、ほぼ全面的に構成を組みなおしたのも、何度も何度も誰が書いた原稿なのかを問わず3人でペンを入れ続けたのも、本書をこの問いに自信を持ってYesと答えられるコンテンツにするためでした。


執筆者の3人がどのような想いをもってこの書籍を書いたのかは、技術評論社のサイトで公開されている執筆者からのメッセージ(これは、本書にも「はじめに」として掲載されています。)で端的に言い表されています。
本書を手に取った方が作り上げたウェブサービスやアプリが無事リリースされ,成長し,そして多くの人に愛される。

そんなストーリーを,本書を通じて少しでもお手伝いすることができたとしたら,私たちにとってこれ以上の喜びはありません。


ではでは!
このエントリーをはてなブックマークに追加

↑このページのトップヘ